日本耳鼻咽喉科学会会報
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112 巻, 1 号
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総説
  • 上川 雄一郎
    2009 年 112 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/25
    ジャーナル フリー
    患者が服用した薬物は, 吸収, 分布, 代謝, 排泄という経過を経て体外に排出され, 治療効果は標的組織にある作用点に到達した薬物の濃度に依存して発揮される. 薬物の体内動態は, 遺伝的素因だけではなく, 飲酒, 喫煙, 食事, 嗜好品, 生活習慣など, 多くの要因によって変化しやすいので, 患者個人に現れる薬効も一律ではない. また, 薬物動態に大きな影響を与える臓器として肝臓と腎臓があり, これらの臓器に機能障害があれば, 服用薬の薬物動態や薬効にも大きな変化が出る. 従って, それぞれの患者個人に合ったオーダーメイド薬物療法を志向した処方活動が重要となる. 耳鼻咽喉科領域でも多剤併用療法が一般的に行われているが, 処方薬数と副作用の発現率には高い相関性があるので, 必要とされる最少の数の薬物を, 必要とされる最少の用量で, 必要とされる最短の期間処方するという薬物療法の基本を心がける必要がある. 併用薬による重大な薬物相互作用の発現頻度はそれほど多くはないが, なかには致命的な相互作用も現れることがあるので, 臨床医は患者の経過観察をきめ細かく行い, 服薬アドヒアランスを向上させなければならない.
  • —末梢前庭器保護を目的とした治療戦略—
    山下 裕司
    2009 年 112 巻 1 号 p. 12-17
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/25
    ジャーナル フリー
    末梢前庭器の治療戦略として, 近年注目されている保護機構の内耳への臨床応用について概説した. 末梢前庭器の機能残存・保護の戦略としては, 急性期における保護と, 慢性疾患および加齢による保護とに大別される.
    急性内耳障害に, 活性酸素障害が関与していることが知られている. われわれの末梢前庭障害モデルにおいても, 活性酸素による障害が主たる原因であることを報告してきた. アミノグリコシド系抗菌薬の薬物障害による末梢前庭障害動物モデルを用いて, エダラボンによる活性酸素障害の軽減が, 急性末梢前庭障害の機能保護に効果のあることを示した.
    慢性疾患および加齢に対する保護に対しては, 熱ショック応答の誘導によるアポトーシスの抑制の応用について報告してきた. 今回は, 末梢前庭器においても, 熱ショック応答が誘導され, 保護効果が期待できることを示した.
    以上の治療法を臨床応用することにより, 末梢前庭機能を保護し, 高齢者を中心とする平衡障害に苦しむ方々のQuality of Life (QOL) の改善を目指していきたい.
原著
  • 力丸 文秀, 冨田 吉信
    2009 年 112 巻 1 号 p. 18-24
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/25
    ジャーナル フリー
    鼻副鼻腔非扁平上皮癌に対する治療指針の参考とするために, 当科における鼻副鼻腔非扁平上皮癌 (腺系癌) の臨床的検討を行った.
    対象は1972年3月から2005年3月までに当科で一次治療を施行した鼻副鼻腔非扁平上皮癌28例とした. 観察期間は全例3年以上経過していた. 性別は男性18例, 女性10例で男女比は1.8:1であった. 年齢分布は26歳から87歳で平均57.1歳であった. 原発部位は上顎洞20例, 篩骨洞1例, 鼻腔7例であった. 組織型は腺癌5例, 粘表皮癌4例, 腺様嚢胞癌18例, 腺扁平上皮癌1例であり, 腺様嚢胞癌が全体の64%を占めていた. 病期は上顎洞, 篩骨洞でIV病期が12例57%, であったのに対し, 鼻腔ではI病期が4例57%であった. 全体の生存率は3年生存率で68%, 5年生存率で55%であった. 組織型別の生存率は上顎洞・篩骨洞の腺様嚢胞癌が3年生存率64%, 5年生存率37%で, 鼻腔の腺様嚢胞癌が3年生存率75%, 5年生存率50%であり, 他の組織型に比べ予後不良であった. 腺様嚢胞癌は一次治療後5年以内の再発は11例あり, 再発後の救済率は0%であった. 特に原発巣再発が多く, この再発例11例中6例55%を占めていた. 腺様嚢胞癌の原発巣再発の有無と一次治療内容を比較すると, 上顎洞, 篩骨洞で集学的治療を行った群に原発巣再発が有意に少なかった. 鼻副鼻腔非扁平上皮癌の一次治療においても集学的治療が有用と思われた.
  • 今井 隆之, 吉原 俊雄
    2009 年 112 巻 1 号 p. 25-28
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/25
    ジャーナル フリー
    症例は29歳女性. 両側耳下腺, 涙腺の対称性腫脹, 顎下腺軽度腫脹のいわゆるミクリッツ兆候を呈していた. IgG4関連疾患を疑ったが, 血清IgG4は正常範囲であった. 大腿, 下腿の皮疹を合併しており, 耳下腺, 皮膚の生検の結果はサルコイドーシスであった. 本症例はサルコイドーシスを基礎疾患としたミクリッツ症候群と診断された. 精査の結果, ぶどう膜炎を合併しており, 微熱も伴うことから不全型Heerfordt症候群とも診断できる症例であった. Predonisolone (PSL) 30mgからの漸減内服加療を開始し現在PSL 2.5mg内服中であるが再燃を認めていない.
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