術後性上顎嚢胞51例に対し, 1.5T超伝導型MRI装置を用いて嚢胞の数, 存在部位, 描出像の特徴などを観察した. さらに手術を施行した42例の術中所見と比較して本疾患におけるMRI診断の意義を考察した. MRIで診断した嚢胞は121個であり, 多房性嚢胞が51%, 両側性嚢胞が45%に認められた. 存在部位を7種類に分類して観察したところ, 中心部型が38%, 上部辺縁型が33%, 中央または下方内側型が29%であった. 多房性嚢胞においては中心部型を含むものは62%で, 辺縁部嚢胞のみの組み合わせが38%であった. T1およびT2強調画像における信号強度の組み合わせにより4種類に分類して観察したところ, T1で低, T2で高信号の1型, T1T2ともに等~高信号の2型, T1で等~高, T2で低信号の3型がそれぞれ30%前後で合計94%と大部分を占め, T1 T2ともに低信号を示す4型は6%のみに認められた. また, 描出像の均一なものは全体で51%であったが, 1型で72%, 2型で51%, 3型で35%, 4型で14%であり, 1型では均一に, 3, 4型では不均一に描出される傾向があった.
手術例ではMRIで診断された嚢胞数83個のうち術中に確認したものは69個, 83%であった. 一方, MRIでは診断されず手術により新たに判明した嚢胞が2個あった.
MRIによる詳細な術前診断により, 内側に隣接する嚢胞を有するタイプの多房性嚢胞症例に対しても鼻内手術の適応が広がり, 全体の91%で鼻内手術が可能であった. しかし, 単房性で上部外側型の嚢胞に対しては鼻内手術が不可能であることが多かった.
術後性上顎嚢胞に対する鼻内手術の可否を決定する際にMRIは極めて有用な情報を与えることがわかった.
抄録全体を表示