日本耳鼻咽喉科学会会報
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74 巻, 6 号
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  • 特に耳小骨病変並びに組織内細菌について
    田中 耕一
    1971 年 74 巻 6 号 p. 977-1006
    発行日: 1971/06/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    慢性中耳炎の際, 中耳内の耳小骨及び肉芽組織の状態について, さらに炎症の感染及び慢性化に主な役割を持つ細菌の状態について検討した. 対称は1967年10月から1969年2月迄の間に当科に入院手術を施行した患者のうち150耳とした. 耳小骨及びその周囲組織の状態を手術用実体鏡下で, 詳細に観察し, その周囲組織の組織学的所見を検討した. 一方術前の耳漏内細菌及び術中組織内細菌培養との関係, さらに組織学的所見と組織内細菌の関係を検討した.
    慢性中耳炎における耳小骨の病変は砧骨, 槌骨. 鐙骨の順で障害されており, 耳小骨の周囲組織が堅い肉芽, 及び浮腫性の肉芽及び真珠腫の場合, 全てに於いて侵されている順位は同等であるが. 堅い肉芽の場合, 健在例が多く, 真珠腫の場合は健在例が少なく, 病変の存在する耳小骨が多い. これは耳小骨周囲の血管の走行. 硝子軟骨の有無, 周囲組織の状態によると考えられる.
    術前耳漏内細菌及び鼓室内, 乳突洞内肉芽及び真珠腫の粉砕培養, 耳管内貯留液の細菌培養の100症例の結果では, St. aureus, St. epidermidis, Pseudomonas, Corynebacterium, Proteusら5種の細菌が多く検出された. 術前に菌不検出例では, 術中組織内細菌培養では, いづれも細菌は検出されず, 又組織内細菌染色結果でも細菌が検出されないか, 検出頻度少数例である.
    肉芽組織の組織内細菌分布度は上皮より, 固有層深層に行くに従って増加し, 鼓室内肉芽より乳突洞腔肉芽の方が検出頻度が高い. 又血管内皮細胞, テステ壁細胞には細菌が検出されるが. テステ内腔には細菌は存在しない. 真珠腫では, 角化上皮中に著明に細菌が存在し, いわゆる真珠腫塊に細菌が多く, 細菌の生育に好適な場所と推定される.
    コレステリン肉芽腫では, コレステリン内には細菌は証明されず, 本肉芽腫は組織学的炎症所見も著明でない.
    組織学的所見で炎症が最も強い時は, 組織内細菌の検出頻度は中等度 (+) の場合が多く, 反対に組織内細菌が最も多く検出される時は, 組織の炎症所見は (++) の時が最も多い.
  • 河村 進市, 橋本 泰彦
    1971 年 74 巻 6 号 p. 1007-1027
    発行日: 1971年
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    1) 目的:
    耳鳴は広く各科領域にわたる主訴であるが主観的なもので客観的に把握し難くその診断には困惑させられる. すなわち耳鳴に対する検査は聴覚及び前庭機能検査とともに耳科的検査の一翼をになうと考えられるにもかかわらず未だ有用な方法がないからである. 私は耳鳴の診断に関する手掛りをつかむ目的で外因性耳鳴の統計的観察を行つた.
    2) 実験方法:
    対象;約11年間に検査した聴覚障害者で, 頭部外傷1526例, 職業性難聴196例, 急性騒音外傷76例, 所謂慢性CO中毒67例の計1865例であつた. 問診及び検査方法; 性状 (常在性か間歇性か), 表現などを記載する. 次に純音気導, 骨導聴力を測定した後に, 気導閾値上約10~15dBの純音を順次反復聴取せしめて, 耳鳴類似音域, 耳鳴類似周波数を決定する. 正常聴力限界としては20dBを選び, 何れかの周波数1つでも20dBを越えたものは難聴群, それ以外を正常 (聴力) 群とした. 又4000Hz以上を高音域, 3000~1000Hzを中音域, 800Hz以下を低音域とした.
