日本耳鼻咽喉科学会会報
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111 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
総説
  • 高橋 晴雄, 長谷部 誠司, 原 稔
    2008 年 111 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/24
    ジャーナル フリー
    より多くの優秀な耳鼻咽喉科医を育成するために, われわれ耳鼻咽喉科医は卒前教育では何ができるか, また何が求められているかを探る目的で, 全国で平成18年に新たに耳鼻咽喉科医になった若手医師, 長崎大学医学部6年生, 全国耳鼻咽喉科学教室にアンケート調査を行った. その結果, いわゆる企業努力, 情報提供, 人間関係という3つのキーワードが重要であることがわかった. 企業努力にはEarly exposure (臨床に近い体験を早期にさせること), 低学年からの学生への接触や働きかけ, 教育へのマンパワーの動員, 教材の改善 (工夫) などが含まれ, 情報提供には耳鼻咽喉科の重要性, 広域性, 将来の可能性などの情報を医学生へ提供することが必須で, 最近は女医の公平な処遇も重要なポイントであること, 人間関係にはできる限り学生との対話時間をとること, また学生と卒業後も含めて密な接触, 連絡を行うこと, などが重要であることがわかった. また医学生にとって耳鼻咽喉科学のうちで理解が難しい分野の一つである側頭骨解剖の立体的理解のために, 最近当科で行っている学生臨床実習での側頭骨解剖実習施設の活用やステレオスライド (アナグリフ) での内耳や手術に関する立体解剖の教育を紹介した.
  • 神林 潤一
    2008 年 111 巻 1 号 p. 8-13
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/24
    ジャーナル フリー
    大学における卒前教育の一環として, 開業医であるわれわれは, 自らのクリニックへ学生を受け入れ, その臨床実習に協力している. その目的は, 学生に大学病院だけではなく, クリニックにおける一次医療を体験してもらい, 耳鼻咽喉科が扱う領域の広さや疾患の多様性を知ってもらうこと, そして耳鼻咽喉科が魅力的な科であることを実感してもらうことにある.
    当初, 中耳炎や鼻炎, 風邪などが主なクリニックで何が教えられるか, 多少の不安があったが, 実習を始めてみると学生の反応はきわめて良好で, 熱心に実習に取り組んでくれることが分かった. またその研修レポートからは, 学生がクリニック実習を通じ, 耳鼻咽喉科の守備範囲の広さや開業医の地域医療における役割, チーム医療の大切さなど多くのことを学んでくれていること, そしてこの実習を高く評価していることが明らかになった.
    さらに患者さんに対するアンケート調査からも, 多くの患者さんがわれわれのクリニック実習に好意的であり, 理解を示してくれていることが分かった.
    このクリニック実習を行う上で重要なことは, まず肩を張らずに, ありのままの耳鼻咽喉科外来を見せること, また患者さんとの信頼関係を崩さないようにするため, 学生実習に協力していることを明示するなど, 患者さんの理解と協力が得られるよう努めることである. そしてこれらをスムーズに実行するためには, スタッフの協力が不可欠であり, 看護師, 事務, 薬剤師と十分な連携が必要である.
    新しい医学教育制度の実施で, 内科, 外科などに比べ, そのよさをアピールできる機会が少なくなった耳鼻咽喉科にとって, 卒前教育の中で学生のクリニック実習を行うことは, 非常に大きな意味を持つと思われる.
原著
  • 三浦 智広, 鈴木 聡明, 大谷 巌, 大森 孝一
    2008 年 111 巻 1 号 p. 14-20
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕乳幼児の中耳粘膜下には骨間隙が存在し, 骨髄腔が中耳腔と交通する時期があるが, この特異な形態に関する報告は極めて少ない. 今回われわれは骨間隙に関し, 中耳腔内での存在部位, 間葉組織の有無について検討したので報告する.
    〔対象および方法〕胎生20週から3歳までの29例58耳の側頭骨病理標本を評価の対象とした. 中耳腔内を13箇所に区分し, 骨髄腔と中耳腔が交通する骨間隙を, 間葉組織を介する型 (間葉型) と, 直接交通する型 (直接型) に分別し, 炎症耳と非炎症耳で比較した.
    〔結果〕胎生20週から1歳2カ月まで交通する骨間隙が認められた. 部位では, 鼓室洞・顔面神経窩・乳突洞領域に多く見られた. 非炎症耳では乳児期に間葉型優位から直接型優位へと移行したが, 炎症耳では間葉型優位のままであった.
    〔結論〕骨髄腔と中耳腔との交通は, 間葉型→直接型→骨間隙閉鎖と経過することが分かった. 骨間隙が閉鎖する1歳半ば頃までは, 中耳炎が骨髄腔に波及する危険性が示された. 骨間隙の多い部位として乳突洞, 鼓室洞, 顔面神経窩があり, 乳様突起炎や顔面神経麻痺に関与する可能性も示唆された.
  • 齊藤 祐毅, 鳥海 早矢佳, 大竹 里可, 鈴木 光也
    2008 年 111 巻 1 号 p. 21-24
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/24
    ジャーナル フリー
    咽頭痛を契機に初発した成人Still病症例を報告する. 症例は17歳女性. 咽頭痛と発熱を主訴に来院した. 咽頭発赤, 白血球増加を呈し, 他の内科的感染症が否定的であったため, 急性咽頭炎として入院の上抗菌薬を用いたが解熱しなかった. 経過中関節痛が著明になる一方で敗血症, EBウイルス感染症, 頸部膿瘍や髄膜炎が否定できたため, 診断基準に沿いリウマチ性疾患の一つである成人発症Still病と診断した. 診断日翌日よりステロイドを投与し, 劇的に症状が改善した. 現在再発無く外来にて経過観察中である. 局所所見に比べて理学所見が著しい急性咽喉頭炎や頸部リンパ節炎に遭遇したときには, 成人Still病を念頭に置くことも必要であると考えられた.
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