日本耳鼻咽喉科学会会報
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103 巻, 7 号
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  • 春名 眞一, 鴻 信義, 森山 寛, 神尾 正巳
    2000 年 103 巻 7 号 p. 789-795
    発行日: 2000/07/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    下垂体腫瘍30例に篩骨洞•蝶形骨洞経由内視鏡手術を施行し,その有用性について検討した.従来の内視鏡下鼻内手術に準じて前•後篩骨洞を開放し,中鼻道側と嗅裂側から蝶形骨洞を大きく開窓した.0°あるいは30°硬性内視鏡に内視鏡洗浄器を装着させ内視鏡固定装置を用いて左鼻腔に固定し,右側から両手操作で腺腫摘出を開始する.本術式の有用性として第一に狭小な鼻腔においても術中の手術操作を容易とし,全体の手術時間を短縮できる.第二に鼻腔側壁の圧排による術後の鼻腔形態異常を回避できる.第三に術直後の術創の観察が容易で,術後,髄液漏の有無,鼻閉や嗅覚障害を来す可能性のある鼻副鼻腔の術後変貌に対しても外来で早期に補正手術が行える.第四に篩骨洞•蝶形骨洞経由内法のルートを使って容易に早期から再手術ができることである.再手術が必要なのは下垂体腫瘍自体の再発に対する再手術,術後術創からの鼻性髄液漏の閉鎖や慢性副鼻腔炎合併した場合である.今回の我々の経験から,脳外科医が内視鏡的視野で鉗子操作に熟達し,内視鏡操作に慣れた耳鼻科医と連携すれば篩骨洞•蝶形骨洞経由内視鏡下下垂体手術は鼻副鼻腔に低侵襲にかつ合併症を可能なかぎり回避できる用な手術であると考えられた.
  • SCIDマウスへのヒト扁桃リンパ球およびヒト皮膚移植による検討
    山本 良一, 九鬼 清典, 林 泰弘, 山中 昇
    2000 年 103 巻 7 号 p. 796-802
    発行日: 2000/07/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    扁桃病巣感染症の発症機序を研究するにあたり,扁桃細胞が標的臓器に対し直接関与しているかどうかを検討する目的で,代表的な扁桃病巣感染症である掌蹠膿疱症に着目した.掌蹠膿疱症の初期病変では掌蹠皮膚にリンパ球浸潤が起こり,これらのリンハ球はCD4陽性Tリンパ球優位であると報告されているが,浸潤するリンパ球の由来や遊走機序はいまだ不明瞭な点が多く,特に扁桃と掌蹠皮膚病及との直接的な関係を示した報告は極めて少ない.
    本研究では,掌蹠膿疱症患者の扁桃リンハ球が自己の掌蹠皮膚に対し直接反応していることをin vivoで観察するため,機能的なT•B両細胞を欠失しており高度免疫不全状態を呈することから移値実験に有用とされるsevere combined immunodeficiency (SCID)マウスを用いた移植実験を試みた.すなわち掌蹠膿疱症患者(N=8)の扁桃リンパ球あるいは末梢血リンパ球とともに,同一患者の肉眼的に正常と思われる足蹠皮膚をSCIDマウスに移植し,移植皮膚に対する移入リンハ球の動向を免疫染色にて観察した.その結果,扁桃リンパ球は末梢血リンパ球に比べ,移植皮膚の真皮乳頭部を中心とする部位に高率に浸潤し,しかもTリンパ球が主体を占めていた.さらに代表的な細胞接着分子であるLFA-1(lymphocyte function-associated antigen-1)およびICAM-1(intercellular adhesion molecule-1)を同時に検索したとにろ,その分布はリンパ球の浸潤部位に類似し,リンパ球浸潤が多いほどこれら接着分子の発現も強い傾向が認められた.にれらのにとから.扁挑リンパ球は足蹠皮膚に対し強い親和性を有するものと考えられ,またリンパ球浸潤の機序として細胞接着分子は重要な役割を果たしている可能性が示唆された.
