日本耳鼻咽喉科学会会報
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110 巻, 12 号
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原著
  • ―自験例5例の診断と治療―
    冨田 俊樹, 小澤 宏之, 田川 崇正, 坂本 耕二, 小川 郁
    2007 年 110 巻 12 号 p. 743-751
    発行日: 2007/12/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    慶應義塾大学病院において過去8年間に5例の頸動脈小体腫瘍を経験した. 3例は手術を行ったが2例は手術の危険度が高いと判断し経過観察中である. 初診時に本疾患が疑われたのは1例のみであったことから臨床所見のみで頸動脈小体腫瘍を疑うことは困難であると思われた. 診断確定のためには画像検査が重要であり, MRIに加え超音波カラードプラー断層法とMR血管造影は有用であった. 手術適応を選択する判断材料として血管造影やballoon Matas testが重要であった. 手術例はすべてShamblin分類のgroup IIに相当し内頸動脈を温存したが1例は術後に遅発性の脳梗塞を生じた. 他の2例は顕微鏡下に腫瘍被膜と外膜の間をバイポーラで切離し腫瘍を摘出したところ, 病理組織学的には切除断端に腫瘍細胞を認めなかった. Shamblin分類のgroup I, IIの頸動脈小体腫瘍摘出術に際しては, 頸動脈温存と根治切除を両立させるために顕微鏡下のバイポーラ切離が重要であると思われた. 治療方針の決定に際しては手術の危険性と経過観察の問題点を比較し十分なインフォームドコンセントを行うべきである. また年齢, 既存症, Shamblin分類, balloon Matas testの結果などを参考にして個別に手術適応の有無を検討すべきである. 頸動脈小体腫瘍に対しては放射線科, 脳神経外科, 血管外科との連携が重要で集学的アプローチにより診断と治療にあたるべきである.
  • 青木 光広, 安藤 健一, 山田 南星, 村井 道典, 青木 謙太, 水田 啓介, 伊藤 八次
    2007 年 110 巻 12 号 p. 752-757
    発行日: 2007/12/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    耳硬化症の多くは, 病変が前庭窓周囲に限局し, 伝音難聴を呈する. 一方, まれではあるが, 蝸牛に海綿状変化が及んだ蝸牛耳硬化症の場合は, 感音成分の低下も伴い, 感音難聴を呈する. 今回, われわれは画像上, 蝸牛耳硬化症を伴った両側高度感音難聴3症例に人工内耳埋め込み術を行った. 3症例ともに, 人工内耳インプラントは全電極挿入可能で, 術後1年の聴取能は2例においては良好であった. しかし, 1症例では, 術後2カ月で顔面神経刺激の副作用が出現し, 使用可能電極が徐々に減少した. 最終的には人工内耳による聴力獲得はできなくなった. 経過良好な2例に比べて, CT densitometryでの蝸牛周囲のCT値の低下, すなわち蝸牛骨包の脱灰の程度が著明であったことや, プロモントリーテストでの反応不良が人工内耳不装用の要因であったと推察した. 蝸牛耳硬化症で高度感音難聴に至った症例への人工内耳手術は有効であるが, 蝸牛骨包の脱灰が強い症例に対する人工内耳手術を行う際は, その副作用についての十分な配慮が必要である.
  • 益田 宗幸, 若崎 高裕, 玉江 昭裕, 小宗 徳孝, 原 崇, 内山 明彦
    2007 年 110 巻 12 号 p. 758-761
    発行日: 2007/12/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    食道癌取り扱い規約による, 106以下の縦隔リンパ節に転移を来した分化型甲状腺癌の2症例に対し, 各々胸骨・鎖骨切除による上方・前方からのアプローチと, 胸腔鏡下のVATS (video assisted thoracoscopic surgery) を用いて縦隔郭清を行った. 胸骨柄と胸骨の右半分 (第二肋間の高さまで) ・右鎖骨内側半分を合併切除した症例1では, 右鎖骨下静脈周囲のリンパ節, 105R, 106pre, 106recRまでを明視下に郭清したが, 前方からのアプローチによる106tbR郭清の困難さを再認識させられた. これに対し, 107の高さまで縦隔リンパ腫脹を認めた症例2に対しては, 頸部およびVATSによるコンバインドアプローチで腫瘍摘出を行った. VATSにより, 106tbR, 107領域の郭清が良好な視野で行えた. en blocな郭清が困難, 開胸・術中の体位変換・挿管チューブの交換が必要などの欠点もあるが, 106tb以下のリンパ節に転移を来した分化型甲状腺癌症例に対する, VATSの有用性が確認された.
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