日本耳鼻咽喉科学会会報
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111 巻, 5 号
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総説
  • —嗅覚検査の現状と展開—
    三輪 高喜, 志賀 英明, 塚谷 才明, 古川 仭
    2008 年 111 巻 5 号 p. 399-404
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/07/03
    ジャーナル フリー
    わが国の嗅覚検査の現状と今後の展望について概説した. 嗅覚検査は自覚的検査と他覚的検査に分類されるが, 現在臨床で用いられているのは自覚的検査のみである. 自覚的検査の中で, 保険診療として請求が認められているのは, T & Tオルファクトメーターを用いた基準嗅力検査とアリナミン液を用いた静脈性嗅覚検査のみである. しかし, 基準嗅力検査の施行率は極めて低く, 診断はほとんどの施設において静脈性嗅覚検査のみによりなされている. そこで, 日本人のにおい同定能を測定するために開発されたスティック型嗅覚検査を用いて臨床研究を行ったところ, 本装置を用いることにより, 嗅覚障害の診断が可能であることが証明された. また, 本検査は人間ドックなどのスクリーニングとしても有用であることが判明した. 今後, 一般臨床でも使用可能となるような働きかけが必要である. 一方, 他覚的検査に関しては, fMRI, PETなど測定装置は病院レベルで普及しつつあるが, 適切なにおい刺激装置がないため, その使用は実験室レベルで嗅覚中枢の同定など基礎実験レベルにとどまっている. 今後, 一般臨床で使用可能なにおい刺激装置の出現により, 一段の飛躍が期待される.
原著
  • 内田 育恵, 杉浦 彩子, 安藤 富士子, 下方 浩史, 吉岡 真弓, 中島 務
    2008 年 111 巻 5 号 p. 405-411
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/07/03
    ジャーナル フリー
    一般地域住民を対象とした自記式質問票と聴力検査をもとに, 年齢, 4周波数平均聴力レベル, 学歴, 難聴の自覚および他覚 (他人から難聴を指摘されたことがあるか否か), 等の12項目と補聴器所有の有無との関係について, ステップワイズ重回帰分析を用いて検討した. さらに難聴の自覚および他覚と平均聴力レベルとの関係についてもあわせて検討した. 対象は40歳から84歳 (平均年齢59.9歳) の2,355名 (男性1,192名, 女性1,163名) であった.
    結果は, 男性では年齢, 良聴耳聴力レベル, 不良聴耳聴力レベル, 学歴が, 女性では年齢, 良聴耳聴力レベル, 難聴の他覚が, 補聴器所有の有無に有意に関係していた. また, 男女ともに補聴器所有に対する年齢の影響は高齢になるほどむしろ「負の効果」を示した.
    一方, 難聴の自覚および他覚と平均聴力レベルとの関係についての検討では, 両耳とも平均聴力レベルが正常もしくは軽度難聴であっても, 自分で聞こえにくいと感じたり他人から難聴を指摘されたりしている場合があることが判明した.
    今後さらに難聴の自覚および他覚における周辺雑音等の条件や, 各対象の語音弁別能などについても検討する必要はあるが, 平均聴力レベルが正常もしくは軽度難聴であっても, 何らかの補聴を必要とする症例が潜在している可能性があると考えられた.
  • 小松原 幸子, 花牟礼 豊, 須田 佳人, 春田 厚, 笠野 藤彦, 鹿島 直子
    2008 年 111 巻 5 号 p. 412-415
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/07/03
    ジャーナル フリー
    耳鼻咽喉科領域では, 脂肪注入術は, 主に声門閉鎖不全に対し行われる方法である. われわれは, 喉頭摘出後にボイスプロステーシス (PROVOX2®) を留置したがシャント孔が拡大し, 保存的には縮小困難であった症例に遭遇した. この症例に対し, 声帯内脂肪注入術を応用して, シャント孔周囲に脂肪を注入した. その結果, シャント孔の十分な縮小が得られた. これにより, ボイスプロステーシスを用いた発声が継続可能となった.
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