日本耳鼻咽喉科学会会報
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116 巻, 1 号
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総説
  • 須田 康一, 北川 雄光, 宇山 一朗
    2013 年 116 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/05
    ジャーナル フリー
    ロボット支援手術は従来の鏡視下手術の欠点を補完する新たな低侵襲手術として注目されている. 本邦では, 本年4月よりロボット支援前立腺全摘術が保険収載され, ロボット保有台数は50台を超えてアジア最多となった. 近年, 消化管領域ではfeasibilityのみならず短期成績の改善効果が報告されつつある. 一方で, 高いコスト, 長い手術時間, エビデンスの不足などの問題点もあり, 今後のさらなる検討と発展が期待される.
  • 菊地 茂
    2013 年 116 巻 1 号 p. 6-9
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/05
    ジャーナル フリー
    近年, 小児科や産科の救急医療の危機が叫ばれているが, 地域によっては耳鼻咽喉科救急もかなり切迫した状況になっている. 埼玉県では, 夜間・休日の救急診療を行っている施設と医師が極めて少なく, こうした医療機関に救急患者が集中し, 当科においても過去8年間に夜間または休日に救急外来を受診した患者は13,820名を数えた. 疾患別では急性中耳炎が4,999名と最も多く, 以下鼻出血, 咽頭異物, めまい症, 急性咽頭喉頭炎, 外耳炎, 急性扁桃炎, 鼻腔異物, 外耳道損傷, 鼻骨骨折, 鼓膜損傷, 外耳道異物の順であったが, この中で入院を要した患者は561名 (4.1%) であり, 救急外来受診者の多くは翌日の診療でも問題のない軽症例であった.
    現状では, 医師の高い使命感だけが救急医療の支えとなっているが, 少人数の耳鼻咽喉科医で多数の救急症例を常時診療する体制は, 医師の健康管理や医療安全の面から非常に問題であると言わざるを得ない. このような切迫した状況を改善させるには, 患者への啓蒙活動, 救急科, 内科, 小児科など他科との連携も重要であるが, 何よりも地域医療に関与する人々が問題意識を共有し, 無理がなく効率のよい救急システムを作ることが最重要であり, 開業医を中心とする初期救急に従事する医師, 大学病院や基幹病院の医師を中心とする第二次・第三次救急に従事する医師, そして行政が協力し, 効率的で重層的な救急医療を再構築することが急務であると考える.
原著
  • 松尾 美央子, 力丸 文秀, 檜垣 雄一郎
    2013 年 116 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/05
    ジャーナル フリー
    1972年4月から2008年12月の期間に, 当院で治療を行った腺様嚢胞癌72例について検討を行った. 72例全体の死因特異的生存率は3年で76%, 5年で70%, 10年で46%, 15年で33%, 20年で33%であり, 15年までは生存率が徐々に低下していた. 部位別の生存率に有意差はなかったが, T別の生存率はT3・T4症例がT1・T2症例に比べ有意に低い結果であり, N別の生存率はリンパ節転移陽性症例がリンパ節転移陰性症例に比べ有意に低い結果であった. 原発巣制御率は5年で65%であり, 5年以降も低下し続け15年経過すると31%まで低下していた. また原発巣再発の時期の中央値は93カ月, 最長で168カ月であり, 再発まで比較的長い経過をたどっていた. 遠隔転移無出現率は5年で54%であり, その後も低下し続け20年では22%であった. また遠隔転移出現後の生存期間の中央値は25カ月で, 最長では216カ月間の担癌生存中も認めた.
  • 池田 稔, 黒野 祐一, 井之口 昭, 武田 憲昭, 愛場 庸雅, 野村 泰之, 阪上 雅史
    2013 年 116 巻 1 号 p. 17-26
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/05
    ジャーナル フリー
    味覚障害は, その評価において患者の自覚的な訴えに頼らざるを得ず, 現在もさらなるエビデンスの集積が求められている診断・治療の難しい疾患である. 今回われわれは亜鉛欠乏性または特発性に分類される味覚障害患者219例を対象に, ポラプレジンクを用いた亜鉛補充治療の効果をプラセボコントロールの無作為化二重盲検法により検討し, さらに背景データ等による詳細な検討を加えた. その結果, 亜鉛群は投与8週時から濾紙ディスク味覚検査法の認知域値でプラセボ群に対して有意に改善し, その差は投与終了の4週間後でも持続した. ただし, 事前に定めた「有効」の判定基準に従った有効率では統計学的な差が認められなかった. 性別または抑うつ性の程度により治療効果の違いを認め, 男性およびSDS (Self-rating Depression Scale) で抑うつ性が高いと評価された患者では, 症状の正確な評価に注意を要することが示唆された. 一方で, 約77%の症例が該当したSDSスコアが「正常」で, かつ4味質すべてで障害の見られた168例では, 有効率においても亜鉛群がプラセボ群を統計学的に有意に上回っていた. 本疾患の診断や治療効果判定においては, SDSスコアによる抑うつ性の評価や濾紙ディスク味覚検査法での個々の味質の障害程度を考慮した詳細な検討が必要であることが示された.
  • 岡本 伊作, 鎌田 信悦, 三浦 弘規, 多田 雄一郎, 増淵 達夫, 伏見 千宙, 丸屋 信一郎, 武石 越郎, 松木 崇
    2013 年 116 巻 1 号 p. 27-30
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/05
    ジャーナル フリー
    副咽頭間隙に発生する腫瘍は全頭頸部腫瘍の0.5%といわれ比較的まれな疾患である. 2005年7月から2011年6月までの6年間, 国際医療福祉大学三田病院頭頸部腫瘍センターで入院加療を行った副咽頭間隙腫瘍76例を経験した. 対象は男性35例, 女性41例, 年齢は15歳から78歳で中央値44歳であった. CTやMRIによる術前画像診断や穿刺吸引細胞診 (FNA: fine needle aspiration) と術後病理組織診断について検討した.
    病理組織学的診断の内訳は良性腫瘍が69例 (90.8%), 悪性腫瘍が7例 (9.2%) であった. 良性腫瘍では神経鞘腫32例 (42.1%) と多形腺腫28例 (36.8%) で大部分を占めていた. 多形腺腫は茎突前区由来が26例 (93.8%), 神経鞘腫は茎突後区由来が28例 (87.5%), 悪性腫瘍に関しては茎突前区由来が7例 (100%) であった. 術前FNAを施行している症例は55例で正診率は39例/55例 (70.9%) であった.
    術前画像診断は病理組織を予測する上で非常に有用であると思われた. また茎突前区由来の場合では, 常に悪性腫瘍の可能性を考慮し術前にFNAを施行しておく必要があると思われた. 正診率に関してはFNAの手技を検討することで改善の余地があると考えている.
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