日本耳鼻咽喉科学会会報
Online ISSN : 1883-0854
Print ISSN : 0030-6622
ISSN-L : 0030-6622
75 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 八木 聡明, 菅原 道則, 神尾 友彦
    1972 年 75 巻 3 号 p. 275-283
    発行日: 1972/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    著者らは過去数年間に12例の迷路瘻孔症例を経験したので, その症状及び予後について, 又瘻孔部位による差違について症例をあげ検討し報告した. 要約すると以下の如くである.
    (1) 瘻孔部位は, 外側半規管7, 卵円窓5であり, 7例に真珠腫が認められた.
    (2) 12例中10例が眩暈を訴えているが, うち7例は外側半規管瘻孔症例 (全例) であった.
    (3) 聴力損失は, 気導では中等度乃至高度であった. 骨導低音域では, 外側半規管瘻孔症例では正常のものが多いのに反し, 卵円窓瘻孔症例では低下しているものが大部分であった.
    (4) 瘻孔症状は5例に認められ, 全例とも外側半規管瘻孔症例であった.
    (5) 自発眼振は4例に認められた.
    (6) 温度眼振は反応低下しているものが大部分であった.
    (7) 筋膜皮弁による瘻孔閉塞は, 全例において成功し, 術後, 眩暈及び瘻孔症状は全例消失した.
    (8) 術後聴力変化は, 外側半規管瘻孔症例では7例中, 改善3, 不変4であり, 卵円窓瘻孔症例では5例中, 改善1, 不変1, 悪化3であった.
  • 感作赤血球凝集反応と皮内反応について
    小林 康夫
    1972 年 75 巻 3 号 p. 284-303
    発行日: 1972/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    (目的) 緑膿菌性中耳炎の免疫学的な検討を試みた.
    (方法) 緑膿菌多糖体分画を抗原とせる感作赤血球凝集反応とホルマリン死菌ワクチンの皮内反応を免疫家兎および緑膿菌性中耳炎患者に行ない, それぞれ対照群と比較した.
    (結果)
    (1) 免疫前の家兎血清抗体価は40倍以下であった. 免疫2週後では640倍であり, 10週後に40倍以下に復した.
    (2) 免疫家兎の皮内反応は1時間後から出現し, 発赤は6時間前後に最大値を示し平均13.7mmであった. 正常家兎は12時間前後に最大値を示し平均7.0mmであった.
    (3) 緑膿菌性中耳炎患者の血清抗体価は40倍から2,560倍までであった. 慢性中耳炎の急性増悪期では高値を示した. 正常人の血清抗体価は40倍から640倍で, 1280倍以上のものはなかった.
    (4) 慢性中耳炎患者の皮内反応は急性増悪期の症例で早期に強く出現する傾向を認めた. 正常人では出現は遅く発赤も著明ではなかった.
  • 和田 昌士
    1972 年 75 巻 3 号 p. 304-321
    発行日: 1972/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    中枢障害の病巣局在診断において, 現在までのところ, 基礎的な一般神経学的検査による診断が主体を成し, 神経耳科学検査としての, 前庭平衡機能検査は, 補助診断法の一部分として成されてきている. しかし, 神経耳科学検査が, 実際診断において決めてとなることも少なくなく, 従って, 一般神経学的検査に加えて, 神経耳科学検査を合わせておこなうことにより, 一層精確な病巣局在診断が可能になるものと考える. しかしながら, 現在の時点では, 一般神経学的検査に加えて, 前庭平衡機能検査をおこなうことにより, かなりの精確さをもって病巣局在診断は可能であるが, 聴覚検査による病巣局在診断に関しては, いまだ, “決め手”となるべき研究は成されていない. そこで, 我々は, 本院耳鼻科, ならびに脳神経外科において診断が確定された症例に対して, 前庭平衡機能査および聴覚検査をおこない, 中枢性疾患に対する. 神経耳科学検査による診断的意義について検討をおこなった. なお, 今回は, 延髄障害例について報告した.
    (対象)
    手術・剖検によりその障害部位の確認されたもの, および神経耳科学的・一般神経学的諸検査により, 診断の確かめられたものの内で, 延髄障害を示した11例について検討した.
    (検査方法)
    (i) 一般神経学的諸検査
    (ii) 前庭・平衡機能検査 (自発性異常眼運動検査, 視運動眼反射の検査, 温度眼振検査他)
    (iii) 聴覚検査 (純音聴力検査, ベケシー自記オージオメトリー, 通常の語音検査, 周波数歪語音検査時間歪語音検査, 時間歪両耳合成能検査)
    (結果)
    前庭・平衡機能検査および一般神経学的諸検査により, かなりの精確さをもって, 延髄障害を診断することは可能である. 更に, これに加えて, 聴覚検査を組み合わせておこなうことにより, 周波数歪語音検査 (2400LP) にて異常を認めた場合, 延髄障害が疑われる.