  • 苦瓜 知彦, 鎌田 信悦, 川端 一嘉, 保喜 克文, 三谷 浩樹, 吉〓 世一, 米川 博之, 三浦 弘規, 別府 武, 内田 正興
    2000 年 103 巻 7 号 p. 803-811
    発行日: 2000/07/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    1971年から1995年の期間に癌研究会附属病院頭頸科で根治的治療を施行した中咽頭扁平上皮癌217例を対象に,リンパ節転移に対する治療方針について検討した.217例のN分類は,N0:83例,N1:42例,N2a:23例,N2b:27例,N2c:33例,N3:9例で,初診時頸部リンパ節転移を認めたのは134例(61.8%)であった.転移部位としは,上頸部が圧倒的に多く128例にみられた.次いで中頸部47例,健側.上頸部31例,下頸部21例の順で多かった.顎下部(オトガイ下部を含む)は8例,後頸蔀は5例,前頸部は1例とこれらの部位への転移は少なかった.咽頭後リンパ節転移は初診時7例にみられた.N stage別の頸部制御率はN0:96.9%,N1:90.0%,N2a:76.5%,N2b:62.5%,N2c:30.5%,N3:0%であった.N1については,原発巣が放射線冶療で制御可能な場合,頸部も根治照射の適応としてよいと考えた.N2では頸部郭清を原則とすべきであるが,原発巣とともに照射で消失した場合は経過を厳重に観察して判断する.N3には残念ながら有効な治療法は見いだせなかった.頸部郭清の範囲は,予防的郭清の場合,上,中頸部の郭清が最も重要で,原発巣が口腔に進展する場合は顎下部を加え,喉頭,下咽頭に進展する場合には下頸部を加えるという方針が現時点では妥当と考えた.術式としては,予防的郭清で節部に変形や機能障害を残してはならず,機能保存的郭清術を行うべきである.N1に対してはN0に準じた方針でほぼ問題ないが,術中に多発転移が判明した場合は全頸部を郭清する.N2以上に対しては郭清範囲の縮小よりも郭清の徹底を優先するが,今後いわゆる保存的郭清の適応は拡たされる方向にあると思われる.
  • 三上 康和, 鎌田 信悦, 川端 一嘉, 苦瓜 知彦, 保喜 克文, 三谷 浩樹, 別府 武
    2000 年 103 巻 7 号 p. 812-820
    発行日: 2000/07/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    頸部リンパ節転移における超音波診断の向上を目的に,転移リンパ節における超音波所見の特徴と,当科における超音波診断について検討した.
    対象は,1996年10月から1998年10月までの間に当科を受診し,術前治療を行わずに頸部郭清術を行った頭頸部扁平上皮癌症例58例とした.対象となったリンパ節は301個で,そのうち病理組織学的診断で転移陽性とされたリンパ節は139個で,転移陰性リンハ節は16個であった.これらのリンパ節に対してく大きさ,く内部エコー,く辺縁の性状,の三点について診断,検討した.
    最も優れた診断基準は厚みであり,7mm以上を転移陽性とした時に正診率が78%で最も高かった.厚み/長径比は,厚みには及ばないものの,診断基準の一つとしては有用であった.リンハ節領域別の検討では,上内深頸リンパ節領域と顎下リンパ節領域では厚み7mm以上,中,下内深頸リンパ節領域では6mm以上を転移陽性とするのが最適であった,内部エコーを5種類に分類し検討したところ,転移陽性リンバ節でけ均一高エコー型と不均一エコー型,転移陰性では偏在高エコー型がそれぞれ特徴的であった.均一低エコー型は両者で認められた.辺縁の性状では,明瞭であったものが,転移リンパ節,転移陰性リンパ節でそれぞれ81%,98%であった。
    現在我々は.厚みを中心にリンパ節の形状,内部エコー,原発部位等の基準を総合的に判断し診断している.前述の大きさ等を検討したリンパ節に対してこの診断基準を当てはめると正診率は83%であり,厚みのみを診断基準とした場合より高い正診率が得られた.
    厚みを中心に今回判明した診断基準を加え,総合的に判断し診断することが,正診率を上げるために重要であった.
  • 河野 敏朗, 古川 滋, 松田 秀樹, 高橋 優宏, 遠藤 亮, 井上 真規, 西村 剛志, 佃 守
    2000 年 103 巻 7 号 p. 821-828
    発行日: 2000/07/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    頭頸部扁平上皮癌培養上清中には,腫瘍細胞が増殖するための直接的な増殖因子活性を持つサイトカインまた腫瘍細胞の増殖にとって有利な環境をもたらす免疫抑制性サイトカインなどが検出されている.今回,ヒト頭頸部扁平上皮癌細胞であり,IL-8を産生しているKB細胞を用いて血管新生阻害剤であるTNP470の抗腫瘍効果を検討した.
