日本耳鼻咽喉科学会会報
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109 巻, 1 号
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  • 金丸 眞一
    2006 年 109 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2006/01/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    既存の医療の限界から再生医療に対する期待が高まっている.再生医療は,疾患,外傷,先天奇形など不可逆的な損傷を受けた組織•器官を細胞を用いて治療する医療である.再生医療の元になる再生医学の基盤は,医学と工学とが融合して生まれた組織工学にある.組織の再生には細胞,足場,調節因子の3要素が適切な生体環境の下に置かれることによって可能となるといわれている.したがって,いかにこれらの要素を組み合わせてゆくかが組織再生の鍵となるが,これを工学的手法で可能にするのが組織工学である.
    組織工学における組織再生のアプローチのひとつとして,上記の再生の3要素を生体内に直接移植するというin situ tissue engineeringの概念が登場した.この概念によれば,特定臓器の局所再生にあっては生体から供給される以外の要素のみの投与でも再生が可能である.
    華々しい再生医学研究の進歩にもかかわらず,現在,再生医療として臨床応用されているものはまだ少ない.in situ tissue engineeringの概念によって臨床応用へのハードルがやや下がったとはいえ,頭頸部領域での臨床応用ではとくに少ないのが現状である.
    本稿では,頭頸部領域の再生研究と臨床応用の現状とについて紹介する.
  • 鼻•副鼻腔領域の疾患を中心に
    友田 幸一, 村田 英之, 石政 寛
    2006 年 109 巻 1 号 p. 8-10
    発行日: 2006/01/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    鼻•副鼻腔領域におけるナビゲーション手術の必要性,機種,適応疾患および手術教育への応用について報告した.最新のナビゲーションシステムの高い精度を生かして術者自身の精度を検証した結果,手術部位と画像との解剖学的位置関係のずれは,術者の知識差,経験差によって,また手術部位によっても大きく異なることが明らかとなった.術前に術者の精度を確認する上で,またその誤差を補完する意味でナビゲーションシステムの使用は有用と考える.機種については,次々と高性能の機器が登場してきているが,今後使用用途によって二極化されるように思われる.一つは大学病院レベルの高度な手術に対応した高性能の機種と,もう一つは最低限の機能を有し,操作性に優れ,外来,診療所レベルなど,いつでもどこでも使える機種である.適応疾患については,正常構造が崩れた慢性副鼻腔炎(再手術)例,多胞性あるいは骨性閉鎖などの副鼻腔嚢胞,後鼻孔骨性閉鎖例のような奇形症例が絶対適応と考えられた.鼻科手術教育への応用として,副鼻腔モデルとナビゲーションを組み合わせたイメージガイド下トレーニングシステムは,自己学習が繰り返し行え,スキルの向上に役立つものと考えられた.
  • 重症度分類を用いて
    柴 裕子
    2006 年 109 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2006/01/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    嚥下障害患者の診療を在宅で行うにあたってはいくつかの制限がある.しかし在宅嚥下障害患者は年々増加し,耳鼻咽喉科医への診察要請も増えている.そこで在宅における耳鼻咽喉科医の診察が,より行いやすく役に立つものとなるよう,嚥下障害患者を重症度によって分類する試みを行い,その臨床的意義と有用性について考察した.在宅嚥下障害患者24例を対象に,兵庫県耳鼻咽喉科医会で作成した問診表とチェックリストに則った診察を行い,全身状態も考慮した上で重症度を4段階に分類した.その上でそれぞれの患者の重症度と,診察後に決定した治療方針や経口摂取の可否について検討した.その結果,4段階の重症度に分類することで,在宅においても治療方針がまとめられ,在宅嚥下障害患者を整理して対応することにつながり,実際的であると考えられた.
  • 鈴木 さやか, 持木 将人, 中尾 一成, 坂本 幸士, 安藤 瑞生, 菅澤 正
    2006 年 109 巻 1 号 p. 19-23
    発行日: 2006/01/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    下咽頭癌は頭頸部癌の中で最も予後不良な疾患の1つである.
    進行癌症例に対する外科的療法では下咽頭•喉頭•頸部食道摘出術(咽喉食摘術)が標準的であり,しばしば遊離空腸による再建術が行われるが,術後,移植腸管の周囲にあたる部位にリンパ節の腫脹と思われる腫瘤を触知することがある.今回我々は,術後に移植腸間膜のリンパ節転移を認めた症例を経験したので,東大病院耳鼻咽喉科における遊離空腸移植症例の検討をあわせてここに報告する.
