日本耳鼻咽喉科学会会報
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75 巻 , 2 号
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  • 小野田 元男
    1972 年 75 巻 2 号 p. 157-169
    発行日: 1972/02/20
    公開日: 2010/12/22
    ジャーナル フリー
    内耳開窓術は耳硬化症, 伝音系奇形耳, 慢性中耳炎等の伝音性難聴患者の聴力増進を目的として広く行われているが, 一方では内耳開窓術は人体内耳に直接の刺戟を加え得る絶好の機会を与えてくれるものであり, これにより惹起される迷路反応を観察することは臨床上興味深い所である.
    我々は内耳開窓術中, 開窓時の眼振を電気眼振記録装置を用いて記録観察したのでこれを報告する.
    1. 局所麻酔下に内耳開窓術を行った22例中15例に開窓直後水平性眼振を認めた. 眼振の方向は非術側向9例, 術側向6例で, 方向が一定しなかったのは我教室では開窓を水平半規管膨大部から前脚部にかけて行っているためと, 開窓と云う操作が膜迷路に対して複雑な刺戟を与えるためかと考えられる.
    2. 以上の中, 2例において開窓時の眼振第2相を観察した. すなわち開窓直後出現した術側向眼振が消失して数秒の後, 非術側向眼振が出現した.
    3. 全身麻酔下に内耳開窓術を行った10例においては開窓時の眼振は全く認められず, わずかに2例に開窓直後非術側向の眼球偏位を認めたに過ぎない.
  • 木村 淑志
    1972 年 75 巻 2 号 p. 170-190
    発行日: 1972/02/20
    公開日: 2010/12/22
    ジャーナル フリー
    (研究目的) 聴覚の老化現象は末梢内耳と中枢神経聴覚路の両者の退行性変化に起因することが知られている.
    著者は各年齢別の男性および女性に, 内耳および中枢性難聴診断のための聴覚検査を行うことにより, 生理的な老化の過程において, 末梢内耳と中枢神経聴覚路における聴覚機能の低下がどのように進行してゆくのかを解明しようと試みた.
    (方法) 30歳から5歳きざみに79歳までの特に難聴・耳鳴等の積極的な訴えがなく, 耳疾患および音響外傷等の既往のない健康な男女各10名ずつ計200名に対して下記の各種聴覚検査を行った.
    (1) 気導および骨導純音最小可聴域値検査, (2) 補充現象検査, (3) TTS現象検査, (4) 通常の語音検査, (5) 周波数歪語音検査, (6) 時間歪語音検査, (7) 両耳合成能検査, (8) 方向感検査.
    (結果) 1) 純音聴力域値検査では気導と骨導との間には殆んど差は認められなかった. 中音域平均聴力損失値は全症例において30dB以内にあったが, 高音域平均聴力損失値は加齢と共にその値の大きな例が増加した.
    2) 補充現象検査では陽性例は男女ともに50歳代まではあまり多く存在せず, 60歳代, 70歳代になってから増加した. この結果から, 内耳コルチ氏器における加齢変化は高年齢になってから起るものと考えられる. また補充現象陽性例の出現率の男女差については, 男性の方が陽性例の出現率が高かった.
    3) TTS現象検査では陽性例は全症例中1例も存在しなかった.
    4) 通常の語音検査では最高明瞭度値の低下する異常例は男女ともに60歳代までは少なかったが, 70歳代になると急激に増加した. しかし, 最高明瞭度値の低下の程度は極めて軽度であった.
    5) 周波数歪語音検査および時間歪語音検査では最高明瞭度値の低下する異常例は40歳代前半から50歳代前半にかけて増加し半数に達し, 更に加齢と共に増加した. この結果から中枢神経聴覚路における加齢変化は年齢的にかなり早期から起るものと考える.
    6) 両耳合成能検査では最高明瞭度値の低下する異常例は男性では40歳代後半, 女性では50歳代前半より増加した.
    7) 方向感検査では異常例はわずかに高年齢者の2例にのみ認められた.
    以上述べた2) および5) より, 生理的な聴覚の老化の過程においては, 中枢神経聴覚路における変化の方が内耳コルチ氏器における変化よりも早期に起るものと考える.
