膠原病に伴う肺病変は多彩であり, 間質性肺炎の他に気道病変や胸膜炎, 肺高血圧症などを呈することがある. 間質性肺炎は, 膠原病の予後にかかわる重要な臓器病変である. 病理学的には非特異性間質性肺炎パターンが多く, 特発性肺線維症と比較すると予後は一般に良好である. また, シェーグレン症候群ではリンパ増殖性疾患も併発することがある. 治療に関して, ランダム化比較試験が行われているのは強皮症のみである. 一般にステロイドと免疫抑制剤が使用されるが, 強皮症ではその効果は限られる. 近年特発性肺線維症に用いられる抗線維化薬の効果が強皮症を中心に検討されてきている. また, 治療不応例では肺移植も考慮される. 日常臨床では膠原病の特徴を有しつつも膠原病の診断基準を満たさない間質性肺炎が少なくないため, 現在そのような疾患をどう分類するかについて議論がなされている. それらは現在のガイドラインでは特発性間質性肺炎に含められるが, Interstitial Pneumonia with Autoimmune Features(IPAF) という概念が提唱され, その特徴が検討されている. 膠原病性間質性肺炎の治療に関するデータは十分ではなく, 今後の検討を要する.
鼻骨骨折は日常診療でよく遭遇する疾患であり, その非観血的整復術は視診触診で行われることが多い. 整復が良好になされたかどうかの評価は術者の主観によるため, その判断に迷うことがある. そのために, 以前から視診触診に加えて超音波エコー下に鼻骨をリアルタイムに描出して整復を行う方法の有用性が多数報告されている. また近年, 音響カップリング素材を用いた方法も報告もされているが, まだ報告も少なく, その有用性を検討した報告もみられない. よってわれわれは, 超音波エコー下鼻骨骨折整復術における音響カプラーゲルパッドの有用性について検討した. 2016年6月から2016年11月までの期間に市立吹田市民病院を受診し, CT 検査にて鼻骨骨折と診断され鼻骨骨折整復術を施行された10症例を対象とした. 検討の結果, ゲルパッドを使用した方がよりアーチファクトが少なく容易に骨折部位の認識が可能になること, 鼻背部の皮膚のラインの描出と評価が可能になること, 微細な骨折の描出が可能になることが分かった. 超音波エコー下鼻骨骨折整復術における音響カプラーゲルパッドの併用は鼻骨の描出に非常に有用であった.
スギ花粉症に対する舌下免疫療法が臨床応用され2シーズンが経過した. しかし, 治療の実態には不明な点が多い. 今回, 舌下免疫療法開始1シーズン終了群140例と2シーズン終了群132例に質問票を用いて服薬状況, 自覚的治療効果, 副反応, 治療満足度, 治療に伴う負担などについて検討を行った. その結果, 服薬状況は両群で90%以上の患者が毎日服薬しており, 有効性を自覚していることが示唆された. また, 副反応は1シーズン終了群では21.4%に認められたが, 2シーズン終了群では2.2%と減少し, 多くが口腔内病変であった. 副反応のすべてが特に処置を必要としない軽微な反応であった. 90%以上で治療の継続を希望しており, 舌下免疫療法はスギ花粉症の治療法の有効な方法の一つであるが, 副反応への対応を念頭に置くことが肝要であると考えられた.
加齢性難聴の発生抑制に結びつく修飾可能な危険因子については未解明な点が多い. 地域住民を対象とした調査『国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究: National Institute for Longevity Sciences-Longitudinal Study of Aging(NILS-LSA)』で, ベースライン時点で難聴がなくベースライン以降に1回以上調査に参加し, 解析項目に欠損値のない男女1,374名に関して最長10年追跡し, 複数回参加を含む蓄積データから, 経過中の難聴発生に寄与する要因を一般化推定方程式により解析した. 合計24の独立変数の中から有意な因子として抽出されたのは7変数で, 難聴発生に対して教育年数は長いほどリスク減 (3年増加毎オッズ比 [OR]: 0.759, 95%信頼区間 [CI]=0.639-0.900), Body Mass Index は上昇するほどリスク増 (5kg/m2 上昇毎 OR: 1.287, 95%CI=1.029-1.610) に寄与しており, 先行報告と矛盾しない結果であった. 他に総身体活動量は増加するほどリスク増 (50METs∗min/1000/y 上昇毎 OR: 1.156, 95% CI=1.051-1.272) を示したが, 先行報告とは逆方向の結果であり, 背景について追加解析と考察を加えた.
歯ブラシによる口腔・咽頭外傷は小児に多く, 外力の加わる方向により深頸部や頭蓋内を損傷する可能性がある. 当院で入院加療を行った4症例を報告する. 症例1は咽頭後壁の受傷翌日に発熱と呼吸障害を来し, 深頸部・縦隔の気腫と周囲への感染を認め人工呼吸管理を要した. 3症例は口腔内の創傷が軽微だったが, CT で全例に気腫を認めた. 症例2は左副咽頭間隙を中心とした気腫, 症例3は咽後間隙上方に気腫と腫脹, 症例4は右顎下部から副咽頭間隙に気腫と腫脹を認めた. 全例が抗菌薬による保存的治療で治癒したが, 歯ブラシ外傷では局所所見が軽微な場合でも異物遺残や気腫, 深部感染の可能性に留意し, CT などの画像評価を行うべきである.