日本耳鼻咽喉科学会会報
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77 巻, 2 号
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  • とくに種々の溶液注入と免疫学的操作による障害の比較検討
    隈上 秀伯, 津田 靖博
    1974 年 77 巻 2 号 p. 115-119
    発行日: 1974/02/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    目的:茎乳突孔より顔面神経内に墨汁,テトラサイクJソ,酸,アルカリ,エピレナミソ,ヒスタミソ,ピロカルピン,アトPピンなどの種々の溶液を注入した時の迷路障害のあらわれる様式と,人血清によつて感作した動物に同様の操作で血清を注入した時にあらわれる迷路障害の様式について比較検討することを目的とした.
    実験方法:兎および猫の顔面神経を手術顕秩E鏡下に露出し,茎乳突孔より神経内に種々の溶液を注入した.
    結果:
    1.種々の溶液注入の場合には注入側の長期の迷路機能低下を生じた.
    2.感作動物においては抗原の誘発注入によつてメニエール病に類似した急性可逆性の発作が観察された.発作は温度反応が陰性になるまで操り返し惹起させることができるが,それ以後は抗原血清の注入によつて何ら前庭症状はあらわれない.しかし温度反応が正常に戻ると再び血清の注入によつて同様の前庭症状が再現された.発作反復後半規管麻痺をきたした例には内リンバ水腫の所見を認めた.
    3.種々の溶液注入の場合には眼振は注入側の反対側に向かい,頸部は注入側に捻転し,注入側の瞳孔の収縮と耳介血管の拡張がみられたが,感作動物に誘発注入を行った場合にはこれらの症状は全く逆の関係にあった.
    4.種々の溶液注入後,注入側の瞳孔が散大する時期には内耳病理組織標本に内リンバ系の拡大が認められた.
  • 小西 静雄
    1974 年 77 巻 2 号 p. 120-126
    発行日: 1974/02/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    I.目的:
    メニエール病の病態が内リンパ水腫であるとする概念は,•日では一般的となつている.また内リンパの主たる吸収部位は内リンパ〓であるとされ,これを破壊したり内リンパ管を閉塞することによつて実験的に内リンパ水腫を生成し得ることが報告されている.
    (1)本実験においても,モルモットの内リンパ管を閉塞すると,その全例の膜迷路に内リンパ水腫が生成されることを確認したので,
    (2)さらに,内リンパ水腫生成後に,外側半規管の膜迷路を切断して,その水腫が減退するか否かを組織学的に検索しようと試みたものである.
    II.実験1:
    (1)実験方法;
    モルモットの内リンパ管を,硬脳膜外法により閉塞したのち2週,3週,1カ月,2カ月目に生体還流法により固定し,連続切片作製後ヘマトキシリン•エオジン重染色を行つて光顕により観察した.
    (2)実験結果;
    モルモットの全例において内リンパ水腫が生成されており,その水腫の程度は2週から2カ月の間のものでほとんど同じであつた.また術後減少した体重2週目には回復したので「実験2」において,内リンパ管閉塞後15日目に外側半規管を切断することにした.
    III.実験2:
    (1)実験方法;
    2週間前に内リンパ管を閉塞されたモルモットの外側膜半規管を,鋭利なメスで切断した.術後5時間,1日,3日,1週,2週目に生体還流固定し,「実験1」と同方法で切片標本作製後,光顕で観察した.
    (2)実験結果;
    8例中4例において内リンパ水腫が減退していたが,これは過剰な内リンパが外リンパ腔に流出したためと考えられた.蝸牛管の水腫も減退したが,これにはcollapseを生じたものはなかつた.これは切断された膜半規管と蝸牛管の問に卵形〓,球形〓,utriculo-endlymphatic valveが介在するためにcollapseすることから免れたものと考えられた.ductus reuniens は内リンバが蝸牛管より流出するのを防禦する機能は持つていないものと考えられた.
    内リンパ水腫の持続した4例は,外側膜半規管が再閉鎖したため,あるいは内耳炎を合併したために生じたものであつた.
    IV.結語:
    内耳炎および切断部の閉鎖を防ぐことがでぎるならば,膜半規管切断術は内リンパ水腫を減退させる手術療法のひとつとして,適用でぎる可能性があり,その際蝸牛手術障害を与えないですむものと考えられた.
  • 茂木 五郎, 前田 昇一, 吉照 豊治, 渡辺 徳武
    1974 年 77 巻 2 号 p. 127-133
    発行日: 1974/02/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    目的:中耳粘膜が呼吸上皮や外分泌腺同様,SlgA系の局所免疫による生体防禦の働きを傭えているか否か,また中耳腔貯留液の性質を知る目的で,中耳腔貯留液中の分泌型IgA(SlgA)を免疫化学的に検索した.
    実験方法:プールした中耳腔貯留液約50mlから,抗secretory component(SC)抗体を用いたimmunoadsorbents法によつて精製したSlgAを,唾液,鼻汁,初乳よりクロマトグラフイー法によつて分離•精製したSlgAと同時にSDS-ポリアクリルアミドゲル泳動によつて分析し,各ポリペプタイドの易動度および分子量を比較した.また抗SC血清および抗α一鎖血清を用い免疫拡散法によつて抗原性を検討した.125Iでラベルした抗SC抗体を用いたradioimmunodiffusion法によつて漿液性貯留液および同一人血清中のSlgAを検索した.抗SlgA血清による免疫電気泳動ならびに125Iでラベルした抗SC抗体によるradioimmunoelectrophoresisによつて中耳腔貯留液中の遊離SCを検索した.
