一般地域住民を対象とした自記式質問票と聴力検査をもとに, 年齢, 4周波数平均聴力レベル, 学歴, 難聴の自覚および他覚 (他人から難聴を指摘されたことがあるか否か), 等の12項目と補聴器所有の有無との関係について, ステップワイズ重回帰分析を用いて検討した. さらに難聴の自覚および他覚と平均聴力レベルとの関係についてもあわせて検討した. 対象は40歳から84歳 (平均年齢59.9歳) の2,355名 (男性1,192名, 女性1,163名) であった.
結果は, 男性では年齢, 良聴耳聴力レベル, 不良聴耳聴力レベル, 学歴が, 女性では年齢, 良聴耳聴力レベル, 難聴の他覚が, 補聴器所有の有無に有意に関係していた. また, 男女ともに補聴器所有に対する年齢の影響は高齢になるほどむしろ「負の効果」を示した.
一方, 難聴の自覚および他覚と平均聴力レベルとの関係についての検討では, 両耳とも平均聴力レベルが正常もしくは軽度難聴であっても, 自分で聞こえにくいと感じたり他人から難聴を指摘されたりしている場合があることが判明した.
今後さらに難聴の自覚および他覚における周辺雑音等の条件や, 各対象の語音弁別能などについても検討する必要はあるが, 平均聴力レベルが正常もしくは軽度難聴であっても, 何らかの補聴を必要とする症例が潜在している可能性があると考えられた.
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