日本耳鼻咽喉科学会会報
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99 巻, 3 号
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  • 黒田 嘉紀, 牧嶋 和見, 杉本 卓矢
    1996 年 99 巻 3 号 p. 353-360,473
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    唾液腺多形腺腫54例と唾液腺悪性腫瘍32例を対象とし, 腫瘍細胞増殖能とc-erbB-2癌遺伝子の発現について以下の結果を得た. 1) 多形腺腫は正常唾液腺組織よりも高い腫瘍細胞増殖能を示した. 2) 高い腫瘍細胞増殖能を示す多形腺腫の周囲の正常唾液腺組織も高い細胞増殖能を示した. 3) 多形腺腫は長期に放置されてもまた大きくなっても, 腫瘍細胞増殖能が高くはならなかった. 4) 唾液腺悪性腫瘍にはc-erbB-2遺伝子発現を示す症例が見られたが, 多形腺腫には同様の癌遺伝子発現は見られなかった. 5) 唾液腺多形腺腫内癌の多形腺腫部分にc-erbB-2癌遺伝子発現が見られる症例があった.
  • Araldite, Unicryl包埋切片との比較検討
    緒方 洋一, NORMA B. SLEPECKY
    1996 年 99 巻 3 号 p. 361-369,473
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    水溶性包埋剤であるPolyethylene glycol 4000 (PEG) を用いた包埋方法を改良し, 内耳前庭組織の包埋・染色を行った. 細胞骨格蛋白の1つであるα-tubulinとCa結合蛋白の1つであるCalmodulinの免疫染色を行い, Araldite (疎水性エポキシ樹脂) 包埋切片およびUnicryl (親水性アクリル樹脂) 包埋切片との染色結果を比較検討した. PEG切片は他2者と比較して優れた染色性を示し, 組織構築の解像度も良好であった. PEG包埋法はアガロースに前包埋することにより内耳臓器特有の方向を持って包埋することができるだけでなく, 操作が簡便で, 時間を要しない. 本法の利点・欠点について考察すると共に, 操作手順を詳述した.
  • 唐 安洲, 宇良 政治, 山内 昌幸, 野田 寛
    1996 年 99 巻 3 号 p. 370-378,473
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    聴神経腫瘍における聴力障害の発生原因を解明するために, モルモットを用いて内耳道神経血管束を圧迫した際のABRおよび蝸牛血流の変化を観察した. その結果, 圧迫によるABRの変化は, I~II波間潜時が延長しII~IV波の振幅が減少するタイプ, I波を含む全波形が消失するタイプに分けられた. 前者は神経の直接的圧迫に伴う蝸牛神経障害, 後者は内耳道動脈圧迫による血流減少に伴う内耳障害による変化と考えられた. 一方, ABRと同時記録したCoBFの観察から, 神経障害と血流障害は混在して起こっていることが明らかになった. また, 圧迫部位は, 聴力障害のタイプおよび障害の程度を左右する重要な要因と考えられた.
  • 能登谷 晶子, 鈴木 重忠, 古川 仭, 岡部 陽三
    1996 年 99 巻 3 号 p. 379-384,473
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    3歳5カ月の後天聾1例に人工内耳埋め込み術を施行し, リハビリテーションを行ったのでその経過を中心に報告した. 音入れすぐに聴覚受信が可能であったが, 音に対する反応は当初鈍い印象があった. しかし, その後の聴覚受信経過は良好であった. 本例の術前のコミュニケーション手段は, 読話, 文字言語, 手話で, とくに手話が得意であったが, 人工内耳埋め込み術後の聴覚受信は良好であった. 音入れ8カ月後に母音の聞き取りが100%となった. さらに, 社会音の聞き取りも比較的良好で, とくに先に報告した6歳代の症例より本例の方が, 構音面や発話のプロソデイの改善が大きかった.
  • 樋口 栄作, 飯塚 桂司, 庄田 英明, 武市 紀人
    1996 年 99 巻 3 号 p. 385-394,475
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    過去10年間に当科で根治治療を行った喉頭癌74例について臨床的検討を行った. 男女比は14: 1で男性に多く, 発症平均年齢は64歳であった. 発生部位別には声門癌48例, 声門上癌21例, 声門下癌2例, 混合型癌3例であった. 累積5年生存率 (cause-specific survival rate) は82%で, 部位別には声門癌95%, 声門上癌69%, 声門下癌0%, 混合型癌50%であった. 初回治療後の再発率は根治照射例では20%, 全体では23%であった. 声門癌に対する治療はT1・T2には根治照射, T3・T4には照射と手術の併用, 声門上癌に対する治療はT1・T2N0には根治照射, T2N (+) ・T3・T4には手術と照射の併用が妥当であると思われた.
  • PCNA, MIB-1抗体を用いて
    浦野 誠, 岩田 重信, 高須 昭彦, 森 茂樹, 桜井 一生, 加藤 久幸, 山本 小百合, 笠原 正男, 黒田 誠, 伯野 卓
    1996 年 99 巻 3 号 p. 395-401,475
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    前癌病変としての声帯hyperplasiaおよびdysplasiaにつき, 抗PCNA (proliferating cell nuclear antigen), 抗MIB-1 (Ki-67) モノクロナール抗体を使用し免疫組織化学的検討を行い, 細胞異型の程度と増殖能との相関および臨床的予後, 癌化との関係につき検討した. hyperplasia, dysplasia, 浸潤癌においてはhematoxylin-eoxin (HE) 染色上の細胞異型度が高くなるにつれPCNA index, MIB-1陽性率が高値を示し, 細胞増殖能の増加が示唆された. 再発例およびhyperplasia・dysplasiaからの癌化例のなかにはPCNA index, MIB-1陽性率が高値を示すものが存在した. PCNA indexとMIB-1陽性率との間に統計学的に一次相関傾向が認められた.