    1982年から2002年まで東大病院耳鼻咽喉科にて,咽喉食摘術後に遊離空腸による咽頭•食道再建を施行した症例は136例あり,そのうち術後頸部CTが検討可能であった72例を対象とした.
    全観察期間において,移植空腸の腸間膜にあたる部分に5mm以上のリンパ節腫大を認めたものは72例中43例(60%)あり,29例(40%)においては径10mm以上だった.術後複数回の頸部CTを検討できた症例は72例中33例あり,24例(30%)で5mm以上のリンパ節腫大を認めた.観察期間中に腫大リンパ節が増大傾向を示したものは24例中13例(54%)であった.臨床的には反応性の腫大がほとんどだが,増大傾向を示した13例のうち1例で病理学的に,1例で画像診断上転移が疑われた.臨床的に悪性を疑う場合には細胞診で診断するが,安易な穿刺は血管柄の損傷から移植空腸の壊死を引き起こす危険性があるため,エコーガイド下に注意して行うべきである.
  • 八木 剛史, 林 賢, 敷井 久純, 宮本 ゆう子, 小田 恂, 新川 敦
    2006 年 109 巻 1 号 p. 24-29
    発行日: 2006/01/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    反復性滲出性中耳炎に影響を与えていると考えられるアデノイド増殖症の50例に対して高周波電気凝固装置を用いたアデノイド容積縮小術と鼓膜チューブ留置術を施行した.術後6ヵ月以上の経過観察にて,鼓膜チューブ留置術のみを施行したコントロール群の50例と比較したところ,術後の滲出性中耳炎の再発による鼓膜チューブ留置術再施行率および鼓膜切開術再施行率,術後の患者の月平均通院日数,術後の抗生物質投与日数,鼓膜チューブ脱落後にテインパノグラムを施行した際のB型およびC2型の割合はいずれもコントロール群に比べて著明な減少を示した.アデノイド容積縮小率については,アデノイド容積縮小術前後において,鼻内内視鏡下の肉眼所見による鼻咽腔の閉鎖率から評価したところ,術後のアデノイド容積は術前に比べて平均で52.2%減少し,耳管咽頭口や後鼻孔は大きく開放された.本法は,手術手技的にも,ラリンゲルマスクによる全身麻酔にて,鼻内内視鏡を使用してアデノイドや周辺組織を常に明視下におきながら短時間で確実にアデノイド容積を縮小させることができ,出血もほとんどなく,外来日帰り手術として非常に安全性の高いものであった.以上より,高周波電気凝固装置を用いたアデノイド容積縮小術は反復性滲出性中耳炎に影響を与えていると考えられるアデノイド増殖症に対して極めて有効な治療法であり,かつ,日帰り可能な安全に行える手術法であるということが示された.
  • 小田 梨恵, 竹本 剛, 川井 元晴, 山下 裕司
    2006 年 109 巻 1 号 p. 30-35
    発行日: 2006/01/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    脊髄小脳変性症(SCD)は,小脳性または脊髄性の運動性失調を主体とする進行性疾患である.運動失調や自律神経症状,ふらつき•めまい•眼球運動障害などの多彩な症状を来す.1993年に異常遺伝子が証明されトリプレット•リピート病の一つであるという概念が確立されて以降,病因遺伝子座の違いによりSCA1,SCA2として次々に同定され,遺伝子学的観点からの分類が確立されるに至った.そうしたジェノタイプから神経耳科学的眼球運動障害をみた報告はまだ少ないないため,今回検討を行うこととした.
    対象はSCD患者33名,うち同意を得て遺伝子検査を行ったのは9名であり,SCA3が2名,SCA6が3名,既知の遺伝子異常として同定できなかったのが4名であった.下肢運動失調を表す指標として重症度分類を用い,また眼球運動障害を表す指標として視標追跡検査(ETT)および視運動性眼振パターン(OKP)を用い数値化した.結果としては,従来から外眼筋麻痺による眼球運動制限が注目されていたSCA3のみならず,純粋な小脳失調症状が主体とされていたSCA6においても,下肢運動失調に先行して神経耳科学的眼球運動が重度に障害される傾向にあった.
    このことより,神経耳科学検査はSCD(とくに本邦に多いとされるSCA3とSCA6)の早期発見のための有用なマーカーとなりうること,また様々な治療に対する効果判定の鋭敏な指標となりうることが示唆された.
  • 急性めまい
    矢部 多加夫
    2006 年 109 巻 1 号 p. 64-67
    発行日: 2006/01/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
  • 山下 敏夫
    2006 年 109 巻 1 号 p. 68-69
    発行日: 2006/01/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
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