    結果:中耳腔貯留液より分離されたSlgAは他の外分泌液より分離されたSlgAと分子構成ならびに抗原性はほぼ一致していた.SIgAは漿液性貯留液47例中43例(91.5%)に認められた.遊離SCは漿液性貯留液47例中1例(2%),粘液性貯留液30例中6例(20%)に証明された.
  • 藤川 祐司
    1974 年 77 巻 2 号 p. 134-146
    発行日: 1974/02/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    目的:類リンパ組織の1つである扁桃がどのような免疫機能をもち,かつ免疫学的にどの位置に属するかを知るてだてとして,まずin vivoおよびin vitroにおける扁桃の抗体産生細胞の動態を脾,リンパ節と共に追究した.さらにヒト扁桃におけるT細胞,B細胞の分布につき検索した.このように機能的なまた定量的な面からこの問題に検討を加えて解明を試みた.
    方法:in vivo抗原感作実験では,実験動物として家兎をもちいた.経耳静脈性に抗原であるヒツジ赤血球とBovine Serum Albuminをそれぞれ感作した.in vitro抗原感作実験では,ヒト扁桃より採取したリンパ球をヒツジ赤血球とともにMarbrook法でin vitro cultureを行なつた.上記両感作群について経時酌にCunningham&Szenberg氏スライド法によるhemolytic plaqueassayを行ない,PFC(抗体産生細胞)を検索し,その動態を観察した.またヒト扁挑リンパ球について,Jondalの方法に従ってE-RFC,EAC-RFCを調べ,扁桃内のT細胞,B細胞の分布を求めた,
    結果:in vivo感作群では経耳静脈注射による全身免疫を行なうと,扁桃には第1回感作時よりPFCが出現し,感作が進むにつれてさらにPFC数が増加し,peak responseに到達する日数は短縮された,脾,リンパ節のPFC数は扁桃より多いが,その動態は同一パターンを示した、一方末檎血にはPFCは出現せず,正常家兎においてもbackground PFCは殆んどみられなかつた.以上の事実より扁桃にみられるPFCは扁桃でin situに形成されたと考えられた.SRBC感作群ではIgM抗体産生細胞が,BSA感作群ではIgG抗体産生細胞が多く形成された.
    in vitro感作群ではprimary immune responseとして,ヒト扁桃リンパ球に4日目にpeak responseを示すPFCが形成された.これはマクロファージによる抗原のprocessingに初まり,免疫遂行細胞(抗体産生細胞)による抗体産生に終る免疫応答の全過程が扁桃内で行なわれることを示し,それゆえ扁桃が局所免疫能をもつことが確認された.さらに生体内おいては扁桃で産生されたPrimed Bcell,me-morycellが輸出リンパ管,血管を介して全身に播布することが考えられ,抗原情報の受容伝達臓器としての役割も果すことが推測された.
    EおよびEAC-RFCの検索からヒト扁桃においてはT細胞が47%,B細胞が14%に分布することがわかつた.この成績はまた扁桃が液性および細胞性免疫能をもつことを示唆した.
    以上の諸知見から,T.B細胞がともに存在し,抗原刺激に対応して細胞レベルで免疫応答を起す扇桃は末梢性類リンパ組織の1つであると考えられる.
  • 谷川 譲
    1974 年 77 巻 2 号 p. 147-152
    発行日: 1974/02/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    目的:鼻粘膜上の黄色ブドウ球菌(以下黄色ブ菌という)が起炎性を発揮するに至る過程を臨床的に把握するため,その基礎研究として今回は正常人について黄色ブ菌からみた生息環境の差と,黄色ブ菌を中心とした細菌叢との関係を観察した.すなわち鼻前庭の皮膚と鼻粘膜,および大人と子供の個体差により黄色ブ菌の着床と保菌状態にいかなる差があるかを観察した.
    方法:都立大久保病院で昭和45年10月から46年9月迄の1年間に生れた遜院可能の新生児100名とその母親100の鼻前庭および鼻腔を検査対象とした.出生直後から生後1ヵ月とその後は半年毎に2年間鼻前庭および中鼻甲介前端より細菌培養をおこなつた.採取は滅菌鼻用綿棒を用いた.培地には黄色ブ菌選択培地MSEYを用い,検出された黄色ブ菌について,Cogulase Typingによる型別分類と,PC,SMCER,,CM,TC,EMの6種について抗生剤感受性試験を昭和の1濃度<Disk>でおこなつた.
    黄色ブ菌以外にMSEY培地に発育可能な菌として,表皮ブ菌,小球菌,Gram(+)N小桿菌について記録した.臨床的には被検者の生活環境特に車の排気ガスとの関係,鼻炎罹患傾向,抗生剤使用の既往,鼻鏡所見を中心に記録した.
    結果:1)鼻前庭皮膚と鼻粘膜は表面では黄色ブ菌の生息環境として差を示さず,鼻前庭という解剖学的な位置が黄色ブ菌の検出率を高くしていると考えられた.
    2)黄色ブ菌着床は新生児では生後1週から1カ月迄が最高で,その後は2年迄漸減した.また着床した黄色ブ菌も2才迄に次第に消失した.これは母親の保菌をはじめ環境内のブ菌の状態よりも新生児個体の着床条件が関係すると考えられた.
    3)永続保菌表でも同一菌株の持続保菌されている場合と,菌株の入れ代る場合があつた.
    4)東京地区で検査薄象となつた健康人鼻前庭および鼻腔の黄色ブ菌は,今回の調査期間では抗生剤PC,SM,CER,CM,TC,EMの6種に関する限り殆んど感受性菌であつた.
    5)車の排気ガス,鼻炎罹患傾向,鼻汁等と黄色ブ菌着床,保菌とは特に関係はなかつた.
  • 野坂 保次
    1974 年 77 巻 2 号 p. 174-175
    発行日: 1974/02/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
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