日本耳鼻咽喉科学会会報
Online ISSN : 1883-0854
Print ISSN : 0030-6622
ISSN-L : 0030-6622
100 巻, 8 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 相原 隆一, 高橋 宏尚, 河北 誠二, 丸山 純, 湯本 英二
    1997 年 100 巻 8 号 p. 831-838
    発行日: 1997/08/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    術後性上顎嚢胞51例に対し, 1.5T超伝導型MRI装置を用いて嚢胞の数, 存在部位, 描出像の特徴などを観察した. さらに手術を施行した42例の術中所見と比較して本疾患におけるMRI診断の意義を考察した. MRIで診断した嚢胞は121個であり, 多房性嚢胞が51%, 両側性嚢胞が45%に認められた. 存在部位を7種類に分類して観察したところ, 中心部型が38%, 上部辺縁型が33%, 中央または下方内側型が29%であった. 多房性嚢胞においては中心部型を含むものは62%で, 辺縁部嚢胞のみの組み合わせが38%であった. T1およびT2強調画像における信号強度の組み合わせにより4種類に分類して観察したところ, T1で低, T2で高信号の1型, T1T2ともに等~高信号の2型, T1で等~高, T2で低信号の3型がそれぞれ30%前後で合計94%と大部分を占め, T1 T2ともに低信号を示す4型は6%のみに認められた. また, 描出像の均一なものは全体で51%であったが, 1型で72%, 2型で51%, 3型で35%, 4型で14%であり, 1型では均一に, 3, 4型では不均一に描出される傾向があった.
    手術例ではMRIで診断された嚢胞数83個のうち術中に確認したものは69個, 83%であった. 一方, MRIでは診断されず手術により新たに判明した嚢胞が2個あった.
    MRIによる詳細な術前診断により, 内側に隣接する嚢胞を有するタイプの多房性嚢胞症例に対しても鼻内手術の適応が広がり, 全体の91%で鼻内手術が可能であった. しかし, 単房性で上部外側型の嚢胞に対しては鼻内手術が不可能であることが多かった.
    術後性上顎嚢胞に対する鼻内手術の可否を決定する際にMRIは極めて有用な情報を与えることがわかった.
  • 藤村 和伸, 吉田 雅文, 牧嶋 和見
    1997 年 100 巻 8 号 p. 839-845
    発行日: 1997/08/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    本研究では, f1, f2の2音を加えた時に安定して出現する2f1-f2歪成分の発生部位について検討するため, さらに第3音を与えた際に生じる歪成分の抑圧をCMとOAEにおいて同時に観察した. 実験にはモルモットを使用し, 4.62kHz (f1), 6kHz (f2) の2つの純音を50~70dB SPLの範囲で入力して2f1-f2成分を測定した. 第3音は, 2.2~8.4kHzの純音を使用し, 抑圧の認められない音圧レベルから5dBステップで上昇させて与えた. 得られた結果より, 歪成分を5dB抑圧するのに必要な第3音の音圧と周波数の関係を求め等抑圧曲線とした. CM, OAEの結果とも, 等抑圧曲線はf2周波数付近が底となる谷形となり, 2f1-f2歪成分は歪成分の周波数部位のみで生じているのではなく, むしろ入力音の周波数部位付近にその発生の中心があると思われた. また, f1, f2の音圧が低下するに従って, 等抑圧曲線はより深い谷形となり, 刺激音の音圧が低いほど歪成分の発生にかかわる基底板上の部位が限局化していると思われた. 以上より, 歪成分を指標として特定の周波数についての蝸牛機能を評価した場合, 得られた結果は主に刺激音周波数周囲の状態が反映され, 使用する刺激音圧はより低くする必要があると考えた. すなわち, 70dB SPLといった比較的大きな刺激音を用いたDPオージオグラムでは基底板の広範な活動を測定していることになり, 目的とした周波数部位を適切に評価できない可能性があると思われた.
  • 特にCT・MRIの有用性について
    佐川 鉄太郎, 田口 浩, 松崎 充男, 安岡 義人, 亀井 民雄
    1997 年 100 巻 8 号 p. 846-855
    発行日: 1997/08/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    目的: 頸動脈小体腫瘍において, 術前に手術時の腫瘍と頸動脈の剥離操作の難易をどの程度予想できるのかを調べた.