  • optic-proprioceptive coordinationの発現とその機構に関する実験的観察
    岡田 修治
    1972 年 75 巻 3 号 p. 322-354
    発行日: 1972/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    視器と深部受容器 (頸筋) の平衡機能上の協応 (optic-proprioceptive coordination) を明かにするため次の実験を行なった.
    実験 (1): 両眼視の黒眼成熟ウサギ (体重2~2.5kg) を視性円筒内におき, 1.0°/sec2の割合で円筒を加速回転し, 円筒回転速度が180°/secに達するまでに発現する視運動性眼振と視運動刺激中止後の眼振 (視運動性後眼振第I相及び第II相) をENGで記録観察した. 次いで深層項筋に電気刺激 (10msec, 矩形波, 1V90″, 5V90″, 15V90″) を加えたのち, 上述の視運動性眼振及び後眼振を計測した. 2つの条件下の視運動性眼反射を比較し深層項筋電気刺激の影響を検討した.
    実験 (2): 黒眼成熟ウサギの片眼を遮蔽し, 視性円筒内におき, 実験 (1) で用いた視運動刺激を加えた. この際, 視性円筒は遮眼側より開眼側に向って回転された. また, 深層項筋電気刺激前後の視運動性眼振と視運動性後眼振が測定された.
    実験 (1) 及び (2) より次の結論が得られた.
    (i) 深層項筋に微弱な電気刺激 (例えば1V90″) が加えられる場合は, 視運動性眼振の出現は促進されることが多かった. これに対し, 視運動性後眼振は有意の変動を示さないか, 既存の後眼振が抑制されるものもあった. 深層項筋に加えられる電気刺激のvoltageが高くなるにつれて, 視運動性眼振の出現は抑制され, 視運動性後眼振の出現は促進される傾向を示した. なお, 高いvoltageの深層項筋電気刺激により視運動性後眼振のfiring現象や視運動性限振のinversion現象が出現した. 因みに視運動性眼振が促進される場合は, 視運動性眼振を最も効果的に促進する視性円筒の回転速度の上限 (至適円筒回転速度) が上昇する傾向を示した. これに対し, 視運動性眼振の出現が抑制される場合には, 至適円筒回転速度が下降する傾向を示した.
    (ii) 片眼視のウサギの場合は両眼視ウサギの場合に比して深層項電気刺激は視運動性眼振の促進効果少なく, 且つ錯倒性眼振を出現したり, 視運動性後眼振の出現を誘発又は増大したりした.
    (iii) 一般的に云って, 深層項筋電気刺激の結果, 視運動性眼振が適正に促進され, 視器系平衡機能が向上したと考えられる所見を示した場合は, 視運動性後眼振に有意な変動は少なく, 場合によっては既存の後眼振が抑制された. これに対し, 深層項筋電気刺激の結果視器系平衡機能低下を思わせる所見 (視運動性眼振の抑制, 錯倒性眼振の出現など) が得られる場合は, 視運動性後眼振 (特に第II相) の出現が促進される傾向を示した.
    以上の成績より次のことを申しのべたい.
    (1) 視器と頸筋深部受容器は密接な関連を有し, 後者の適度の亢奮性増大は視器系の平衡機能を向上し, その過度の亢奮性の増大は視器系の平衡機能を破綻させる傾向を示した. この事実は “頸筋深部受容器は身体平衡に関して平衡維持的に作動する機序と平衡破綻的に作動する機序の二面性を有する” とする私達のこれまでの考えを支持する.
    (2) 平衡器としての頸筋深部受容器は視運動性眼反射に対して2つの作用機序を有する. 即ち, 視運動刺激中に出現する眼反射には促進的作用を発揮し, 視運動刺激後の眼反射には抑制的作用を発揮し, それらの作用を通じて個体の平衡維持に関与する.
  • 宮原 裕, 滝本 加代, 佐藤 武男, 井上 俊彦, 牧野 利雄, 重松 康
    1972 年 75 巻 3 号 p. 355-371
    発行日: 1972/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    1. 研究目的
    上咽頭に発生する悪性腫瘍は特異な臨床症状を呈し, 早期発見が困難であり, きわめて予後の悪い疾患である. 最近は発癌の問題とからんでウィルス学的研究が進んでいる. そこで私達は本腫瘍の臨床像を明らかにするため各種の統計的観察を試み, 諸家の報告と比較検討した.
    2. 研究方法
    昭和33年1月より昭和46年6月までに大阪大学医学部附属病院耳鼻咽喉科および放射線科を受診した上咽頭悪性腫瘍158例を資料とし, その発生頻度, 性別年令別頻度, 初発症状, 初診時症状, 腫瘍の発生部位, 病理組織診断, 治療法および予後について調査した. なお病期分類をも試みた.
    3. 研究結果
    1) 症例158例で, 発生頻度は年平均, 約11.7例であった.
    2) 男性111例, 女性47例で男女比, 約7: 3であった. 年令分布は7才より73才にわたり, 40~60才台で67%を占め年令層がやや若かった.
    3) 初発症状は, 耳症状22.6%, 鼻症状29.1%, 頸部症状30.7%, 脳神経症状15.6%であった.