  • 丸山 純, 有友 宏, 稲木 匠子, 小林 丈二, 柳原 尚明
    1996 年 99 巻 3 号 p. 402-410,475
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    1991年1月から1993年12月までの3年間に当科を初診した0歳児の急性中耳炎症例164例について検討した. 男児101例, 女児63例で有意に男児に多かった. 特に月齢6ヵ月以上で128例 (78.0%) と症例数が増加し, 治癒遷延例も多くなった. 本疾患の発症には生理的免疫機能の低下特にIgG1, IgG2の変動が関与していると考えられた. 0歳児では耳症状が耳鼻咽喉科受診の契機となることは少なく, 診療にあたっては小児科医との連携が重要である. 治療では特に月齢6ヵ月以上に治癒遷延例が多いことを考慮し, 注意深い観察が必要である.
  • 久我 むつみ, 池田 稔
    1996 年 99 巻 3 号 p. 411-416,475
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    味覚検査の再現性の検討を行った. 繰り返し検査の結果, 電気味覚検査で, 2~6dBの域値の変動が全体の58.9%に認められた. 濾紙ディスク法では, 3回の検査間で1段階の域値変動は全体の24.7%で認められた. しかし3味質同時に変動を認めた例は, 全体の6.7%と少数であった.
    以上より, 味覚機能の経時的変化を繰り返し検査で評価する際, 電気味覚検査では6dB程度までの変動は, 有意の変化と評価できないものと思われた. 濾紙ディスク法では, 1段階の変動を有意の変化と評価するのは注意が必要と思われた. 3味質以上が同時に変動する可能性は低く, この場合は1段階の変動でも有意の変化と評価してよいものと思われた.
  • 剖検10症例について
    永井 浩巳
    1996 年 99 巻 3 号 p. 417-431,477
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    上咽頭は, 鼻腔と中咽頭の境界に位置し, 耳管により中耳腔と交通し, 粘膜上皮は線毛上皮, 移行上皮, 扁平上皮から構成される. 今回, 剖検10症例を用いてその上皮分布を検討した. 個々の症例では, 各部位ごとで各上皮の出現頻度が異なり, 個体差も大きく, 上皮の分布における左右の対称性も認められなかった. そこで, 10例を重ね合わせて, 上皮分布が全体として規則性があるかを検討した. 鼻腔側で線毛上皮が, 咽頭側で扁平上皮が多くを占め, 移行上皮が両者の間にモザイク様に分布する傾向を認めたが, Aliが報告したような整然とした直線的区画をもつ模式図化された分布ではなかった.
  • 井上 良江, 井上 庸夫, 田中 康夫
    1996 年 99 巻 3 号 p. 432-444,477
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    地域の異なる2つの高等学校のクラブ活動の数部, すなわち剣道部, 蹴球部, 庭球部, 管弦楽部, 吹奏楽部, 茶道部の聴覚検査および耳音響放射の測定を行った. 自記オージオグラム上の小ディップは比較的高頻度で認められ, 小ディップを持つ耳の頻度はすべての部で30%-53%の間であった. 茶道部員の小ディップはほとんどすべてが10dBから15dBの間の大きさであった. 茶道部以外の部員の小ディップは高音域に分布していた. 問診結果のイヤホン使用と小ディップのある耳との間には関係があるとは言えなかった. 自発耳音響放射の周波数分布は低域に偏っており, 小ディップの分布との対応は少なかった. 持続性の耳音響放射のある耳と小ディップのある耳の関連度は高かった.
  • 渡部 一雄
    1996 年 99 巻 3 号 p. 445-453,477
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    NHKと東京医科大学耳鼻咽喉科学教室で開発した 「高品質リアルタイム話速変換装置」 は, 話声の品質を損なうことなく, 緩徐な話速に変換できる. この装置で処理した日本語音声が, 高齢難聴者にとって聴き取り易いものかどうかについて検討した. 日常会話短文および無意味短文を, 原音と延長処理した音声で, 高齢難聴者に聴かせたところ, この装置で処理した文の正答率は, 有意味文, 無意味文とも, 原音に比べて有意に高かった. さらに, 同内容の文を話速を換えて再度聴かせて検討したところ, 延長処理した文の方が印象に残る度合いが大きく, 理解されやすいことが示唆された. 本装置は高齢難聴者の補聴システムとして期待できるものである.
  • 肥満細胞欠損型マウスおよび免疫抑制剤投与後の変化について
    渡辺 雅子, 朝倉 光司, 斎藤 博子, 形浦 昭克
    1996 年 99 巻 3 号 p. 454-463,477
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    WBBF16-+/+マウス (+/+) およびその肥満細胞欠損マウスWBBF16-W/Wv (W/Wv) に対して, 卵白アルブミンによる全身および点鼻感作を行った. 両マウスとも同程度のPCA抗体価を認めたのに対し, W/Wvマウスでは+/+マウスに比して抗原誘発後の好酸球浸潤は少なく, 鼻症状およびヒスタミン過敏性はやや亢進していた. +/+マウスにおける鼻腔灌流液中ヒスタミンおよびIL-5は, 抗原誘発後有意に上昇した. CsAを前投与すると, 両マウスでの抗原誘発後の鼻症状は抑制され, PCA抗体価は抑制されなかった. +/+マウスでの好酸球浸潤およびヒスタミン, IL-5の上昇はCsAで有意に抑制された.
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