日本耳鼻咽喉科学会会報
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100 巻, 12 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 免疫組織化学二重染色法による
    川崎 克
    1997 年 100 巻 12 号 p. 1419-1424_2
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    動物の嗅上皮では種々の要因による変性の後, 再生すること, また正常状態においても嗅細胞はturn overを行うことが知られている.
    従来より嗅細胞の再生母細胞は嗅上皮の基底膜上に配列する基底細胞であると言われてきた. しかし最近bromodeoxyuridine (以下BrdU) の分裂細胞への取り込みを用いた研究などから, 幹細胞は基底細胞直上に存在する細胞であるとの報告もみられる.
    今回はBrdUにてモルモット嗅上皮分裂細胞を標識し, 標識細胞の動向を観察した. BrdU標識細胞は, 時間経過とともにその多くが嗅上皮表層へと向かって移動していたが, 一部は基底細胞直上にとどまっていた. これらはcytokeratin (CK) を発現することはなかった. さらにBrdU標識細胞は確かに嗅細胞へと分化し, 標識1日後から神経特異的蛋白であるN-CAMを, 5日後からPGP 9.5をそれぞれ発現開始し, これらの発現は35日後まで観察された.
    以上の実験結果より, 基底細胞直上の分裂細胞は基底細胞とは明らかに異なる細胞であり, この細胞が嗅細胞の幹細胞と思われた. すなわち, 基底細胞と嗅細胞の分化増殖系列とは明らかに異なるものであると考えられた. また分裂早期の未熟な細胞には神経特異的蛋白であるN-CAMが発現し, さらに成熟する過程でN-CAMに加えて, 神経特異的蛋白であるPGP9.5が発現することが分かった.
  • 両側例と一側例との比較検討
    池田 元久, 渡辺 〓
    1997 年 100 巻 12 号 p. 1425-1435
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    両側変動難聴性メニエール病の診断基準, すなわち (1) 回転性めまいを反復すること (2) 両耳において耳鳴難聴などの蝸牛症状が反復消長すること, (3) (1), (2) の症状を来す中枢疾患, 並びに原因既知のめまい難聴を主訴とする疾患が除外できる, の (1) (2) (3) すべてを満たす両側変動難聴性メニエール病確実例と, 厚生省研究班のメニエール病確実例に適合し, 一側のみの蝸牛症状を示すいわゆる一側メニエール病の長期経過観察群 (観察期間20~46年間), 中期経過観察群 (観察期間5~12年間) について臨床的比較検討を行った. 従来の報告および長期観察例の検討では, 一側メニエール病として発症した症例が両側例に移行するまでの期間は10年以内である症例が多かった. しかし, 10~30年以上一側性として経過後, 特に70歳前後に健側の聴力が急激に低下した症例も数例観察されており, 長期間一側例で経過する症例を区別するには高齢に達するまでの経過観察が必要であることが判明した.
    以上のことを出来る限り考慮して区別した中期経過観察群の両側例と一側例の比較で, 現時点で得られた主な所見を以下に列挙する. (1) 初診時から3年間の聴力変動幅は低音部・高音部とも両側例の方が一側例よりも小さかった. これは両側例の方が一側例より最良聴力レベルが悪いことによると考えられた. (2) 両側例の低音部聴力変動幅は高音部聴力変動幅より大きかったが一側例では両者間に有意差を認めなかった. (3) 両側例の最終検査時の高音部聴力は初回検査時より悪化していたが一側例では最終検査時と初回検査時で有意差を認めなかった. (4) 初診時から5年間に3つ以上の聴力型を示す症例の割合は両側例の方が一側例より少なかった. 両側例・一側例とも高音漸傾型, 水平型, 山型を示す症例が多かった. (5) 経過中に少なくとも一度は悪聴耳のCPを示した症例の割合は両側例の方が一側例より少なかった.
  • 西園 浩文, 花牟礼 豊, 松崎 勉, 伊東 一則, 大山 勝
    1997 年 100 巻 12 号 p. 1436-1441
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    過去17年間に当科で経験した頭頸部神経原性腫瘍26例の臨床集計的検討を行い, その合併神経麻痺の発生と対策について検討した. 腫瘍は25例は神経鞘腫, 1例が傍神経節腫であった. 発生部位は左側頸部と右副咽頭間隙が各7例で最も多かった. 同定できた発生母地神経は迷走神経が5例, ついで交感神経が3例であった. 術後の神経症状では反回神経麻痺が6例で最多で, ついで舌下神経麻痺, ホルネル症候群などが認められた. 特に副咽頭間隙腫瘍では発生母地神経の神経脱落症状と下位脳神経の合併した神経症状を認めた. 術野を十分明視下におき, 盲目的剥離操作が必要な場合は他のアプローチを追加し摘出することも必要と思われた. 代表的な3症例を供覧し画像診断の特徴について述べた. 良性腫瘍だけに術前のインフォームドコンセントが特に重要である.
  • 梅野 博仁, 宮嶋 義巳, 森 一功, 中島 格
    1997 年 100 巻 12 号 p. 1442-1449
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    1971年1月から1996年7月までの26年間に久留米大学耳鼻咽喉科で治療した腺様嚢胞癌54症例 (一次例44例, 二次例10例) の臨床統計を行った. 原発部位は口腔13例, 口唇1例, 鼻腔11例, 副鼻腔3例, 顎下腺8例, 耳下腺5例, 上咽頭3例, 中咽頭3例, 外耳道3例, その他4例 (眼窩2例, 涙嚢1例, 気管1例) であった. 性差は男性19例, 女性35例と女性に多く, 平均年齢は男性60.8歳, 女性57.5歳であった. 全症例の5年生存率は72%, 10年生存率53%, 15年生存率46%であり, 諸家らの報告と大差はなく, 原発部位別の治療成績に有意差はみられなかった. 病悩期間は1日から13年4カ月までであり, 平均病悩期間は1年5カ月であった. 病悩期間が長い程, 生存率が低下した. 腺様嚢胞癌に対してSzantoらの組織grade分類を行うと諸家らの報告と同様にsolid patternを多く含むgradeでは転移を来しやすく, 予後も不良であった.