  • 加藤 祐峰
    1972 年 75 巻 2 号 p. 191-216
    発行日: 1972/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    (目的): 従来, テレメータによる眼振の生理の研究は, 眼振のみの観察であった. 眼振は頭部に対する眼の動きであり, 眼振は空間における頭部の動きと同時に観察すべきであるとの見地から, 眼と頭の動きを同時に送信し得るテレメータを開発し, 随意運動時の眼と頭の動きを記録し, 随意運動時の眼振の発現様式を観察し, 随意運動時に前庭眼反射, 視性眼反射の演ずる役割を解明することを目的とした.
    (研究方法): 眼の動きと頭部の3軸に対する動きを送信し得る4現象テレメータを使い, 随意運動 (ヒトの普通の回転, バレエの回転, アイス・スケートのスビン) 時における眼と頭の動きを記録し, 分析検討した.
    (結果):
    1. ヒトのなにげない回転及び180度方向転換では多数の眼振が現われた. 号令下の “回れ右” の180度方向転換では1個の眼振が現われた. これらの眼振は迷路性, 視運動性の眼振であり, 急速相に始まり, 眼振様運動と呼ぶべき型であった. 何れも意志によって回転運動が眼の急速相からの動きから始まり, 回転中は迷路性, 視運動性におこる反射 (眼振) が動きを円滑にすすめる. 意志運動は反射運動により支持され回転運動は円滑に行なわれていた.
    2. トゥウル・シェエネで1回転1打の眼振が現われ, これはspottingといわれる技巧により意識的におこされた. ヒトの普通の回転中現われる多数の不規則な眼振はこのspottingにより抑制された. すなわち, 意志は反射をコントロールする.
    3. ピルエットの観察より, バレエの1回転1打の眼振はspottingと, この意志運動によりおこった前庭眼反射, 視性眼反射の合致した運動であることを認めた. すなわち, バレエにおける眼運動は意志と反射の合致した動きであった.
    4. 跳び上り空中で回転するという複雑なバレエの回転では, 回転中の前庭眼反射, 視性眼反射を意志的に統禦することが困難であった.
    5. バレエの回転において, 反射を意志でコントロールする能力は訓練により獲得された.
    6. バレエの回転における回転後眼振の抑制は視線の固定の影響が大であった.
    7. アイス・スケートのスピンにおける極めて規則正しい眼振は, 氷上の非常に速い回転であるのでretinal nystagmusが中心となり, それに迷路性の要素が加わったものと考えられた. この規則正しい眼振の発来及び頭部の身体正面への固定は, バレエの回転における眼運動, 頭部運動とは異ったものであった.
    8. アイス・スケートのスピンにおける規則正しい眼振の発来及び頭部の固定は訓練によって次第に獲得されるものであった.
  • 仁保 正和
    1972 年 75 巻 2 号 p. 217-223
    発行日: 1972/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    慢性硬膜下血腫は最もsilentなIntracranial Space-occupying Lesionの一つであり, 又現在なおその全貌が明らかにされていない興味ある疾患である. その原因としてPachymeningitis haemorrhagica internaによるとする説, 頭部外傷によるとする説の二説があるが現在頭部外傷説が有力である. 即ち一般の慢性硬膜下血腫はBagatell trauma後1~2ケ月して頭蓋内圧亢進症状が現われ, 大多数は傍矢状部に沿った硬膜下腔に被膜に包まれた大きな血腫が発見される.
    しかし同じ硬膜下血腫であっても臨床上無症状に経過し剖検時等に全く偶然に発見されたり, 又頭蓋内圧亢進症状が現われ, レ線的に硬膜下血腫が証明されても自覚的には手術の必要性を認めない程症状が軽いため経過を観察する内に, 頭蓋内圧亢進症状は軽快しレ線的にも硬膜下血腫の消退が証明され, その後も再発を見ないという自然治癒を営む場合も稀にはある.
