近年,日本を含む先進国において,各種のアレルギー疾患は増加している.和歌山県におけるアレルギー疾患の現状を知るため,和歌山県日高郡の中学1年生759人を対象に各種アレルギー疾患の有病率と各種アレルゲンの感作率を検討した.方法は,各種アレルギーに関する問診とMAST26(日立化成株式会社)による特異的IgE抗体,RIST(ファルマシア社)による血清総IgE値の測定を行った.各種アレルギー疾患の罹患率(既往+現症)は,アレルギー性鼻炎(含む花粉症)が37.9%,アトピー性皮膚炎が31.0%,アレルギー性結膜炎が26.2%,気管支喘息が11.3%であった.MAST26による特異的IgE抗体陽性率は,スギ花粉が48.6%と最も高く,コナヒョウヒダニ44.2%,オオアワガエリ29.6%,ハウスダストII28.9%であった.アレルギー性鼻炎,アトピー性皮膚炎,アレルギー性結膜炎,気管支喘息のあるものに,コナヒョウヒダニ,ハウスダストII,スギ,ペニシリウム,クラドスポリウム,アスペルギルスの抗体に陽性を示すものが有意に多かった.また,家族歴(2親等内)にアレルギー疾患のあるものに,コナヒョウヒダニ,ハウスダストII,ブタクサ,スギ,クラドスポリウムの抗体に陽性を示すものが有意に多かった.血清総IgE値は陽性アレルゲン項目数とよく相関していた.
先進諸国における各種のアレルギー疾患の増加要因はまだ未解決であるが,最近,衛生仮説が注目されている.今回の疫学調査の知見はこれらの増加要因を考える上でも重要な基礎的資料となるであろう.
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