日本耳鼻咽喉科学会会報
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110 巻, 8 号
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原著
  • ―根治照射後救済手術としての有用性―
    三浦 弘規, 鎌田 信悦, 川端 一嘉, 多田 雄一郎, 増淵 達夫, 中村 成弘
    2007 年 110 巻 8 号 p. 571-580
    発行日: 2007/08/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    〔目的〕早期声門癌における根治照射後の残存あるいは再発例に対しての前側方喉頭垂直部分切除術 (frontolateral partial vertical laryngectomy : FLPVL) の有用性を明確にする.
    〔対象と方法〕FLPVLを施行した74例 (根治照射後61例) についての術後を, 喉頭機能の回復および創傷治癒の経過と腫瘍制御の面から検討した. 嚥下機能は経鼻栄養チューブ留置期間, 呼吸機能は気管孔完全閉鎖期間, 発声機能は最大発声時間 (Maximum phonation time : MPT) をもっておのおの評価した. また創傷治癒は, 入院中と退院後での合併症の頻度と内容, 入院期間, 創部完全治癒までの期間で評価した. 腫瘍制御に関しては, 局所術後再発と腫瘍因子, 喉頭保存率, 生存率の項目で評価した. それぞれの項目は, 根治照射 (60GY以上) 後の残存あるいは再発に対しての手術群 (A群 : 61例) と初回手術 (60GY未満) 群 (B群 : 13例) の2群間で, また項目により標準切除の群と拡大切除の群とで比較・検討した.
    〔結果〕74例のFLPVLで比較・検討を行い, A群では, B群に比べて退院後の合併症の有意な増加と, 創部完全治癒期間に有意な延長を認めたが, 入院中の合併症, 経鼻栄養チューブ留置期間, 気管孔完全閉鎖期間, 入院期間に差は認めなかった. 拡大切除の群では標準切除の群に比べて気管孔完全閉鎖期間と, 入院期間が有意な延長を認めたが, MPTは有意に良好であった. A群では, 術前の前連合浸潤や, rT2の症例に再発が有意に多かったが, 5年局所制御率は85.0% (SE=0.05), 最終の局所制御率と喉頭保存率は93%, 87%と良好であった. 60GY以上の照射後であっても, FLPVLの術後経過, 治療成績は良好であった.
  • ―レーザー蒸散術と声帯内自家脂肪注入術の併用―
    細川 清人, 渡邊 雄介, 今井 貴夫, 花本 敦, 伊東 真人, 松永 敦, 久保 武
    2007 年 110 巻 8 号 p. 581-585
    発行日: 2007/08/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    声帯溝症の治療は音声治療から手術治療まで数々の方法が報告されているが, 治療に難渋する疾患の一つである. 今回われわれはKTPレーザーによる声帯溝の辺縁を蒸散し声帯内自家脂肪注入を併用する手術治療を行うことにより, 音声改善において良好な結果が得られたので報告する. 方法は経口挿管・全身麻酔下に, まず腹部の脂肪を18G注射針にて採取し (松永法), その後ラリンゴマイクロサージャリーに準じて喉頭展開し声帯を明視下におく. 次に両側声帯の溝のエッジを蒸散するようにKTPレーザーの照射を行う. 採取した脂肪は, 喉頭注入針にて経口的に両側甲状披裂筋内に約1ccずつ注入する. 以上の手技を行うことにより声帯に新しい振動面が作られ, 今まで溝によって障害されていた声帯振動が改善しその結果, 音声改善が得られると考えている. この手技を7例に施行し全例にて聴覚印象の改善を認め, 6例で最大持続発声時間の改善を認めた. 本手技は声帯溝症の新しい治療法として期待できる方法であると考える.
  • 志賀 英明, 三輪 高喜, 塚谷 才明, 木下 弥生, 斉藤 幸子, 小早川 達, 出口 雄一, 古川 仭
    2007 年 110 巻 8 号 p. 586-591
    発行日: 2007/08/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    スティック型嗅覚検査法 (OSIT) は, 嗅覚障害者の診断にも有用であることが明らかとなっている. さらなる用途拡大の可能性を目指して, 人間ドック受診者を対象としてスクリーニング検査としての有用性を検討した. NTT西日本金沢病院における人間ドック受診者83名 (男性49名, 女性34名) を対象とした. 自覚的な嗅覚の程度を6段階で示すとともに, OSITのうち3臭 (ばら, カレー, 蒸れた靴下) を用いた検査を行った. 自覚的に嗅覚障害を疑われた対象ならびにスティック型検査で2点以下の対象に残る10臭のスティックを用いて検査を行った.
    83名中11名が自覚的に軽度以上の嗅覚低下があると回答し, 38名が3臭のスティック型検査で2点以下を示した. 13臭での精査の結果, 3臭での検査が2点であった29名中7名が, 斉藤らが示す “標準より劣る” 8点以下であった. 2点であった被験者で嗅覚低下の自覚を有する群は, 嗅覚低下の自覚を有さない群と比較し, 8点以下である割合が有意に高かった. また3臭での検査で1点以下であった被験者では, 嗅覚低下の自覚と8点以下である割合の相関は認めなかった. さらに男性に精査対象の被験者の割合を多く認めたが, 精査群での嗅覚低下の検出率に, 男女間の有意差は認めなかった. OSITの3臭を用いた検査とアンケートを併用することで, 人間ドックでの嗅覚障害スクリーニングがより効果的に運用されると思われた.
  • 大石 直樹, 新田 清一, 山下 拓, 南 修司郎, 小倉 真理子
    2007 年 110 巻 8 号 p. 592-598
    発行日: 2007/08/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    一般市中病院におけるBell麻痺患者の受診背景と予後因子を明らかにするため, 2003年1月から2005年12月までの3年間に当科で治療を行ったBell麻痺新鮮例185例を対象として統計学的解析を行った. 発症から6カ月経過した時点での全体の治癒率は85.0%であった. Bell麻痺患者は重症度に関わらず早期受診が多い特徴がみられた. 初診時顔面神経麻痺スコアが低ければ統計学的に有意に予後は悪いという結果であったが, 弱い相関関係に留まった. 予後診断検査としてのアブミ骨筋反射は陽性的中率95.5%, 陰性的中率18.6%であった. さらにどのような因子が予後に寄与しているかについて, コックス比較ハザードモデルを用いた後向きコホート研究を行った. 検討した因子は, 性別, 患側, 年齢, 自覚症状 (耳痛, 味覚障害, 眼症状) の有無, 糖尿病合併の有無, 顔面神経麻痺スコア (経過中の最低値), 抗ウイルス剤投与の有無である. その結果, 顔面神経麻痺スコア最低値および抗ウイルス剤の有無のみが有意差をもって予後と関連していた. 顔面神経麻痺スコアのハザード比は1.101, 抗ウイルス剤のハザード比は1.586であった. 研究デザインの限界から解釈には一定の慎重さが求められるものの, 抗ウイルス剤の投与が予後の改善に寄与する可能性が考えられた.
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