    3) 結果:
    イ) 耳鳴の頻度及び性状; 全体として難聴群では69.8%に, 正常群では49.5%に認められた. 常在性耳鳴と間歇性耳鳴の頻度が難聴群と正常群で逆になつていた.
    ロ) 耳鳴の表現;難聴群, 正常群ともに「ジー」が最も多く33.2%, 次は「キー」であつた.
    ハ) 耳鳴類似周波数; 高音域に耳鳴類似周波数のある割合は, 中音域あるいは低音域に耳鳴類似周波数のある割合より大であつた.
    ニ)「ジー」の類似周波数分布; ほとんど高音域に類似周波数を有していた. 難聴群常在性耳鳴では6000Hzに類似周波数を有しているものが25.1%と最も多く, 次で8000Hzであつた,
    ホ) 耳鳴類似周波数と気導最大聴力損失検査音との関係; 難聴群常在性耳鳴で高音域に類似周波数を有している耳鳴の93.3%は気導最大聴力損失検査音 (気導損失が最大である周波数以下同意) と同じ周波数又は同音域 (その周波数を含む音域以下同意) に類似周波数を有していた. 気導最大聴力損失検査音と同じ又はそれと同音域に耳鳴類似周波数のある場合の耳鳴は高音域に耳鳴類似周波数が集中する (難聴群常在性で91.2%) が, 気導最大聴力損失検査音と耳鳴類似周波数が他音域にある場合の耳鳴類似周波数は不定分散した. 耳鳴類似周波数と気導最大聴力損失検査音が他音域にある割合は難聴群で, 頭部外傷, 職業性難聴, 急性騒音外傷の順に大となつており, その性状もそれに比例して複雑になつているのではないかと考えられ, 診断の手掛りと推定した. これらの結果から, 特に耳鳴類似周波数と気導最大聴力損失検査音との比較により, 耳鳴の性状, 分類, 予後判定などに有用の場合もあるであろうという事実を強調した.
  • 綿貫 幸三
    1971 年 74 巻 6 号 p. 1028-1035
    発行日: 1971年
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    銀反応および, コハク酸脱水素酵素染色を用いて, 前庭平衡感覚器感覚上皮のKMおよび, SMによる病理変化様式が, 光学顕微鏡により, 取出し標本で観察された. 前庭平衡感覚器感覚上皮に対する毒性は, SMがKMよりも強い. 感覚器官別では, 半規管膨大部稜において最も障害が強く, 次に卵形のラ, 球形のラの順であつた. 膨大部稜感覚上皮は, 中心部と辺縁部とに分けられ, 中心部が辺縁部よりも障害されやすい. 同一部位では, I型細胞がII型細胞より脱落するのが早いが, 中心部のII型細胞の多くは, 辺縁部のI型細胞より先に脱落するのがみられた. 球形のラおよび, 卵形のラ感覚上皮では, Striolaの障害が最も早い. Striolaの中で大きな細胞表面を持つI型細胞が最初に脱落するのがみられ, II型細胞では, やはりStriolaの中で大きな細胞表面を持つものが, 他のII型細胞より早く脱落するが, 周辺部のII型細胞と同様小さな細胞表面をもつII型細胞に関しては, Striolaと, その他の周辺部とで著明な差がみられなかつた. I型およびII型細胞とで障害に差がある原因に関して文献的に考察し, 新しくI型細胞の形態学的脆弱性が強調された.
  • 原田 康夫
    1971 年 74 巻 6 号 p. 1036-1039
    発行日: 1971/06/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    半規管膨大部の形態については従来から組織標本により研究されて来た. しかし, 生体観察並びに立体構造についての報告は少ない. Ringer氏液内で蛙の半規管膨大部を摘出し, 膨大部内の計測を実体顕微鏡下に行うと共に, 膨大部頂を切除し, 直接膨大部稜を観察し, 無固定での感覚毛, 感覚上皮部の撮影を行った. 蛙ではcupulaはあまり明らかでなく, また前半規管, 後半規管ではeminentia cruciataが明らかであるが水平半規管では明らかでなく平坦であった. また, 現在迄, 記述をみないと思われるgelatin様物質でおわれた円形の部が, 膨大部稜を境として膨大部底に二ヵ所あるのが観察されたので, この部に“gelatinous portion”と仮りに命名した.
