日本耳鼻咽喉科学会会報
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103 巻, 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 羽藤 直人, 本多 伸光, 暁 清文, 村上 信五, 青野 央, 柳原 尚明
    2000 年 103 巻 2 号 p. 133-138
    発行日: 2000/02/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    近年ベル麻痺の病因として単純ヘルペスウイルスの関与が強く示唆されるようになり,海外ではベル麻痺に対し,抗ウイスル剤であるアシクロビルが使用されつつある.一方,ベル麻痺に対する大量ステロイド療法の有用性は明らかであるが,副作用があり入院治療が必要であるなど問題点も残されている.著者らは,より病因に即した治療法であり,かつ外来で内服治療可能なアシクロビル-プレドゾロン併用療法を,愛媛大学医学部耳鼻咽喉科外来において1995年10月から98年12月の間施行した.アシクロビルは2000mg/dayを1週間,プレドニゾロは初回量を40~60mg(1mg/kg/日)とし2週間で漸減し経口投与した.顔面表筋運動スコアが20点以下で発症1週以内のベル麻痺69例に対し,本併用内服治を行った結果,95.7%と良好な治癒率を得た.特に,発症3日以内の早期治療始例においては治癒率100%と,従来行っていたプレドニン単独療法と比較し有に良好な成績であった.また,早期治療開始例では早期治癒傾向が認められ,痺悪化予防効果が示唆された.一方,帯状庖疹ウイルスの再活性化が病因でありながら,耳介に帯状疱疹を伴わずベル麻痺として治療されるzoster sine her-Peteに対しても本治療は有効であった.アシクロビル-プレドニゾロン併用療法は重篤な副作用もなく,麻痺発症3日以内のベル麻痺に対しては,本邦においても今後普及されるべき治療法と考える.
  • 宮崎 信, 出島 健司, 濱 雄光, 石坂 成康, 安田 繁伸, 福島 一登, 村上 泰, 久育 男
    2000 年 103 巻 2 号 p. 139-146
    発行日: 2000/02/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    従来,我々が提唱してきたCTスコアおよびそれに基づく改善度スコアは,慢性副鼻腔炎の術前術後に一洞単位で評価する方法として簡便で再現性が高い.この評価法を定量測定した結果と比較しその有用性や問題点を明らかとしたので報告する.
    1996年4月から1997年4月までの1年間に京都府立医科大学附属病院耳鼻咽喉科にて内視鏡下鼻内副鼻腔手術(以下ESS)を施行した258洞を対象とした.
    副鼻腔CTの陰影がほとんどないものから,陰影が約50%未満,約50%以上,ほとんど陰影が充満しているものまでCTスコア0から3へと4段階に評価し,さらに術前術後のCTスコアを比較し,不変,増悪したものを改善度スコア0,CTスコアが1段階改善したものを改善度スコア1,2段階以上改善あるいは術後CTスコア0のものを改善度スコア2と3段階に評価した.画像定量解析はCTをパソコンに取り込み,その陰影の占める比率を算出し陰影率とした.
    画像定量解析では微細な陰影も捉えるためCTスコアと比較すると一部不一致も認められるが,おおむね正の相関が得られた.前頭洞などの小さな副鼻腔や少量の陰影については評価を誤りやすく注意が必要である.改善度スコアと術前術後の陰影率の差の間にも良好な相関を見た.
    CTスコア•改善度スコアは過去に報告されている他の評価方法と比べても差を認めず,同程度の精度で妥当な評価が可能であった.
    今回我々が検討した副鼻腔CT所見の簡易的評価法は利便性と再現性さらに満足できる精度を考慮に入れると,日常臨床での簡便なStage分類としての有用性は十分あると考えられた.
  • 佐藤 公則, 吉田 哲二, 梅野 博仁, 中島 格
    2000 年 103 巻 2 号 p. 147-153
    発行日: 2000/02/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    両側反回神経麻癖による両側声帯正中固定例12例に対するレーザー披裂軟骨切除術症例を検討し以下の結果を得た.
    1) 炭酸ガスレーザーによる披裂軟骨切除術は,外切開を加えず,手術侵襲が少なく,音声をあまり損なうことなく気道が確保でき誤嚥もない術式であり,両側反回神経麻痺による両側声帯正中固定例に対して有用な手術法と考えられた.
    2) レーザー披裂軟骨切除術を行う際の重要なポイントは,披裂軟骨切除は粘膜下に行う,甲状披一裂筋後部も一部切除し後部声門の側壁を広く開大する,声帯膜様部にはなるべく手術操作を加えない,創の閉鎖にフィブリン糊を用いるであった.
  • 李 雅次, 吉田 知之, 鈴木 衛
    2000 年 103 巻 2 号 p. 154-159
    発行日: 2000/02/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    細胞でのチロシンリン酸化は種を越えて生物の成長と発生の際,生体としての細胞機能の調節にかかわっている.内耳の機能を含めて成長因子レセプターチロシンキナーゼ(receptor tyrosine kinase,以下RTK)に関する多くの研究がなされてきたが,多くのRTKが最近同定されたためすべての組織で系統立ててその発現バターンは検討されていないそれ故我々はdegenerate PCR法を用いてマウス内耳に存在するRTKを含めたチロシンキナーゼ(TK)のcDNAシークエンスを調べるにとを試みた.その結果,過去において内耳に同定されたRTKとともに現在まで内耳に同定されていないTKを得た.すなわち,内耳にはにれまで研究されてきた以上の多くのRTKが存在していることが分かり,また内耳の機能にかかわうている遺伝子を同定するのにdegenerate PCR法が有用であることが示された.
  • 加藤 昭彦, 山田 弘之, 石永 一
    2000 年 103 巻 2 号 p. 160-164
    発行日: 2000/02/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    今回我々は1995年1月から1997年7月までに,当科において施行した甲状腺術159例のうち上皮小体機能温存を試みた全摘術24例,亜全摘術8例について,後にintact-PTH値の測定を反復して行い,術後の上皮小体機能につき検討したその結果,甲状腺全摘術•亜全摘術において,上皮小体を血流を残して温存るか,自家移植を行い.上皮小体機能の温存を試みたところ,全摘術24例中231(95.8%),亜全摘術8例中7例(87.5%)でintact-PTH値が正常範囲となり,科における上皮小体機能温存の方法でも,良好な結果が得られることが確認された.
    上皮小体を血流を残して2腺似上温存した場合には,全例で補充療法を止めることができ,その半数以上で術後に補充療法を全く必要としなかつた.したがつて,血流を残して温存するのであれば2線以上温存するのが望ましいと思われた.上皮小体移植のみを行った例では,全例に術後補充療法を必要としたものの,最終的には全例で補充療法を止めることができた.しかし最長で2年6ヵ月目にintact-PTHが正常化した例が存在し,術後の活性型ビタミンD3製剤の補充療法が,上皮小体の移植片の機能回復に対して抑制的に働いていた可能性が疑われた.
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