日本耳鼻咽喉科学会会報
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111 巻, 9 号
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原著
  • 吉田 友英, 山本 昌彦, 野村 俊之, 大和田 聡子, 高澤 玲緒, 池宮城 慶寛, 重田 芙由子
    2008 年 111 巻 9 号 p. 617-622
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/12/16
    ジャーナル フリー
    動的体平衡機能を評価するために開発した検査法であるBody Tracking Test (以下BTTと略す) は, 視標の移動刺激にあわせて重心を移動させて, その追随機能を評価して動的体平衡機能を見るための検査システムである. めまい疾患についての動的体平衡機能を知るために, 前庭神経炎患者にBTTを施行し検討を行ったので報告する.
    対象は, 東邦大学医療センター佐倉病院耳鼻咽喉科において前庭神経炎と診断され, 入院治療を行った患者である. 左右方向定速刺激BTT施行が31名, 前後方向定速刺激BTT施行が45名である. 注視眼振を認めるが, 立位姿勢にて検査が可能な時期に重心動揺検査と左右・前後方向定速刺激BTTを施行した.
    左右方向定速刺激BTTでは, 左右方向動揺速度の平均 (cm/秒) を比較したが, 明らかな左右差は認められなかった. 前後方向定速刺激BTTでは, X方向動揺平均中心変位 (cm) を用いて検討した. 静的重心動揺検査では, 患側に偏倚が見られたが, 前後方向定速刺激BTTでは, 健側に偏倚が見られた. この現象は, 今までの体平衡の偏倚現象とは異なっており, 高位中枢の関与を示したものと考察した.
  • 中野 友明, 愛場 庸雅, 久保 武志, 楠木 誠, 和田 匡史, 比良野 彩子, 松下 直樹
    2008 年 111 巻 9 号 p. 623-627
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/12/16
    ジャーナル フリー
    tracheal cartilaginous sleeve (以下TCS) はまれな先天奇形で気管軟骨輪が癒合し硬い軟骨の筒状の気管のことである. 気管切開を要した頭蓋縫合早期癒合症の9症例中5症例にTCSを認めた. TCSを認めた5症例中2症例は2歳で死亡した. TCSを3D-CTで評価したが気管切開の際正常な気管軟骨輪を呈した気管と区別することは困難であった. TCS症例の気管切開の管理には適切な気管切開カニューレの選択, 厳重な気管切開ケア, 気管支鏡による頻回な観察および肉芽の切除が重要であると考えた.
  • 井上 博之, 古閑 紀雄, 石田 春彦, 船越 慶, 丹生 健一
    2008 年 111 巻 9 号 p. 628-631
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/12/16
    ジャーナル フリー
    Fisher症候群は, Guillain-Barre症候群の亜型であり, 急性発症する外眼筋麻痺・運動失調・腱反射消失を三主徴とする. 今回われわれは蝶形骨洞炎の先行感染が示唆されたFisher症候群の一例を経験した.
    症例は39歳男性. 鼻漏, 鼻閉を自覚後3日目より複視, 動揺感を来したため近医受診した. 頭部MRIにて蝶形骨洞炎を指摘され, 鼻性眼窩内合併症の疑いで, 同日当科受診となった. 来院時, 右蝶形骨洞自然孔より膿汁の流出があり, CTでも右蝶形骨洞に軟部陰影認めたが, 骨破壊や石灰化像を認められなかったことから, 悪性腫瘍や真菌症は否定的と考えた. 神経学所見では両側の外転障害が認められ, 右一側性の蝶形骨洞炎の眼窩内合併症とは考えにくく, さらに四肢腱反射低下, 運動失調を認めたことから, Fisher症候群を疑った. 髄液蛋白細胞解離, 血中抗GQ1b抗体を認め, Fisher症候群と診断した.
    Fisher症候群は, 先行感染により動眼, 滑車, 外転神経などに対する抗体 (抗GQ1b抗体) が産生され, 症状が発現すると考えられている. 本症例では蝶形骨洞炎が先行感染となり発症した可能性が考えられた. 鼻性眼窩内合併症と鑑別を要する疾患として念頭に置く必要があると考えられた.
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