    また走査電顕で同じく観察し, 膨大部稜の感覚毛の配列のしかた, 移行上皮, “gelatinous portion”の表面構造についても明らかにした.
  • 中森 伸
    1971 年 74 巻 6 号 p. 1040-1045
    発行日: 1971/06/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    食道, 気管, 気管支の神経支配, 特に筋肉との関係について, これまでの鍍銀法methylenblue法, 組織化学的方法では不明な点の多い微細構造を電顕的に観察し, 筋収縮および弛緩について考察した. 実験動物として体重500~800gの健康モルモット10匹を使用し, ネンブタール腹腔内麻酔後, 気管内および右心室に6% glutaraldehydeを注入, ついで食道, 気管, 気管支をとり出し6% glutaraldehydeの前固定, 1%OsO4液に後固定, アセトン系列脱水後, Epon包埋, LKB-Ultrotomで超薄切片となし, 酢酸ウラニール, クエソ酸鉛による二重染色後Hitachi Hs-7型電子顕微鏡下に観察した. 食道においてはcholinergic axonは筋細胞に密接したりsynapseを形成する所見はみあたらず, 筋細胞に近接するのみであり, adrenergic axonは血管周囲にのみみられた. 気管, 気管支ではcholinergic axonはbasement membraneを欠いた状態で筋細胞に近接し作用部位と思われる所見がみられた. 又筋細胞はたがいにbridgeで連絡しておりbridgeの部分ではprotoplasmic continuityは存在せず, basement membraneのみ連続している. adrenergic axonは食道同様血管周囲にのみみられ, 筋細胞附近には見出されなかった. 又末梢に向って細気管支に至れば筋細胞間には神経線維がほとんどみられず, 筋細胞はたがいにbridgeで連絡しているが, 上皮下には有髄, 無髄両神経線維が多数みられた. 以上の所見から食道および気管, 気管支の収縮, 弛緩を考察すると食道, 気管支の筋肉はBozlerの分類によるいわゆるsingle unit smooth muscle (上部食道は横紋筋であるが機能的に平滑筋と考えて) であり, cholinergicな興奮は少数の筋細胞に伝えられ隣接細胞へ次々と (気管支の場合はbridgeを介して) 伝達され収縮が起るものと考えられる. またadrenergicな興奮はGershonの説の如く, 血管周囲のadrenergic axonより放出されたnoradrenalin (granulated vesicle) が拡散し筋細胞に作用し弛緩が起るものと考えられる.
  • 酒井 俊一, 真崎 規江
    1971 年 74 巻 6 号 p. 1046-1053
    発行日: 1971/06/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    頭頸部悪性腫瘍のうちUICCにおいて未決定の部位のTNM方式による進展度分類を試みた. その部位は上顎洞, 篩骨蜂巣, 前頭洞, 蝶形骨洞, 鼻腔, 外鼻, 中耳, 外耳, 耳下腺, 顎下腺, 気管および眼窩である.
    分類は各部位の特殊性を考慮して, 各部位ごとになされたが, そこにはおのずから共通した原則がみられる.
    T1: 腫瘍は最大径2cm以下, 深部へ浸潤しない. 骨破壊を認めず, 洞内, 腔内あるいは腺内に限局する.
    T2: 腫瘍は最大径2cmを越えるか4cm以下, あるいは深部へ浸潤するが, その部位を越えない. 骨破壊を認めるが, 同名骨の外側の骨膜, あるいは腺被膜はなお保存されている.
