日本耳鼻咽喉科学会会報
Online ISSN : 1883-0854
Print ISSN : 0030-6622
ISSN-L : 0030-6622
111 巻, 11 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
総説
  • —上気道炎症とワクチン療法—
    黒野 祐一, 田中 紀充, 福岩 達哉, 宮下 圭一, 早水 佳子
    2008 年 111 巻 11 号 p. 689-694
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/02/25
    ジャーナル フリー
    上気道は感染およびアレルギーの標的臓器であり, その発症頻度がきわめて高いことから, これらの疾患を予防するためのワクチン開発が望まれている.
    上気道感染症の主要な起炎菌である肺炎球菌に対するワクチンとして, すでに蛋白結合莢膜多糖体ワクチンが臨床で用いられ, 小児中耳炎に対する有効性が報告されている. ところが, その一方で, 他の異なる莢膜型を持つ肺炎球菌やインフルエンザ菌による中耳炎が増加しつつある. 従って, 中耳炎発症の予防には, すべての菌株に共通な抗原性を持つワクチンを開発する必要があり, 肺炎球菌細胞膜蛋白やインフルエンザ菌外膜蛋白がその有力な候補に挙げられている. われわれは, すべてのグラム陽性菌そして陰性菌の細胞膜に存在するホスホリルコリン (PC) に注目し, その免疫原性およびワクチンとしての有用性を検討している.
    ワクチンの投与経路には注射によって全身免疫を誘導する方法と経鼻あるいは舌下投与など粘膜免疫応答を誘導する方法がある. そこで, PCをコレラトキシン (CT) とともにマウスに経鼻投与したところ, 鼻腔洗浄液や唾液中にPC特異的IgA抗体活性の上昇が認められた. そして, この免疫応答は菌株の異なる種々の肺炎球菌やインフルエンザ菌とも交叉反応した. また, 同じ抗原をマウスに舌下投与したところ, 経鼻投与と同様の粘膜免疫応答が誘導され, IgE応答は経鼻免疫よりもむしろ低かった. 従って, 上気道感染症に対して舌下ワクチンは経鼻ワクチンに等しい予防効果を持ち, 安全性は経鼻ワクチンよりも高いと推測された.
原著
  • 北村 拓朗, 坂部 亜希子, 上田 成久, 塩盛 輝夫, 宇高 毅, 大淵 豊明, 鈴木 秀明
    2008 年 111 巻 11 号 p. 695-700
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/02/25
    ジャーナル フリー
    【目的】精度の高い閉塞型睡眠時無呼吸症候群 (OSAS) 一次スクリーニングの手法作成の一環として, 側方頭部X線規格写真 (セファロメトリー) および咽頭視診によるOSASの診断能について検討を行った.
    【方法】成人男性患者171名について, セファロメトリー, 咽頭視診 (Modified Mallampati grade; MMP, 口蓋扁桃肥大の程度) の評価を行い, AHIと相関の高い項目を検索した. この結果を基に 1) セファロメトリーの項目のみ, 2) 咽頭視診の項目のみ, 3) セファロメトリーと咽頭視診両方の項目, を用いた3条件でのAHIの予測式を算出した. これらの予測式のOSAS診断能について, receiver operating characteristic (ROC) 曲線を用いて比較検討を行った.
    【結果】AHIと相関の高い項目は, 舌骨低位の程度を表すMP-Hおよび軟口蓋, 口蓋垂の長さを示すPNS-P, MMP, 口蓋扁桃肥大であった. セファロメトリー単独, 咽頭視診単独, および双方を組み合わせた項目にBMIを加えたAHI予測式の診断能を比較した結果, 咽頭視診単独よりも, セファロメトリー単独での診断能が高く, さらに両者を組み合わせた場合, 診断能力が向上した.
    【結論】セファロメトリーと咽頭視診を組み合わせ, 上気道形態を3次元的に評価することでOSASの診断精度が向上した.
    顎顔面形態, 咽頭形態にOSASを疑う所見がある場合, 積極的に生活指導・教育を行う事はOSASの発症予防, 早期発見・早期治療という観点から重要であると考えられた.
  • 飯村 慈朗, 今野 渉, 小泉 さおり, 安村 佐都紀, 浅井 正嗣, 平林 秀樹, 春名 眞一
    2008 年 111 巻 11 号 p. 701-704
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/02/25
    ジャーナル フリー
    サルコイドーシスは, 病理組織学的検査所見から命名された原因不明の多臓器肉芽腫性疾患である. 今回われわれは診断に至るまでに3回の生検を要し, 最終的に喉頭サルコイドーシスと診断した症例を経験したため報告する.
    サルコイドーシスが喉頭病変のみの場合には検査所見は正常なことが多く, 病理組織学的所見で非乾酪性類上皮細胞肉芽腫の確認が重要となる. 1回目, 2回目の喉頭生検では非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が認められなかったが, 3回目の生検にて非乾酪性類上皮細胞肉芽腫と巨細胞を認めた. 全身検索を施行し最終的に喉頭サルコイドーシスと診断した.
    喉頭所見として黄白色のびまん性腫脹病変を認める場合, 喉頭サルコイドーシスの存在も念頭に置く必要があると考える.
専門講座
エラータ
feedback
Top