    私は22才, 男子の重篤な慢性側頭骨炎症例に側頭骨炎根治手術を施行した際, 全く偶然に中頭蓋窩底に硬膜下血腫を発見した. 症例は10年余の側頭骨炎の経過をもち, 耳漏, 肩凝り, 頭重感を主訴として来院したもので, 乳突部外壁骨は緻密骨であったが, それより内方の乳突部各蜂巣は慢性骨髄炎であり, 術中の出血は非常に多量であった. 上鼓室, 乳突洞入口部, 錐体前上蜂巣列に仮性真珠腫を認めた. 乳突部及び鱗部の各蜂巣を全て削除し鼓室を清掃し, 発育の悪い錐体尖蜂巣に対しては最大開口させ外耳道前壁骨を除去した後Kopetzky-Almour法を施行した. 更に仁保―平野法により錐体尖蜂巣を掻爬すべく乳突部天蓋骨を削除すると暗赤青色, 浮腫状の脳硬膜が現われた. 硬膜下血腫の存在が疑われたので更に頬骨部の脳硬膜を露出すると同様の所見を示した. 輸血針を用い両者より穿刺を行うと硬膜下腔より各3ccの暗赤色でさらさらした血性液が吸引され, 更に穿刺孔より同様の液が噴出を続けた. 中頭蓋窩の慢性硬膜下血腫が証明されたものであり, 10日後該部脳硬膜は淡紅色を示し, 再度穿刺を試み血腫内容液及び血腫腔の消失を証明した. 即ち臨床的には治癒したものとみなされた.
    この慢性硬膜下血腫は広義の自然治癒に属するものであり, その原因は手術の3年前1年間の合気道練習中の頭部打撲であり, これにより中頭蓋窩に発生した小硬膜下血腫が中村のいう血腫被包期から膨張期を経ることなく, 従って脳圧亢進症状を現わすこともなく, 直接終末期に至ったものであると推察された. 本症例も当院を受診することなく, 又側頭骨炎根治手術が施行されなかったならば恐らく死亡時まで慢性硬膜下血腫はこのまま存在したものであろう.
  • 横山 俊彦, 星野 健一
    1972 年 75 巻 2 号 p. 224-240
    発行日: 1972/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    研究目的: 振動, 騒音環境下におけるspeech communicationが騒音以外に振動によっても影響を受けるかどうか, 受けるとすれば如何なる影響を蒙るかを, 発声者の立場に立って, 振動曝露下における発声者の語音, 所謂vibrated speechについて種々の方面より多角的に観察, 分析することを企図した.
    本研究はその一環として振動の音声言語に対する影響について聴覚的観点より検索した結果をSona-Graphによる客観的方法によって, 裏づけられるかどうかを検討したものである.
    研究方法: 発語明瞭な発声者の発する語音 (無意味―音節語100語) の中から聴力正常の受聴者10名中8名以上の者が各実験条件下において共通してある語音に聞き違えた語音を主として抽出し, これらのspeech samplesについてsonagramを用いてpattern, contour displayおよびamplitude displayの観察方式によって分析すると共に, これらの語音の調音運動についての言語学的解説を加えて検討した.
    研究結果:
    1) 10cps振動によるvibrated speechの「RI」および「BU」は子音部の音声波が消失し, 後続母音のホルマント構造しか認められず. 「RI」が「I」, 「BU」が「U」に誤聴されることが分った.
    2) 5cps vibrated speechの「DE」, 20cps vibrated speechの「KU」, 「GYA」, 「PA」, 「SYO」がそれぞれの誤聴語音に対応した調音構造に置換または類似した構造に変化していることが分った. 従ってこれらの発語語音は騒音同時聴取によって形態的に近似構造をもつこれらの誤聴語音に聞き違える可能性が充分あることが理解された.
    3) 振動加速度強度と語音の音響学的構造との関連性を「TSU」語音について調べたところ, 加速度強度の減弱に対応して「TSU」語音の音響学的構造は次第に非振動下発声語音, non-vibrated speechの構造に近似することが認められた.
    4) vibrated speechおよびその特異的な誤聴傾向は外部振動の胸腹部励振による呼気圧, 呼気流の不随意的変化に基づき, 音声器官に種々の物理的影響, 例えば調音点のずれ, 調音運動の強制的抑制などの生じた結果が主因をなすものと推論した.
