耳硬化症の多くは, 病変が前庭窓周囲に限局し, 伝音難聴を呈する. 一方, まれではあるが, 蝸牛に海綿状変化が及んだ蝸牛耳硬化症の場合は, 感音成分の低下も伴い, 感音難聴を呈する. 今回, われわれは画像上, 蝸牛耳硬化症を伴った両側高度感音難聴3症例に人工内耳埋め込み術を行った. 3症例ともに, 人工内耳インプラントは全電極挿入可能で, 術後1年の聴取能は2例においては良好であった. しかし, 1症例では, 術後2カ月で顔面神経刺激の副作用が出現し, 使用可能電極が徐々に減少した. 最終的には人工内耳による聴力獲得はできなくなった. 経過良好な2例に比べて, CT densitometryでの蝸牛周囲のCT値の低下, すなわち蝸牛骨包の脱灰の程度が著明であったことや, プロモントリーテストでの反応不良が人工内耳不装用の要因であったと推察した. 蝸牛耳硬化症で高度感音難聴に至った症例への人工内耳手術は有効であるが, 蝸牛骨包の脱灰が強い症例に対する人工内耳手術を行う際は, その副作用についての十分な配慮が必要である.
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