患者が服用した薬物は, 吸収, 分布, 代謝, 排泄という経過を経て体外に排出され, 治療効果は標的組織にある作用点に到達した薬物の濃度に依存して発揮される. 薬物の体内動態は, 遺伝的素因だけではなく, 飲酒, 喫煙, 食事, 嗜好品, 生活習慣など, 多くの要因によって変化しやすいので, 患者個人に現れる薬効も一律ではない. また, 薬物動態に大きな影響を与える臓器として肝臓と腎臓があり, これらの臓器に機能障害があれば, 服用薬の薬物動態や薬効にも大きな変化が出る. 従って, それぞれの患者個人に合ったオーダーメイド薬物療法を志向した処方活動が重要となる. 耳鼻咽喉科領域でも多剤併用療法が一般的に行われているが, 処方薬数と副作用の発現率には高い相関性があるので, 必要とされる最少の数の薬物を, 必要とされる最少の用量で, 必要とされる最短の期間処方するという薬物療法の基本を心がける必要がある. 併用薬による重大な薬物相互作用の発現頻度はそれほど多くはないが, なかには致命的な相互作用も現れることがあるので, 臨床医は患者の経過観察をきめ細かく行い, 服薬アドヒアランスを向上させなければならない.
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