  • 佐々木 好久
    1972 年 75 巻 2 号 p. 241-247
    発行日: 1972/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    扁桃炎は疼痛, 発熱等の局所および全身症状ばかりでなく, 腎炎, リユマチ等の病巣感染症を起こすことがある. この基礎に働らく免疫学的研究は多いが, 生化学的解明も重要である.
    カテプシソは自己融解酵素と考えられて来たが, その生体内での活性も研究されるようになり, その意義も漸次解明されようとしている.
    この研究では扁桃中にカテプシンの強い活性が存在することと, その性格について研究した. まづカゼインを基質としてこれを分解する酵素の存在を確認した. そこでヘモグロビンを基質として酵素活性を測定するとpH2から4の間特に3.5に強い分解作用がみられた. 更に尿素変性ヘモグロビンで中性及びアルカリでの酵素作用を検討するとpH3から8に亘ってかなり広い酵素作用の存在することが分った. Cysteinによってヘモグロビン分解は促進された.
    つぎにアルブミンを基質として分析した. これに対する至適pHは2.5と3.5の所に認められた. そしてCysteinは活性を亢進した. t-AMCHAはプラスミンの特異的抑制物質と考えられていたが, pH3.5の所でアルブミンの分解を抑制した.
    カテプシンは至適pH, 酵素活性に対するCysteinの態度, 基質特異性などから, A, B, C, D, Eに分類されている. ペプシン様作用をもつA, トリプシン様のB, キモトリブシン様のC等である. これらの分類からみると扁桃中のカテブシンはDを中心としたものと考えられる.
  • 仁保 正和, 古屋 正徳, 小倉 脩二, 木村 繁, 小林 康夫, 益子 三郎
    1972 年 75 巻 2 号 p. 248-253
    発行日: 1972/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    ガマ腫は口腔底に存在する唾液腺, 粘液腺, 胎生期遺残組織などから発生する. 我々は1例は舌下腺から, 1例は胎生期遺残組織である甲状舌管から発生した稀有の, いずれも巨大なガマ腫の2例を経験したのでここに報告する.
    第1例は臨床上最も発生頻度の高い舌下腺うつ滞性嚢胞であるが, 発生時2年間に安易に10数回に及ぶ穿刺あるいは切開を受けた為, 6年後再発時には頤下部全体に腫脹する巨大なガマ腫となつたものである. 嚢腫下面は下顎体から舌骨体に及び, 口腔底右側を舌下部に侵入し上面前部は瘢痕性の舌下腺と強く癒着し, 後部は舌体に深く侵入していた. 嚢腫壁は暗青色, 脆弱で周囲組織との癒着は非常に強く, 嚢腫内容は淡黄青色粘稠な液のみからなっていた. 組織学的に嚢腫壁は陳旧性の肉芽組織から形成され, 内腔の上皮組織は全て剥離消失しており, 壁の外側の一部に唾液腺組織と, 拡張した内腔に分泌液の貯溜の認められる腺管の存在が証明された. 従って手術及び組織学的所見から舌下腺うつ滞性嚢胞であることが証明された.
    第2例はThyroglossal duct cystである. 出生時既に口腔底嚢腫の存在に気付かれ3回の切開を受けたが腫脹をくり返し, 2才11ケ月の時横浜仁保耳鼻咽喉科を受診し, 口腔底嚢腫別出術を受けた. 嚥下困難の為るい痩が著しく, 口腔内は二重舌を示し舌運動障害が認められた. 嚢腫は口腔底全体を占めその後端は舌骨体と強く癒着している巨大なもので, 嚢腫壁は白く硬く周囲組織との癒着は舌骨部を除いて少なかった. 組織学的に嚢腫内壁は扁平上皮及び繊毛上皮が, 外壁は横紋筋及び結合織で構成されている, 即ちThyroglossal duct cystであることが証明された. 本症例は嚢腫後端が舌骨体と強く癒着していたので, 甲状舌管の側枝, Bochdalek腺鞘は舌骨体を貫通し口腔底に伸びた枝であるとも考えられる症例である.
  • 1972 年 75 巻 2 号 p. 254-271
    発行日: 1972/02/20
    公開日: 2010/12/22
    ジャーナル フリー
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