    In vitroにてTNP470はKB細胞よりのIL-8産生を抑制し,同様に抗IL-8抗体もIL-8活性を抑制することが確認された.TNP470(10mg/ml)に抗IL-8抗体(10μg/ml)を加えKB細胞を併用処理したところ無処理群に比べ有意にKB細胞の増殖が抑制され,さらにKB細胞の増殖は,シスプラチン単独に比べTNP470(1mg/ml)とシスプラチンの併用処理により有意に抑制された.
    In vivoにて抗IL-8抗体,抗VEGF抗体,TNP470のそれぞれの抗腫瘍効果を検討した.経腫傷的,経皮的,経静脈的にTNP470(10mg/kg)を投与し,この中で,経腫瘍的な投与方法が最も効果的であった.抗IL-8抗体腹腔投与と経腫瘍的TNP470の併用投与が抗IL-8抗体単独投与以上に腫瘍体積の減少を認めた.これらの結果より頭頚部固形腫瘍に対するTNP470,シスプラチン,また抗IL-8抗体の効果的な併用治療法の可能性が示唆された.
  • 山岸 茂夫, 大西 正樹, Ruby Pawankar
    2000 年 103 巻 7 号 p. 829-835
    発行日: 2000/07/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    産生にどのような影響を与えるか,中和抗体(抗IL-1α抗体,抗TNF-α抗体)を用いて検討した,アレルギー性鼻炎患者の鼻粘膜上皮細胞を培養し抗IL-1α抗体,抗TNF-α抗体をそれぞれ(0.1ng-1000ng)を加え48時間後の培養上清中のIL-6, IL-8, GM-CSFをELISAにて測定した.無添加と比して抗IL-1α抗体添加でIL-6の産生量の最大抑制率は,76.3±6.2%, IL-8は55.2±8.7%, GM-CSFは69.3±4.9%であり有意差を認めた.無添加と比して抗TNF-α抗体添加でIL-6の産生量の最大抑制率は,53.0±12,3%, IL-8は92.9±13.0%, GM-CSFは42.1±11.5%であり有意差を認めた.また,抗IL-1α抗体添加は抗TNF-α抗体添加に比して有意にIL-6, GM-CSFの産生を抑制した.
    抗IL-1R抗体および抗TNF-αR抗体を用いてflow cytometryにて培養鼻粘膜上皮細胞に発現しているIL-1αR, TNF-αRを確認した.鼻粘膜上皮細胞から産生される1L-1α, TNF-αは,それ自身のレセプターに働き鼻粘膜上皮細胞のIL-6, IL-8, GM-CSFの産生の増強に作用し,その作用はIL-1αでより強いと考えられた.
  • 硲田 猛真, 芝埜 彰, 齊藤 優子, 嶽長 博, 十河 英世, 藤村 聡, 榎本 雅夫
    2000 年 103 巻 7 号 p. 836-839
    発行日: 2000/07/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    アテロコラーゲン真皮欠損用グラフト(テルダーミスR)を用い,フィブリン糊を用いずに行う簡易鼓膜形成術を開発した.施行63耳のうち,順調に鼓膜閉鎖が得られたもの445耳71.4%と良好な成績を得た.本術式は再建材料の採取が不要で,ウイルス等の感染症の危険もなく医療コストの削減にもつながり極めて有用と考えた.
  • 梅野 哲義, 森 一功, 中島 格
    2000 年 103 巻 7 号 p. 840-843
    発行日: 2000/07/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    UPPP後にまれな合併症として鼻咽腔狭窄を来した症例を経験した.症例は41歳男性で,鼻閉を主訴に受診した.受診2ヵ月前に他院にてUPPPを施行されていた.初診時の咽頭の所見は,左右の口蓋弓と軟口蓋が咽頭後壁に癒着し鼻咽腔は狭窄していた.治療は咽頭口蓋形成術を施行した.本疾患の頭部側面規格化X線写真を検討した結果,鼻咽腔狭窄の原因としてdeep pharynxなどの咽頭腔の形態異常があったことが考えられた.このような咽頭腔に形態異常がある場合,UPPP後に鼻咽腔閉鎖不全や本症例のように鼻咽腔狭窄を来すようなことがあるので,術前には咽頭腔の形態の慎重なチェックが必要と考えられた.
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