日本耳鼻咽喉科学会会報
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105 巻, 7 号
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  • 渋谷 恵夏, 鈴木 恵美子, 朝比奈 紀彦, 洲崎 春海
    2002 年 105 巻 7 号 p. 783-789
    発行日: 2002/07/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    嗅覚障害症例1952例において,本邦の基準嗅覚検査で使用されている5種類の基準臭(β-phenyl ethyl alcohol, methyl cyclopentenolone, iso-valeric acid, γ-undecalactone, scatol)に対する嗅覚の差異について検討した.
    対象症例における嗅覚障害の原因別例数は,慢性副鼻腔炎が887例,鼻アレルギーが255例,感冒罹患後が326例,頭部外傷後が77例,薬剤性が28例,先天性が39例,原因不明が257例,その他が83例であった.
    治療前の基準嗅力検査の結果で1種類のみの嗅素が測定できた例は,検知閾値で82例あり,認知閾値で157例あった.iso-valeric acidのみが測定できた例が検知閾値で40例,認知閾値で101例あり,検知閾値および認知閾値ともに他の嗅素が測定できた例よりも有意に多く認めた(P<0.01).これらの症例の嗅覚障害の原因別頻度には特定の傾向はなかった.
    基準嗅力検査で5種類の基準臭に対する嗅覚閾値がすべてスケール•アウトであった症例は,検知閾値がスケール•アウトであった症例が552例で,認知閾値がスケール•アウトであった症例は630例であった.これらの症例において治療後の経過で1種類の嗅素のみ嗅覚閾値が改善した症例は,検知閾値改善例が33例であり,認知閾値改善例が32例であった.iso-valeric acidのみが改善した例は検知闘値で15例,認知閾値で13例であり,検知閾値および認知閾値ともに他の嗅素が改善した例よりも有意に多く認めた(p<0.0l).これらの症例の嗅覚障害の原因別頻度には特定の傾向がなかった.
    iso-valeric acidに対する嗅覚は比較的障害されにくく,また治療によって回復しやすい嗅覚であることが示された.嗅覚障害症例におけるこのような嗅素に対する嗅覚の差異は,嗅素に対する嗅細胞のニオイ受容蛋白の数がニオイ分子の種類によって違いがあることなどが関係していることが考えられる.
  • 宮原 裕, 家根 旦有, 鶴田 至宏, 上村 裕和
    2002 年 105 巻 7 号 p. 790-798
    発行日: 2002/07/20
    公開日: 2008/12/15
    ジャーナル フリー
    1986年9月より1997年12月までに当科で加療を行った喉頭扁平上皮癌患者213例を対象に声門癌T1例の放射線治療制御率,遠隔転移例,緊急気管切開術症例を取り上げ,今後の喉頭癌治療上の問題点を検討した.
    年齢は40歳から87歳までで,男性は197例,女性は16例であった.部位別には声門癌が120例(56.3%),声門上癌が90例(42.3%),声門下癌が3例(1.4%)であった.
    治療は早期例には放射線治療,進行例には喉頭全摘を主体として行い,声門癌T1aにおける放射線制御率は83.8%,T1bで84.6%であった.3年喉頭保存率はT1aで89.1%,T1bで92.3%であった.喉頭癌全体の5年生存率は88.6%であった.部位別には声門癌97.6%,声門上癌77.5%であった.
    遠隔転移は14例に見られ,肺,骨,肝の順に多かった.遠隔転移を来しやすい高危険群はtransglottisを含む声門上癌T3-4,N1,N2b,pN2c例であった.
  • 花満 雅一, 鈴木 幹男, 北西 剛, 北野 博也
    2002 年 105 巻 7 号 p. 799-803
    発行日: 2002/07/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
  • 吉田 申一, 折原 廣己, 谷野 徹, 大島 毅
    2002 年 105 巻 7 号 p. 804-811
    発行日: 2002/07/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
  • 梅田 裕生, 高木 明, 佐藤 進一, 山河 和博
    2002 年 105 巻 7 号 p. 812-815
    発行日: 2002/07/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    これまで報告のない鼓室神経叢由来の中耳神経鞘腫症例を経験したので報告する.症例は23歳男性で,右耳難聴を主訴として来院した.現病歴として平成10年8月頃より右耳難聴を自覚し,平成11年4月健診で難聴を指摘されていた.同年6月近医耳鼻科にて,鼓膜の膨隆を指摘され紹介受診した.初診時,鼓膜は中耳腫瘍にて大きく膨隆し,混合性難聴を認めたが,めまい,顔面神経麻痺,味覚障害を認めなかった.CT上,中下鼓室に軟部組織陰影を認め,鼓室岬角の骨の菲薄化を認めた.生検にて中耳神経鞘腫を疑い,平成11年8月鼓室内腫瘍摘出術および,鼓室形成術を施行した.腫瘍は中鼓室を中心に存在し,腫瘍によるキヌタ骨長脚の欠損とアブミ骨の上方への圧排を認めた.腫瘍摘出後,自家キヌタ骨を用いてIII型変法とし手術を終了した.病理診断は神経鞘腫アントニーA型であった.術後右耳下腺唾液分泌の低下を認めた.中耳神経鞘腫の鑑別診断には,各神経の走行を確実に把握し,CTにて合致した所見を見出すことが重要であることが考えられた.
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