日本耳鼻咽喉科学会会報
Online ISSN : 1883-0854
Print ISSN : 0030-6622
ISSN-L : 0030-6622
105 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 室伏 利久
    2002 年 105 巻 2 号 p. 137-141
    発行日: 2002/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    耳石器機能検査について最近行われている検査を中心にそれぞれの検査の解説と今後の展望について述べた. まず, 前庭誘発筋電位検査 (VEMP) について述べた. 本検査は, 比較的強大な音刺激を用い球形嚢斑を刺激し, 球形嚢―頸反射を観察しているものと考えられている. 本検査の記録法, 判定法を解説した. 判定には, 反応の有無, 振幅の左右比, 潜時などを用いる. 本法は, 左右の球形嚢機能を別々に, しかも比較的簡便に検査できるという点ですぐれており, 今後の発展が期待される. また, グリセロール負荷前後のVEMPの変化から球形嚢斑における内リンパ水腫の診断の可能性について述べた. このほか, 眼球反対回旋検査および, 主観的水平位検査 (SVH) について解説した. SVHは, 簡便にocular torsionを検査する方法として, また, 前庭代償の評価において有望であると考えられた. 眼球反対回旋やこのSVHは, 主として卵形嚢の検査と考えられるが, 左右耳の機能を個別に知るという点で問題があり, 今後さらに新たな検査法の開発が望まれる. このほか, 偏垂直軸回転検査, 偏中心性回転検査についても解説した. 偏垂直軸回転検査は全体としての耳石器機能を知るために有効であり, とくに小児における応用も報告されており, 小児の検査としての発展も期待される. 耳石器機能検査の発展, 充実によって耳石器単独障害はあるのか, また, その場合どのような症状が生じるのかといった疑問にも, 今以上に正確に答えられるようになるものと期待される.
  • FFTによる周波数分析
    毛利 毅, 白石 君男, 加藤 寿彦
    2002 年 105 巻 2 号 p. 142-151
    発行日: 2002/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    本研究では, ヒトにニオイ刺激 (アミルアセテート) と無臭刺激を与えたときの脳磁図を記録し, その信号を高速フーリエ変換 (FFT) によって解析し, ニオイ刺激によりどのような周波数が変動するか検討した. 対象は嗅覚正常者9名, 計測には37チャンネルの脳磁計を2基使用した. 刺激は右鼻腔に提示し, 脳磁図の記録を行った. 得られた波形をFFT処理し, 周波数帯域別および4~25Hzまで1Hz毎にスペクトル密度を算出した. このスペクトル密度がチャンネル毎, 周波数毎に各刺激条件で有意な変化があるかを検討した.
    その結果, 周波数帯域別ではいずれの帯域にも無臭刺激とニオイ刺激の比較では有意差は認めなかったが, 1Hz毎に検討すると以下のように有意差が認められた.
    (1) 無臭刺激とニオイ刺激の比較では7Hzに有意差を認めた. これは体性感覚やニオイ刺激特有の反応ではなく, アミルアセテートの刺激に対する認知機構との関係が示唆され, 嗅覚中枢の眼窩前頭野との関連が推測された.
    (2) 8Hzにおいて無刺激と無臭刺激, 無刺激とニオイ刺激の場合, 右側に有意差を認め, その有意差を認めた部位はほぼ同様なパターンを呈した. この変動は刺激による覚醒レベルの上昇によるものと考えられた.
    (3) 無刺激と無臭刺激の比較で11Hzのみ左側に, 無刺激とニオイ刺激の比較で11, 12Hzの左側に両者ともスペクトル密度の増大を認めた. この変動は注意力の集中によるものと推測された.
    (4) 無刺激とニオイ刺激の比較では14~24Hzまで多くの周波数で左側に有意差を認めた. このうち21, 22Hzの変動は無刺激と無臭刺激の比較でも認められた. この21, 22Hzの変動は無臭刺激, アミルアセテートによる三叉神経刺激によるものと考えられた. また, 無刺激とニオイ刺激の比較で認められた14-17Hz, 23-24Hzの変動はニオイ刺激によって生じた情動が関与していると考えられた.
