日本耳鼻咽喉科学会会報
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106 巻, 7 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 劉 秀麗, 曾根 三千彦, 冨永 光雄, 林 秀雄, 山本 浩志, 中島 務
    2003 年 106 巻 7 号 p. 723-729
    発行日: 2003/07/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    臨床的に外リンパ瘻では,いろいろな程度,様々なオージオグラム型の感音難聴が存在する.瘻孔そのものは,一般的に内耳機能に影響は及ぼさないと考えられており,外リンパ瘻に伴う内耳機能障害の病態は不明な点が多い.我々は,外リンパ瘻の蝸牛機能への影響を検討するために,20匹のモルモットにおいて蝸牛窓膜を破製させ,レーザードップラープローブを基底回転にあてることにより蝸牛血流がどう変化するかを調べた.また10匹の動物ではガラス微小電極を基底回転血管条経由に挿入することにより蝸牛内直流電位(EP)への影響も観察した.蝸牛血流は20匹中9匹,EPは10匹中5匹が,蝸牛窓膜破裂後,60分以内に15%以上低下した.蝸牛血流の低下例は,EPも低下する傾向があり,両者の低下の程度には相関があった.蝸牛血流が低下した3匹において内耳を組織学的に調べたところ,鼓室階出血,内リンパ水腫をそれぞれ1例ずつ蝸牛窓膜破裂側に認めた.我々の結果は,外リンパ瘻で蝸牛障害をきたす例において,血流障害が関与していることを示唆している.
  • 当科における臨床統計から
    都築 秀明, 藤枝 重治, 大坪 俊雄, 窪 誠太, 坂下 雅文, 呉 明美, 斎藤 等
    2003 年 106 巻 7 号 p. 730-738
    発行日: 2003/07/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    1. 当科で15年間に治療した甲状腺癌152例の治療成績をまとめた.術前診断で問題のない甲状腺葉は温存し,N0症例に予防的頚部郭清術を施行しない基本方針をとったが.I~III期の10年生存率は良好な成績であった.
    2. T4N1症例10例の原発巣に対して甲状腺半切除術を施行したところ,その内の5例(50%)に残存甲状腺への再発を認めた.T4N0症例には同手術にて再発を認めなかったことから.T4N1症例の原発巣に対しては初期治療から甲状腺全摘術が適切であると考えられた.
    3. 甲状腺乳頭癌において原発腫瘍径,頸部リンパ節転移.全身転移の3項目が予後に影響を与える因子である可能性が示唆された.
  • 佐川 雄一, 大谷 巌, 鈴木 聡明
    2003 年 106 巻 7 号 p. 739-749
    発行日: 2003/07/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    ヒト側頭骨病理標本を用い,耳小骨靱帯周囲の硬化性病変について観察を行い.次の結果を得た.
    1. 非炎症群では前ツチ骨靱帯,後キヌタ骨靱帯で,30歳未満の群と30歳以上の群の間で硬化性所見に有意差を認めた.このことは,硬化性所見は加齢とともに増加することを意味している.
    2. 慢性炎症群では前ツチ骨靱帯,後キヌタ骨靱帯について,非炎症群に比較し,各年代とも硬化性変化の程度が強く,また.年代間に有意差を認めなかった.炎症の影響が加齢の影響よりも強く,炎症が起きると加齢と関係なく硬化性変化が進むと考えられた.硬化性変化を進行させないためには,中耳炎,特に小児の中耳炎の治療の際に.炎症を速やかに改善させ,慢性期に至らせないよう注意が必要である.
    3. 輪状靱帯については,非炎症群,慢性炎症群のいずれについても,各年齢間で有意差を認めなかったが,前ツチ骨靱帯,後キヌタ骨靱帯よりも硬化性所見は少なかった.また,非炎症群と慢性炎症群の比較でも,60歳代の群を除き,有意差を認めなかった.このことから,輪状靱帯は,加齢や炎症の影響を受けにくく,硬化性変化が進行しにくいことが示唆された.
    4. 輪状靱帯よりも前ツチ骨靱帯や後キヌタ骨靱帯で硬化性変化が起きる頻度が高いことは,ツチ骨とキヌタ骨を残した手術では伝音系全体の可働性が制限され,十分聴力が改善しない可能性があることを意味し,炎症耳の手術の際は,年齢に関係なく前ツチ骨靱帯,後キヌタ骨靱帯の可動性を確認し,可動性が損なわれている場合には,これらの靱帯を切離するような術式が有効であると考えられた.
  • 瀬野 悟史, 榎本 雅夫, 嶽 良博, 斉藤 優子, 池田 浩己, 船越 宏子, 十河 英世, 芝埜 彰, 硲田 猛真, 鈴木 幹男, 矢澤 ...
    2003 年 106 巻 7 号 p. 750-753
    発行日: 2003/07/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    本邦におけるペットアレルギーの実体を知るため,和歌山県下中学1年生531名を対象に,ペットアレルギーを含むアレルギーに関するアンケート調査と血清総lgE値(CAP, Pharmashia社),MAST26(日立化成工業株式会社)による特異的lgE抗体の測定を行った.ペットの飼育歴のある者は306名であり,内訳はイヌ200名,ネコ35名で,その他に小鳥,ハムスター,ウサギ,モルモット.リスがあった.ペットアレルギー症状のある者はイヌ11名,ネコ11名,イヌ+ネコ8名.ウサギ1名であった.その臨床症状は多彩であった.ペットアレルゲン間に症状の違いはなかった.ペットアレルギーのある者の血清総lgE値は高い傾向にあった(p=0.057),MAST26による特異的lgE抗体陽性率では,ダニ(36.7%),スギ花粉(37.0%)が多くみられたが,イヌ上皮(15.4%)やネコ上皮(18.2%)に対しても高い陽性率がみられた.イヌに対してアレルギー症状のある者では,ない者よりもイヌ上皮特異的lgE抗体陽性者が有意に多く(p=0.033),ネコに関しても同様であった(p<0.0001),イヌやネコの飼育歴と特異的lgE抗体陽性率の間には有意差がなかった.
  • 横山 智一, 浅井 昌大, 熊田 政信, 臼井 信治, 小林 武夫
    2003 年 106 巻 7 号 p. 754-757
    発行日: 2003/07/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    多発性脳梗塞の後遺症や変性疾患に伴う嚥下障害は多く存在し,この中には喉頭挙上術や輪状咽頭筋切断術を施行することで嚥下機能が改善する症例が存在するが、多くは様々な合併症を伴っており,また高齢者が多いこと,本人家族の手術希望がないこと等を理由に手術が不可能な場合がある.今回我々は多発性脳梗塞症例2例に対し輪状咽頭筋にボツリヌストキシンを注入することにより嚥下障害が軽快したのでここに報告した.2症例ともに多発性の脳梗塞の後遺症による喉頭下降期型の嚥下障害をきたし,手術治療を拒否したため,経皮的にボツリヌストキシンを5単位注入することで経口摂取が可能になった.手術を拒否する場合や全身状態として不可能な場合に有効な治療法であると考えられる.
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