    対象: 頸動脈小体腫瘍4症例に腫瘍摘出術を施行した. 2例で内頸動脈を温存できたが, 残り2例では温存できず, 腫瘍摘出と同時に人工血管 (ゴアテックス) による頸動脈の再建術を行った.
    方法: これら4例で術前の検査所見を, 手術時の腫瘍と頸動脈の剥離操作との関連において検討した.
    結果: 手術時頸動脈温存が可能か否かの術前の判断には, 腫瘍の大きさ, 前後方向への可動性とともに, CTとMRIが重要であった.
    結論: 頸動脈分岐部付近の造影CTにて腫瘍と頸動脈が判別できないときは, 手術時の腫瘍の頸動脈からの剥離が困難となることが考えられた. またMRIは血管内腔の状態を認識するのに適しているが, 腫瘍の血管壁への浸潤に関しては必ずしも描出しないことが明らかになった.
  • 藤井 隆, 佐藤 武男, 吉野 邦俊, 稲上 憲一, 長原 昌萬, 沖田 純
    1997 年 100 巻 8 号 p. 856-863
    発行日: 1997/08/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    1979~93年までの喉頭癌一次例1079例 (平均年齢64.2歳, 男女比13: 1, 非喫煙者率3.2%) の原発部位別頻度は声門癌64%・声門上癌35%・声門下癌1%であった. 臨床病期分布は声門癌ではstage I 64%, II 23%, III 11%, IV 2%であったが, 声門上癌ではstage I 6%, II 27%, III 36%, IV 31%であった. 全例の5年相対生存率は84% (声門癌93%, 声門上癌68%) であり, 声門癌ではstage I 98%, II 91%, III 74%, IV 52%, 声門上癌ではstage I 67%, II 83%, III 70%, IV 52%であった. 原発部位別にみた治療成績の差は, 声門癌全体の64%を占めるstage Iの良好な治療成績が声門癌全体の治療成績を引き上げた結果であると考えられた.
  • 吉川 琢磨, 生井 明浩, 池田 稔, 木田 亮紀
    1997 年 100 巻 8 号 p. 864-869
    発行日: 1997/08/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    小児の異物誤飲事故は, 日常診療において遭遇する機会が多いが, 小型電池によるものは早期より重篤な合併症を引き起こしうるため, 近年多数の報告がなされている. しかしそのほとんどが胃あるいは腸に異物が落下していた例であり, 食道内に停滞していた症例についての報告は多くはない. 今回我々は, 従来の小型電池よりも電圧の強いリチウム電池を誤飲し食道潰瘍をきたした1症例を経験したので報告する. さらに, 犬を用いて実験的にリチウム電池による食道潰瘍を作製し, 食道粘膜の傷害程度と電池の停滞時間の関係について組織学的に検討を行った. 対照としての100円硬貨の挿入後4時間の組織と電池挿入後1時間の組織では, 異常所見は認められなかった. 電池挿入後2時間では, 肉眼上異常所見は見られなかったが, 組織学的には粘膜上皮中間層の解離が認められた. 電池挿入後4時間では, 肉眼上も明らかな潰瘍性変化が認められ, かつ組織学的にも粘膜上皮の剥離, 脱落などの変性が認められた. 今回の実験結果から小児の異物誤飲時の治療指針としては, 早期に異物の種類を診断し, 特に組織傷害力が強い電池異物と診断された場合には, 異物誤飲後4時間以内の早期の摘出を心掛け, 重篤な合併症を回避することが重要と思われる.
  • 福島 龍之
    1997 年 100 巻 8 号 p. 870-879
    発行日: 1997/08/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    145例の口腔, 咽頭癌の核DNA ploidyを, パラフィン包埋切片を用いflow cytometryで測定解析した. aneuploidの出現頻度は70%であった. 口腔癌に比し下咽頭癌で出現頻度が高かった. ploidyとT分類との間に関連性はあった. またstage I, IIの口腔癌とstage III, IVの上咽頭, 中咽頭癌でdiploidはaneuploidに比べて累積生存率が良かった. 30例の口腔癌, 咽頭癌患者の検討で, diploidに比べてaneuploidのほうが化学療法によく反応し, 縮小率が高かった. DNA indexの低い症例は化学療法奏功率が低かった. DNA heterogeneityについて下咽頭癌と口腔癌とを比較すると, 下咽頭癌に多く, 臨床的悪性度との関係が示唆された.
  • 反回神経麻痺
    新美 成二
    1997 年 100 巻 8 号 p. 880-883
    発行日: 1997/08/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
feedback
Top