日本耳鼻咽喉科学会会報
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73 巻, 3 号
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  • 今野 昭義, 北村 武, 神田 敬, 石川 哮, 内藤 準哉
    1970 年 73 巻 3 号 p. 279-287
    発行日: 1970年
    公開日: 2008/07/31
    ジャーナル フリー
    2例の Hand-Schüller-Christian 病を報告し, その臨床像を述べた. 又耳鼻咽喉科領域でよりしばしばみられる顔面 (耳下腺周囲) 軟部好酸球肉芽腫症との関連について考察した.
  • 相沢 宏
    1970 年 73 巻 3 号 p. 288-296
    発行日: 1970年
    公開日: 2007/06/29
    ジャーナル フリー
    1950年 Lee により観察, 発表された遅延側音効果は, 其後多くの研究者によつて, 詐病看破法, 他覚的聴力検査法, 聴機構解明上の一手段として研究され, 多くの報告がなされている.
    本実験では, まだ行なわれていない日本語について, 遅延側音効果を決定する諸因子の影響を観察し, 聴覚機構解明上の何らかの手掛りを得ることを目的とした. その為, 打鍵, 器楽演奏 (バイオリン, 電気ピアノ) 等による, 遅延側音効果に関しても実験を試みた.
    遅延時間は磁気録音器の, 録音及び再生ヘツド間の間隔を利用し, テープ速度を変えて作つた.
    その結果は次の如くである.
    1) 1から50迄の暗誦による各遅延時間ごとの全平均値をとつて見ると, 最大時間延長率は遅延時間0.15秒の点に見られる. 又各暗誦の速さについて見ると, 最大時間延長率を示す遅延時間は, 暗誦の速さが速くなるにつれて, 短い方に移行する. 但し暗誦の時間が45秒と長い場合は, 時間延長率は非常に小さく, 遅延時間0.48秒ではいずれの暗誦時間に於ても時間延長率は小さい.
    尚正常会話速に近い早さと思われる暗誦時間20秒の場合は, 遅延時間0.24秒で最大遅延効果を示す.
    2) 暗誦と朗読では暗誦の方が遅延効果が大きく, 暗誦の中でも記憶への依存度の大きいと思われるものほど時間延長率が大きい.
    3) 側音音圧の増大により, 時間延長率が増大する. しかし個人差が大きい.
    4) 側音音圧の増大により発声強度が増大する.
    5) 遅延側音の周波数帯域が広くなると, 時間延長率が大となり, 狭くなると時間延長率が小さくなる, 特に会話音域の周波数帯域の存否がこれを大きく左右する.
    6) 鍵打時, 1000の正絃波を側音として被検者に与えた場合, 語音に於ける場合と同様, 遅延効果が認められる. 鍵を打つ間隔の長い場合は, 最大時間延長率を示す遅延時間は, 0.48秒に於ても見られた.
    7) 器楽による場合. 楽器ほバイオリン及び電気ピアノを使用した.演奏の速さは, 平均一音符の長さで表した. 平均一音符の長さは, 同時に奏された音はまとめて一つの音符として数え, 演奏時間を, その中に含まれた音符の数で除したものである.
    器楽演奏に於ても, 平均一音符の長さにより, 最大時間延長率を示す遅延時間は異る. 即ち, 平均一音符の長さが短い場合は, 最大時間延長率を示す遅延時間は短く, 平均一音符の長さの長い場合は, 遅延時間0.48秒に於ても最大時間延長率を示す.
    8) 器楽演奏に於ても, 遅延側音音圧の増大により, 時間延長率は増大する.
    以上のことから, 遅延側音効果の大小には, 遅延時間と側音音圧を含めての, 側音の品質が大きな要素となつていることがわかつた. この要素の存在は, 遅延側音がただ単なる妨害音として作用した為, この効果が起るのではなくて, 聴覚機構の故障の為と考えることが妥当であることを教えてくれる. 又これらのいずれもが, 詐病看破法としで使用し得ること, 及び鍵打の場合は, 側音に各種の純音を用い, 遅延時間と打鍵のリズムとを適当に決める事によつて, 他覚的聴覚検査への応用の可能性の存在を確認した.