    死因の解析では, 原病死17症例中遠隔死が10例と最も多く, その10例中8例が肺転移であった. 原発巣死は5例で, 原発巣死全例が癌の頭蓋内浸潤で死亡していた. 頸部リンパ節転移に対しては頸部郭清術で十分制御可能であり, 頸部リンパ節死した症例はなかった. また, 腺様嚢胞癌は従来, 放射線感受性が低いといわれていたが, 術後に放射線療法を行った群が手術単独群より有意に良好な生存率が得られた.
  • 渡邉 暢浩, 羽柴 基之
    1997 年 100 巻 12 号 p. 1450-1458
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    滑動性追従眼球運動 (smooth pursuit eye movement: SPEM) は視覚以外の感覚入力によっても誘発され, 単なるフィードバック制御ではなく, 空間における運動知覚や予測制御など, より高次中枢の関与が明らかにされてきた. しかし, 視覚によらないSPEM (non-visually induced SPEM: NVSPEM) については定量解析された報告はほとんどなく, また予測性との関連を論じたものもなかった. NVSPEMの刺激波として予測性を少なくしたPseudorandom波と正弦波を用い, その周波数特性を視覚によるSPEM (visual SPEM: VSPEM) と比べ, NVSPEMの制御の特徴を明らかにすることを目的とした.
    Pseudorandom波は, 周波数に反比例する最大角速度を持つ4つの正弦波 (0.1, 0.2, 0.4, 0.8Hz) を, 位相についてランダムに合成し作製した. 眼前50cmで運動する自己の指先, スピーカからの音源, 赤色発光のダイオードを, 完全暗所下で被験者に追視させた. 眼球運動はDC-ENGで記録し定量的に解析, 次の結果を得た.
    1. Pseudorandom波刺激により誘発されたNVSPEMは, 正弦波刺激の場合と比較して低い周波数帯域より低下し, 0.1Hzから0.8Hzの範囲で周波数によらず, 一定の利得を示した. この性質はSPEMと同様であった. Pseudorandom波刺激により予測性を除去した場合のVSPEMならびにNVSPEMの利得-周波数応答が類似していることから, 共通または類似した生理学的機構を介している可能性が示唆された.
    2. 位相についてはNVSPEMは, VSPEMが低い周波数領域でほとんど同相であるのと異なり進む傾向も認めた. この傾向は, 正弦波, Pseudorandom波のいずれにおいてもみられ, 視覚フィードバックの有無がこの相違を生じさせると考えた.
  • 吉田 雅文, 藤村 和伸, 牧嶋 和見
    1997 年 100 巻 12 号 p. 1459-1464
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    モルモットにおいて蝸牛を直接電気刺激し, 誘発される耳音響放射 (electrically evoked otoacoustic emission, EEOAE) の測定を試みた. 音響周波数のほぼ全域において定電流の交流通電が可能な刺激装置を自作し, 基底回転鼓室階と前庭階の間で電気刺激を行った. 周波数2kHzで120μArmsの電通刺激に対して, 21.0dB SPLに相当する音響反応が得られ, この反応は人工呼吸器の停止によるanoxiaにより徐々に出力を減少し, 耳小骨の摘出によりノイズレベル以下となった. EEOAEは, 刺激開始から100μsec程度の遅れをもって立ち上がり, 次第に振幅を増し第3周期目でほぼプラトーに達した. この刺激開始から立ち上がりまでの遅れとプラトーに達するまでの周期数は, 他の周波数においてもほぼ一定であった. また, 刺激終了後もすぐには消失せず徐々に減衰していった. 1から6kHzまでの刺激周波数では, EEOAEの音圧は通電電流の10から200μArmsの増大に伴って直線的に増加し, 通電電流170μArmsに対応する音圧は1kHzで20.5±4.1dBSPL, 2kHzでは23.3±4.8dB SPL, 3kHzでは10.5±6.0dB SPL, 4kHzで17.1±4.7dB SPL, 5kHzで13.6±4.4dBであり, 6kHzでは18.3±4.8dBSPLであった. EEOAEは比較的簡単な手技で安定して記録できる現象であり, 外有毛細胞の電位依存性運動能すなわち電気-機械変換機能の, 動物実験におけるin vivoの有用な指標となりうると考えた. また, 刺激電極を利用して音響誘発蝸牛電位の観察を合わせて行うことが可能であり, EEOAEの測定は内耳毒や強大音響などによる内耳障害の病態解明に役立つものと思われた.
  • 池田 元久, 渡辺 勇
    1997 年 100 巻 12 号 p. 1466-1467
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    58歳女性の乳突洞口から上鼓室にかけて異所性大脳組織と考えられる腫瘍が存在した慢性中耳炎症例の臨床所見, 病理組織所見について述べた. 頭蓋内組織と連続性のないことを確認し腫瘤除去後, 露出した脳硬膜に穿孔や裂隙がない, すなわち頭蓋内との交通がないことを確認して腫瘤を摘出した.
  • CT, MRI所見
    古川 仭
    1997 年 100 巻 12 号 p. 1468-1471
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
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