日本耳鼻咽喉科学会会報
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113 巻, 1 号
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総説
  • 松山 裕
    2010 年 113 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/19
    ジャーナル フリー
    臨床研究を行う際には生物統計学による支援が必須となってきている. しかも, 臨床研究において生物統計家に期待される役割は単なるデータ解析者だけでなく, methodologistとしての参画が要求されている. 本稿では, 臨床研究を実施する際に生物統計学に期待される3つの側面 (研究計画・統計解析・データ管理) のうち, もっとも重要な部分である「研究計画」について概説する. 具体的には, プロトコル作成の必要性・研究の内部妥当性の確保・研究の精度の確保について述べる.
原著
  • 古田 康, 松村 道哉, 大谷 文雄, 鈴木 正宣, 佐藤 宏紀, 森田 真也, 本間 明宏, 折舘 伸彦, 福田 諭
    2010 年 113 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/19
    ジャーナル フリー
    目的: 化学放射線療法後の喉頭癌再発例に対する喉頭全摘出術においては, 咽頭皮膚瘻孔など創合併症の発生率が高いことが報告されている. その予防策として, 咽頭粘膜縫合部を血流に富む新鮮な組織で覆う方法 (pharyngeal interposition graft) の有用性が報告されている. 今回, 喉頭癌に対する化学放射線療法後の再発例において, 喉頭全摘出術とともに大胸筋弁をpharyngeal interposition graftとして用いた4症例の術後経過について検討した.
    対象: 化学放射線療法後に再発を来した喉頭癌4症例 (声門上癌3例, 声門癌1例) を対象とした. 喉頭全摘出術後, 咽頭粘膜を一次縫合し, さらに咽頭粘膜縫合部と挙上した皮膚の間に大胸筋弁を挟みpharyngeal interposition graftとした.
    結果: 4例中3症例に軽度創合併症が生じた. 気管孔周囲の局所感染, 皮下小膿瘍, 皮膚縫合部の表層壊死が各1例であり, いずれも局所処置で改善した. 4症例ともに咽頭皮膚瘻孔などの重度創合併症は来さなかった. また, 大胸筋弁の血流不全および採取に伴う合併症は認められなかった.
    結論: 大胸筋弁を用いたpharyngeal interposition graftは安全であり, 化学放射線療法後の喉頭全摘出術において咽頭皮膚瘻孔などの重度創合併症の発生を抑えるため有用であると考えられた.
  • 橋本 茂久, 高橋 邦行, 佐藤 裕子, 石岡 孝二郎, 大野 雅昭, 野村 智幸, 宮島 宏美, 高橋 姿
    2010 年 113 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/19
    ジャーナル フリー
    鼻副鼻腔内反性乳頭腫の2例において, CT, MRI画像および両者を重ね合わせたフュージョン画像をナビゲーションシステムで使用した.
    術前にワークステーション上で3種類の画像を作成し, 手術操作の内容や部位に応じて必要な画像を即座に表示できるよう準備した. 前頭骨削開ではCT画像が, 腫瘍基部の推測とアプローチの決定にはMRI (またはMRI強調フュージョン) 画像が, 前頭蓋底骨欠損部位ではフュージョン画像が手術遂行の際に有用であった. この経験から, フュージョン画像を含めた3種類の画像を用意し, ナビゲーション上の表示を切替えて使用することは, 鼻副鼻腔内反性乳頭腫手術時の有効な手法の一つになりうると考えた.
  • 宮本 真, 井上 俊哉, 永田 基樹, 湯川 尚哉, 小椋 学, 藤澤 琢郎, 近野 哲史, 八木 正夫, 山下 敏夫
    2010 年 113 巻 1 号 p. 20-25
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/19
    ジャーナル フリー
    空気塞栓症はまれな合併症である. 今回われわれは, 下咽頭癌の根治的化学放射線治療後の残存に対して, 再建術を含むサルベージ手術を行い, まれな合併症である空気塞栓症を来した症例を経験した. 縫合不全による咽頭瘻から頸部の感染を来し, その治療経過中に突然意識消失とショックを起こした. 脳のほか全身の空気塞栓を認め, 肺・心筋・脳梗塞を引き起こし, 約2カ月後に不幸な転帰となった. 創部の感染から左内頸静脈の非出血性破裂が生じており, そこに胸腔内圧が陰圧になった際に空気が入り全身に回ったと推測された. 空気塞栓はさまざまな医療手技に伴って発症する可能性があり, 周術期に起こりうる合併症として認識する必要があると思われた.
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