  • 島田 一郎
    1970 年 73 巻 3 号 p. 297-310
    発行日: 1970年
    公開日: 2007/06/29
    ジャーナル フリー
    1. 目的
    加算平均法によるアナログ型コンピュータを用いてヒトの頭皮上から非手術的に得られる聴覚性大脳誘発反応を得て, 他覚的聴力検査に用いるべくその回復過程を精査し, 併せてこの反応の生理学的機構を明らかにするためこの実験をした.
    2. 実験法
    被検者は18才から30才までの正常聴力を有する成人を対象とし, 音響刺激は中心周波数が2400Hz, 70dB SLの強さの1対からなり, この刺激時間間隔が夫々10msecから10秒まで自由に変化させ得るようになつており, 被検者にイアクション付きレシーバで与えられる. この1対の音刺激は第1音を対照用とし第2音を実験用とし, 30回から50回まで加算し, その波形のN1-P2成分を比較検討した. 一方単耳に1対の音刺激を与えるのみではなく, 1対の音刺激のうち第1音を右耳に与え, 第2音を左耳に与えて両者の反応の差をも測定した.
    3. 実験成績
    刺激時間間隔が10msecから100msecでは単耳刺激, 両耳交互刺激いずれも誘発反合は1つの合成反応としてみられ刺激時間間隔が50msec以下では2音による合成反応は1音のみの反応より大き??攀??椀?? 刺激時間間隔が単耳の場合は200msec以上, 両耳交互刺激の場合は150msec以上になると第2音による反応が独立して得られ刺激時間間隔が約1秒程度までは後者の場合の方は第2反応の回復が速やかに行われた. 両耳交互刺激にせよ単耳刺激にせよほゞ完全に回復が行われるのには約6秒前後であるが, 統計的にみて完全に第2反応が回復するには8秒から10秒を要した. この場合, 個人差が可成りみられ回復の早いものは4秒程で完全回復が行われることもあり, 又ある被検者は10秒を要する場合もあつた, 然し我々臨床診断上使用する場合の刺激時間間隔は10秒で充分であると思われる.
    4. 抄録
    20才から30才までの正常聴力成人に中心周波数2400Hz, 70dB SLの強さの1対の音刺激を与えて30回から50回コンピュータを用いて聴覚性大脳誘発反応を加算し回復過程の実験を検討したが, 完全回復は Davis 等の述べるごとく10秒前後であり, 加算回数も40回程で充分と思われた. 又1対の音刺激を単耳と両耳交互に音刺激を与えた場合の第2反応の回復過程が異ると云う事実は聴覚路が末梢では非交叉しているものの, 中枢ではどの程度に交叉しているかが問題となるうるであろうが, 今後の研究を待たねば判定は出来ないと思われる.
  • 井端 幸子
    1970 年 73 巻 3 号 p. 311-334
    発行日: 1970年
    公開日: 2007/06/29
    ジャーナル フリー
    1. 目的
    A.E.R. audiometry を臨床的に乳幼児について施行する際, 出来るだけ短時間に検査を終了することが望ましい. このために, まず本検査法を短時間にしかも最も効果的に施行するための基礎的な諸条件を正常児において気導および骨導刺激を用いた場合の各々について検討した. 次いで本検査法を臨床的に各種難聴児群に対して応用し, 本法が単に域値の測定に用いられるのみならず, 難聴の性質の鑑別診断に応用されうるか否かを検討した.
    2. 実験法
    実験の block diagram は図の如くである. なお脳波は前頭部および乳突部に銀製皿電極を絆創膏固定し導出した. 又脳波計増巾器の時定数は0.1secとした. 本実験に用いた電子計算機はC.A.T. 400BMnemotron U.S.A. である. 聴覚刺激としては立ち上り下り時間: 10msec, 持続時間: 50, 100, 250msec の梯形音を1秒1回の割合で用いた.
    原則としては自然睡眠時に検査を行つたが, 場合によつては抱水クロラール誘導体 monosodium trichlorethyl phosphate を睡眠誘発剤として用いた.
    3. 実験結果
    (1) 使用する音刺激の持続時間は, 立ち上り下り時間: 10msec, 刺激頻度: 1/secとした場合, 100msec が最も良い.