  • 桑原 大輔, 堤 康一朗, 小林 健彦, 俵道 淳, 肥塚 泉
    2002 年 105 巻 2 号 p. 152-157
    発行日: 2002/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    われわれは頭頸部扁平上皮癌細胞 (HNSCC) に対してシスプラチンがカスパーゼ9の活性化を誘導し, カスパーゼ9の特異的抑制剤がこのHNSCCにおけるシスプラチン誘導性アポトーシスを抑制することを報告してきた. 本研究の目的は, シスプラチン耐性 (抵抗性) HNSCCにおいてシスプラチンによるカスパーゼ9活性化が抑制されるかどうかを調べることであった. シスプラチン耐性HNSCC株はシスプラチン存在下で増殖するものが選択された. シスプラチン処理後のプロカスパーゼ9分解は耐性株では検出されなかったが, 耐性株の親株であるシスプラチン感受性HNSCC株では検出された. カスパーゼ9活性を合成ペプチド分解能で検討したところ, シスプラチン処理後のカスパーゼ9活性は耐性株において感受性株と比較して低かった. カスパーゼ9の活性化にはチトクロームCの細胞質放出が必要と考えられているため, シスプラチン処理に反応する細胞質チトクロームCの発現レベルを検討した. 興味深いことに, シスプラチン処理後の耐性株と感受性株では同程度の細胞質チトクロームCの増加が認められ, Bcl-2関連蛋白 (Bcl-2とBcl-XL) の発現にも変化を認めなかった. これらの結果は, ある種のHNSCCではカスパーゼ9活性の抑制がシスプラチン耐性に関与することを示している. またこの抑制機構はチトククロームCの細胞質放出に依存しない可能性がある.
  • 川本 浩子, 竹野 幸夫, 夜陣 紘治
    2002 年 105 巻 2 号 p. 158-165
    発行日: 2002/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    一酸化窒素 (NO) は, 気道において, 線毛機能亢進作用, 血管透過性亢進作用, 血管平滑筋トーヌスの調整などを介して, 各種病態に関与している. アレルギー性鼻炎においては, 健常者と比較して鼻腔中のNO濃度が高値であることが明らかになってきている. 過去に我々は, アレルギー性鼻炎患者における誘導型一酸化窒素合成酵素 (iNOS) の発現が健常者よりも増強していることを報告した. 気管上皮細胞のiNOS発現は, interferon-γ (IFN-γ), tumor necrosis factor-α (TNF-α) などの炎症性サイトカインの刺激により増強することが知られている. そこで, 鼻粘膜上皮細胞のiNOSおよび内皮型NOS (eNOS) 発現に対する炎症性サイトカインの影響について検討した. 通年性アレルギー性鼻炎患者11名, および健常者16名の下鼻甲介粘膜を擦過し細胞を採取した. 擦過細胞の約80%は上皮細胞であった. 採取した細胞に, 無刺激あるいはIFN-γ, TNF-αによる刺激を行った状態で, 抗iNOS抗体および抗eNOS抗体を用いて螢光免疫染色を行った. そして上皮細胞におけるNOSの発現を, 螢光強度を指標に測定した. 健常者においては, IFN-γ, TNF-αの刺激により, iNOS発現が有意に増強した. しかし, アレルギー性鼻炎患者においては, 無刺激の状態でのiNOS発現が強く, サイトカイン刺激によるiNOS発現の増強がみられなかった. また, eNOS発現については, 健常者およびアレルギー性鼻炎患者において, サイトカイン刺激による増強は認められなかった.
    以上より, アレルギー性鼻炎においては, iNOSの発現が増強していると考えられた. また, 鼻粘膜上皮細胞において, IFN-γ, TNF-αなどのサイトカインは, iNOS発現を誘導し, NO産生亢進に関与すると考えられた.
  • 小山 守, 大塚 博邦, 楠見 妙子, 山内 陽子
    2002 年 105 巻 2 号 p. 166-173
    発行日: 2002/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    1990年に幹細胞増殖因子 (stem cell factor; SCF) が同定されて以来, SCFはヒト肥満細胞に対し唯一の増殖因子として, そして遊走因子および活性因子としての役割を担うことが明らかにされた. 著者らはこのSCFmRNAが鼻粘膜上皮細胞に発現し, この発現が鼻アレルギー患者に強く, また上皮細胞からのSCF産生量の多いことを明らかにし, 鼻アレルギーの発症に重要であることを報告した.