    4) 初診時症状は, 耳症状36.7%, 鼻症状45.6%, 脳神経症状 (頭痛を含む) 39.2%, 頸部症状67.0% (片側37.3%, 両側29.7%) でありかなりの病巣進展を示していた.
    5) 脳神経症状はV (26例), VI (21例), III (17例), IX (14例), X (14例) の順で多かった.
    6) 腫瘍発生部位は側壁 (右49例, 左40例56.3%) 天蓋部 (58例36.7%) であった.
    7) 病理組織学的分類は癌腫70.9% (扁平上皮癌が主), 肉腫24.1% (細網肉腫が主) で癌腫が多かった.
    8) 病期分類は癌腫 (UICC基準による) ではstage I+II: 26.3%, stage III+IV: 73.7%, 肉腫 (Kaplanの分類による) ではstage I+II: 91.7%, stage III+IV: 8.3%であった.
    9) 治療法として放射線療法を主体とした. 3年粗生存率46.7%, 5年粗生存率34.9%であり, 癌腫では5年粗存率29.5%, 肉腫では47.4%であった. 頸部リンパ節転移を認めない群の5年粗生存率は52.4%, 片側に認める群では28.1%, 両側に認める群では23.1%であった. 病期分類別に5年粗生存率をみると, 癌腫ではstage I 45.5%, stage II, III, IVは33.3%, 20.0%, 14.3%の順であり, 肉腫ではstage I 57.1%, stage II 45.5%でstage III+IV 0%であった.
  • 今井 明
    1972 年 75 巻 3 号 p. 372-386
    発行日: 1972/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    1. 目的
    最近, 肝, 骨疾患を有しない肺癌患者の血清および組織中に熱安定性とL-フェニルアラニンによる阻害率の異なる2種類の腫瘍性アルカリフォスファターゼ (以下Al-Pと略す.) 上昇が報告されているので, 頭頸部悪性腫瘍においてもこれら腫瘍性Al-Pの出現があるかどうか検討し, その臨床的意義を解明したいと考えた.
    2. 方法
    肝および骨疾患を有しない頭頸部悪性腫瘍患者62例, 非悪性腫瘍患者55例の血清を材料とし, Al-P値はKind-King法. そのisodynamicな分折は, 寒天ゲル電気泳動, 阻害剤およびゲルろ過によった.
    3. 結果
    1) 悪性腫瘍群における血清Al-P値の平均値が非悪性腫瘍群より約1.5倍高い値を示した.
    2) いわゆ高分子量Al-Pが悪性腫瘍患者血清中にかなりの高率で出現し, 腫瘍細胞性であることが推定された. また, このAl-Pは, 熱に不安定であり, L-フェニルアラニンに抵抗性であった.
    3) いわゆる耐熱性Al-Pの出現は, 62例中3例であった.
    4) 治療によるAl-Pの変動は, 治療開始後ほぼ1~2週間で一過性の上昇を認め, これが局所効果の指標となり得る可能性が示された.
    以上の成績から. 頭頸部悪性腫瘍における血清Al-Pは, 熱に不安定で, L-フェニルアラニンに抵抗性のものが, 臨床上, 意義あるものと結論された.
  • 今井 明
    1972 年 75 巻 3 号 p. 387-400
    発行日: 1972/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    1. 目的
    頭頸部悪性腫瘍患者血清アルカリフォスファターゼ (以下Al-Pと略す.) の中に腫瘍組織由来のものが出現している可能性を前報で推定したが, 今回は腫瘍組織そのものを用いて, その生化学的分析を試み, 腫瘍細胞性Al-Pの性質を明らかにしたいと考えた.
    2. 方法
    喉頭癌 (扁平上皮癌) 組織を用い, ブタノール抽出, Sephadex G-200によるゲルろ過, DEAE-celluloseクロマトグラフィーにより精製し, 精製された喉頭癌Al-Pについて, 分子量, アミノ酸組成および酵素学的性質について検討した.
    3. 結果
    1) 約20倍の比活性で精製された.
    2) 分子量約145,000と推定され, いわゆる高分子量Al-Pは, この分子量をもつAl-Pがlipoprotein particleと結合しているものと考えられた.
    3. アミノ酸組成では, 酸性アミノ酸が塩基性アミノ酸に比し高い含有率が得られた.
    4. フェニルリン酸を基質とした場合, 至適pH9.4, ミハエリス定数0.7mMであった.
    5. 活性中心における金属イオンの重要性が推論された.
    6. L-フェニルアラニンに抵抗性であり, EDTAに感受性を示した.
    7. 熱安定性では, 56℃, 5分で約50%の活性低下を認め, 65℃, 2分で失活した.
    8. ノイラミニダーゼの影響では, 電気泳動による移動度の減少があまり著明でなかった.
    9. 耐熱性Al-Pの生化学的性質との間に, 著明な差異が認められた.
  • 1972 年 75 巻 3 号 p. 401-423
    発行日: 1972/03/20
    公開日: 2010/12/22
    ジャーナル フリー
feedback
Top