    (2) 音刺激を上昇法で与えても又下降法で与えても域値差は観察されなかつた. habituation を考慮すれば10~20dB step の上昇法で行うことが望ましい
    (3) 域値上40dB以上と推定される場合には加算回数は100~200, 域値近辺であれば200~300が妥当である.
    (4) 骨導刺激による A.E.R. Audiometry では主として振動が問題となる. 我々の実験では骨導刺激を用いた場合にも背景脳波の歪みは観察されなかつた. 又, 気導, 骨導刺激ともその誘発電位は非検耳のマスキングの影響を受けなかつた.
    (5) 年令が大きくなるに従い本検査法による反応域値は次第に下降し2才以上ではほゞ一定の値を示した. 即ち会話音域においてはその値は30dBであつた.
  • 特にグリコーゲン代謝を中心として
    小川 清
    1970 年 73 巻 3 号 p. 335-352
    発行日: 1970年
    公開日: 2007/06/29
    ジャーナル フリー
    1. 目的: 騒音性難聴発症の様態を糖質代謝病態, 特に内耳グリコーゲン顆粒の消長という観点より組織化学的および電顕組織化学的に解明するために本実験をおこなつた.
    2. 実験法: 使用したモルモツトは, 3群 ((1) 対照群, (2) 4000Hz, 110dB, 1日12時間, 20日連続音響刺戟群, (3) 4000Hz, 110dB 1日12時間, 40日連続音響刺戟群) に分けた.
    光顕標本作成に際しては, 各群共ベスト氏カルミン染色および periodic acid methenamine 銀染色をまた電顕標本作成に際しては, Watson の方法による水酸化鉛染色および periodic acid methenamine 銀染色を施した. 更に光顕ならびに電顕標本のグリコーゲン顆粒をジアスターゼにより消化し, 該顆粒がグリコーゲン顆粒であることを確認した上で次の結果を得た.
    3. 結果:
    1) 対照群
    (a) 外有毛細胞内グリローゲン顆粒は, 細胞質頭部に多く認められ, しかも上方回転程その分布量は多い
    (b) 内有毛細胞では, 外有毛細胞に比較してグリコーゲン顆粒の分布量は, 極めて少ないが, 下方回転程多く分布し, 上方回転程少ない
    (c) ラセン神経節細胞内にもグリコーゲン顆粒を認めたが, 上方回転程その分布量は多い.
    (d) その他各回転の諸細胞にも, 極めて少量ではあるがグリコーゲン顆粒を認めた.
    2) 音響刺戟群
    (a) 第1回転および第2回転の外有毛細胞では, 対照群に比較してグリコーゲン顆粒は減少したが, 40日音響刺戟群において顕著であつた.
    (b) 第1回転および第2回転の内有毛細胞, クラウジウス細胞, 内溝細胞および外溝細胞等の諸細胞, ならびに第3回転および第4回転の外有毛細胞をはじめとする諸細胞では, グジコーゲン顆粒の増加を認めた. 特に第3回転および第4回転の外有毛細胞では, 光顕的にグリコーゲン顆粒の大きさが大きく, しかも電顕的には, Rosette like glycogen が観察され, vesicle の増加等の所見からも該有毛細胞内での糖質代謝の亢進を推察させた.
    3) グリコーゲン顆粒の形態は, 50Å程度の tonofilament から成る. 直径約200~250Åの顆粒であり, 対照群諸細胞では, Monoparticulate glycogen のみが認められた. 一方40日音響刺戟群の外有毛細胞, 内有毛細胞, ヘンゼン細胞, ライスネル氏膜, クラウジウス細胞等においては, 各々単独に存在する Monoparticulate glycogen と, その集合体を成す Rosette like glycogen の双方が認められた.
    以上の結果およびそれらの病態生理学的意義について考按した.
  • 特にマイクロフォン電位の刺激受容伝達機構における役割について
    井上 靖二
    1970 年 73 巻 3 号 p. 353-378
    発行日: 1970年
    公開日: 2007/06/29
    ジャーナル フリー
    内耳は音という機械的振動又は圧変動を受け, それを神経インパルスに変換さすトランスデューサーの役割を演じている. この内耳の有毛細胞と末梢1次感覚ニューロンとの間の刺激受容伝達機構を解明するために本実験を行つた.