    今回, 下鼻甲介粘膜広範切除術を行った患者を対象に, (1) 鼻粘膜上皮より単離培養された上皮細胞中の混入細胞の有無 (2) 鼻アレルギーの感作程度と培養上皮細胞からのSCF産生量の相関性 (3) 現在アレルギー治療に使用されている薬剤の培養上皮細胞からのSCF産生に対する抑制効果について検討した. この結果, (1) 単離培養された細胞はサイトケラチン陽性細胞がほとんどであり, 混入細胞は鼻アレルギーにおいて肥満細胞を標識するAA1陽性細胞がわずかに認められたのみであった. (2) 培養上皮細胞からのSCF産生量は, 非アレルギーとダニCAP-RASTクラス1-2群, 3-4群, および5-6群との間に有意差があり, またクラス1-2群と3-4群および5-6群との間に有意差があった. (3) 上皮細胞からのSCF産生に対しフルチカゾンは10-7mol/L以上, プレドニゾロンは10-6mol/L以上, シクロスポリンは10-9mol/L以上でそれぞれ有意に抑制した. クレマスチンは10-7mol/L以上で, ケトチフェンは10-5mol/Lで有意に抑制がみられた. しかしクロモグリケートは10-7~10-4mol/Lで, スプラタストは100ng/ml, 500ng/ml (最終濃度) で共に抑制効果はみられなかった. このSCF量の抑制は細胞増殖を抑制するのではなく, 細胞内におけるSCF産生を抑制することを明らかにした.
  • 遺伝的背景から新たなPDS遺伝子変異が確認された1家系
    清水 謙祐, 坪井 康浩, 東野 哲也, 小宗 静男, 阿部 聡子, 新川 秀一, 塚本 耕二, 宇佐美 真一
    2002 年 105 巻 2 号 p. 174-177
    発行日: 2002/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    前庭水管拡大症 (EVA) は感音難聴とめまいをきたす内耳奇形の一種であり, 近年その原因としてPDS遺伝子の関与が注目されている. 当科で7年間経過観察を行っていた小児EVA症例の伯母とその息子に難聴があり, 側頭骨CT, MRI検査で前庭水管拡大を認めた. 遺伝的な背景を考慮してこの家系のPDS遺伝子変異を検索したところ, 2種類の新たなPDS遺伝子変異 (S610X, S657N) が確認された. 種々の難聴遺伝子が明らかになってきた現在, 小児難聴の診断には, 聴力検査や画像検査などとともに遺伝的背景の重要性を再認識する必要がある.
  • 別府 武, 鎌田 信悦, 川端 一嘉, 苦瓜 知彦, 保喜 克文, 三谷 浩樹, 吉本 世一
    2002 年 105 巻 2 号 p. 178-187
    発行日: 2002/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    1975年から1995年までに当科で根治手術を施行した原発性耳下腺癌1次例45症例を対象として頸部郭清の術式と治療成績の結果をもとに頸部郭清術の方針について検討した. 術前頸部リンパ節転移を認めた症例 (以下N (+) 群) は14例で全例高悪性度癌であった. これらには全例患側の全頸部郭清を施行し, 頸部再発を認めたのは郭清辺縁再発の1例のみであった. また, 術前頸部リンパ節転移を認めなかった症例 (以下N (-) 群) は31例で低悪性度癌9例, 高悪性度癌22例であった. 予防的郭清を施行しなかった27例には高悪性度癌36例中19例が, またT3ないしはT4症例24例中12例が含まれていたが, 後発転移をきたしたのは2例 (7.4%) のみであった. しかし, 初回手術後原発巣が制御できているにもかかわらず頸部転移をきたした症例は全頸部に転移が分布していることが多く, その予後は非常に不良であった. 潜在的頸部リンパ節転移陽性例を予測する手段として腫瘍の組織型を診断することは重要と考えられたが, 穿刺吸引細胞診での組織診断率は21.8%で現時点では困難と考えられた. しかし, 病理学的転移陽性例の全例でjugulodigastric nodeへの転移が認められたことより, このリンパ節の術中病理検索が有用と考えられた. また, 病理学的転移陽性例における転移リンパ節は全頸部に分布していた. 以上から耳下腺癌に対する頸部郭清術の方針について我々は以下のように考えた. 1. N (+) 群では患側の全頸部郭清術を行うべきである. 2. N (-) 群では基本的に予防的頸部郭清術を行う必要はないが, jugulodigastricnodeの術中迅速病理検査で転移陽性であれば, 全頸部郭清術を行うべきである.
  • 高度難聴
    荒尾 はるみ
    2002 年 105 巻 2 号 p. 188-191
    発行日: 2002/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
feedback
Top