都心のオフィス街にあるビル診療所を受診するスギ花粉症患者の受診動態を明らかにするため,平成2年から平成11年までの10年間のスギ花粉飛散期間中に,東京都千代田区にある著者の私設診療所においてスギ花粉症患者の受診者数調査を行い,花粉数との関係につき検討を行った.また平成7年に行ったアンケート調査とCAP RAST検査の結果から,対象患者の背景とスギ以外の抗原の陽性率について検討を行った.
平成7年に受診したスギ花粉症患者の男女比は674名対501名で男性に多く,男性は40歳代,女性は20歳代が最も多かった.患者の勤務地は千代田区,中央区で全体の79.2%を占めるが,同地区に居住しているものは1.9%に過ぎなかった.同時にCAP RAST検査を施行し得た232名のスギ以外の抗原の陽性率はヒノキ64.7%,ハウスダスト138.3%,ヤケヒョウヒダニ35.3%,コナヒョウヒダニ34.4%,イネ科混合19.8%,雑草(キク科)混合10.3%であった.スギ単独の症例は19.0%,スギとヒノキの両方が陽性で他が陰性の症例は23.3%で,約6割の症例にスギ,ヒノキ以外の何らかの抗原による重複感作が疑われた.
週毎にまとめた花粉数と患者数を比較すると,ほとんどの年で3月の第1週に花粉数の増加に伴って初診患者が最大となり,再診患者は初診患者に遅れて1-2週後にピークが認められた.3月後半からは花粉数が増加しても初診患者の増加はあまり認められない.
平成2年から平成11年の10年間について,年毎の花粉数と患者数の関係を見ると,一次回帰式y=0.1005x+547.07,R2=0.7562と高い相関を示した.また平成7年から平成11の5年間について,年毎の花粉数の平方根と患者数の関係を見ると,一次回帰式y=11.167x+376.72,R2=0.9941と非常に高い相関を示し,花粉数の予測値からその年の患者数もかなり高い精度で予測できるものと考えられる.
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