    正常およびろうモルモットを実験動物とした. それらの後半規管膨大部骨壁を開窓し, 同側外耳道より音刺激を負荷して後半規管膨大部より諸電位を記録観察して以下の結果を得た.
    (1) 後半規管膨大部内リンパ腔には蝸牛における Endocochlear Potential のような高い正電位は存在せず, 最小0mVから最大11mVの間の低い正電位が記録された. しかし蝸牛のコルチ内負電位に相当する-10mVから-30mVの不安定な負電位が膨大部稜で記録された.
    (2) 膨大部マイクロフォン電位が記録された. 反応周波数領域は 2kHz迄であり, その強度特性も低周波数に傾くにつれて閾値は下降し, かつ出力は増大した.
    (3) 膨大部マイクロフォン電位は膨大部稜有毛細胞層を狭んでその極性を逆転した. 膨大部内リンパ腔では記録部位, 刺激音圧の如何に拘わらずその極性は常に陰性を示した.
    (4) 膨大部々イクロフォン電位の Superposition Effect が観察された.
    (5) 後膨大部単一神経線維より自発放電および音刺激に反応して誘発される放電が記録された. これらの神経線維より0.25kHzから2kHz迄の音刺激に誘発される活動電位が記録された. 音刺激が低周波数に傾くにつれて誘発放電を得る閾値は下降した.
    (6) 音刺激が低周波数で, かつ一定音圧以上の時, 後膨大部神経線維の活動電位は膨大部マイクロフォン電位の各周波数に1対1に対応して反応した. 活動電位は膨大部マイクロフォン電位の興奮性位相に反応して誘発された.
    (7) マイクロフォン電位が内耳有毛細胞と末梢1次感覚ニューロンの間の刺激受容伝達機構の中で有意な役割を演じているといえる結果を得た.
    (8) マイクロフォン電位と Summating Potential の相互関係が有毛細胞の形態的極性から一元的に説明された.
  • 4例の報告
    今野 昭義, 北村 武, 戸川 清, 内藤 準哉, 塚本 嘉一
    1970 年 73 巻 3 号 p. 379-388
    発行日: 1970年
    公開日: 2008/07/31
    ジャーナル フリー
    異つた臨床的経過を示した4例の顔面神経原発の神経鞘腫を報告した. 本疾患は一般に考えられている程頻度の少ないものではなく, 時に特発性顔面神経麻痺との鑑別が必要である. 腫瘍摘出後, 神経移植, 又は縫合により麻痺は非常によく軽快する, 筋萎縮を起さない初期に診断, 手術をする事が必要である. 文献に報告された38例をもとに本疾患の臨床像を整理した.
  • 蝶形骨洞及び側咽頭腔原発腫瘍の2症例
    今野 昭義, 北村 武, 戸川 清, 宮下 久夫, 内藤 準哉
    1970 年 73 巻 3 号 p. 389-396
    発行日: 1970年
    公開日: 2008/07/31
    ジャーナル フリー
    蝶形骨洞原発の悪性神経鞘腫症例と側咽頭腔原発の悪性神経線維腫症例を報告する. 本症の臨床像は時に組織像と一致しないために腫瘍の手術的除去の範囲が問題となる. 神経原腫瘍の再発症例では手術的侵襲による悪性化も考えられ, 成長の早い多細胞性の腫瘍, 特に線維芽細胞の多い神経線維腫では被膜は非常に薄いために周囲組織と共に可及的広範に除去する必要がある.
  • sjögren 症候群及びその不全型について
    今野 昭義, 北村 武, 石川 哮, 神田 敬, 山口 宗彦, 飯田 義信, 内藤 準哉
    1970 年 73 巻 3 号 p. 397-408
    発行日: 1970年
    公開日: 2007/06/29
    ジャーナル フリー
    sjögren 症候群の診断は典型的な症例では容易であるが不全型が問題となる. 最近の7年間に当科で経験した症例の臨床像, 唾影像, 組織像, 免疫血清学的, 免疫組織学的所見を検討し, 診断基準を設定した. 15才以上で初発した反覆性耳下腺腫脹を伴う女性症例では sjögren 症候群の不全型を念頭におき検査するべきである.
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