    T3: 腫瘍は最大径4cmを越えるか, 6cm以下, あるいはその部位を越えて周囲組織に浸潤する. 外側の骨膜, あるいは腺被膜を破って周囲への浸潤ないし固着を示す.
    T4: 腫瘍は最大径6cmを越える. あるいは頭蓋底, 頭蓋腔, 頸椎, 下顎骨, 深頸筋, 頸動脈, 胸腔のような重要隣接構造に進展する.
    NM分類については従来のものに従う.
    Stage分類はT分類を主軸にするがN1~2はStage IIIに, N3, M1はStage IVに属させる.
    TNM分類の拡大解釈として, まず癌腫以外の悪性腫瘍の場合, とくに支障を伴わないかぎり, 組織診断を付けてそれを利用する. また治療経過中の腫瘍進展度を記載するために, その所見を得た日付を記入して, 同じ分類方式を用い, T'N'M'分類と呼称して初診時のものと区別する.
    電子計算機による記録を前提として臨床所見のコード化記録を提唱した. 今回は登録番号5桁, 初診日6桁, 性1桁, 生年月日6桁, 疾患名4桁, 組織診断4桁, 治療開始日6桁, TNM分類5桁, Stage 1桁, 組織学的悪性度1桁, 患側1桁, 進展部位3桁, 原発および転移腫瘍の最大径2桁についてコードを定めた.
  • 仁保 正次, 仁保 正和, 仁保 公子
    1971 年 74 巻 6 号 p. 1054-1069
    発行日: 1971/06/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    下顎骨は剛体である. 下顎歯が異常咬合圧に負ければ歯周症, 歯槽膿漏となる. 上顎歯が異常咬合圧に負ければ歯周症, 歯槽膿漏, 上顎洞に穿破すれば歯性副鼻腔炎となる. 顎関節が負ければ, 顎関節症となり, 顎関節症候群を現わす. 顎関節窩内の下顎小頭の運動を, 矢状面, 側方運動を含めて正常にもどして消失するのが顎関節症候群である.
    第1例, 左耳感音性難聴, 耳鳴. 右耳内耳震盪. 咬筋主に左側の神経筋肉痛である.
    第2例, 混合性難聴, 耳鳴. 第3例, 感音性難聴の中に顎関節によるものが入っている. 第4例, 感音性難聴, 混合性難聴, 耳鳴. 第5例, 混合性難聴, 耳鳴, 咬合諸筋の神経筋肉症状. 第6例, 左耳痛, 咬合諸筋の筋肉神経症状. 第7例, 左耳痛, 咬合諸筋の筋肉神経症状. 第8例, 左耳痛 (新鮮例で本例のみ義歯をはずして通気をしたらCosten氏の云うように劇的に治癒した). 第9例, 両側感音性難聴, 耳鳴, 第10例, 左骨性耳管部の狭窄. 第11例, 眩暈, 耳鳴. 以上が我々の顎関節症候群である. 即ちCosten氏症候群は再検討を要する.
    診断は不良咬合の発見より, レ線撮影による. 早期接触をとって症状がよくなれば間違いはない.
    感音性難聴の原因は下顎小頭が関節窩後, 後内壁に衝突するために起る蝸牛の障害である. 従って第1例では咬合の悪習慣をやめて1年9ヵ月, 最終補綴後10ヵ月でオーヂオグラムでも上昇を見た.
    耳痛の原因も下顎小頭の関節窩後壁への衝突によるもので, その陰影をレ線で認め, 更にその消失の期日をも述べた.
    治療は海老沢嗣郎歯科医師のFully balanced occlusionの顎科学の理論を述べた. Costen氏は顎科学に反対しているので, 聴力に対する治療成績はよくない.
  • 1971 年 74 巻 6 号 p. 1070-1090
    発行日: 1971/06/20
    公開日: 2010/12/22
    ジャーナル フリー
  • 1971 年 74 巻 6 号 p. 1091-1094
    発行日: 1971/06/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
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