日本耳鼻咽喉科学会会報
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113 巻 , 12 号
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総説
  • 舘田 勝, 佐藤 宏昭
    2010 年 113 巻 12 号 p. 877-881
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/10
    ジャーナル フリー
    岩手県の頭頸部がん診療は担当すべき耳鼻咽喉科医師の減少により緩やかな縮小体制を取っている. 2008年の統計値では, 岩手県の日耳鼻会員数は74名で全国の中で40位, 10万人に対する日耳鼻会員数は5.47人で44位, 日耳鼻会員密度は4.84×10-3/km2 で最下位であった. 岩手県内施設の2007-2008年の2年間の新患症例は268例で, 228例が岩手県内, 40例 (15%) が他県からの症例であった. 救急疾患を含む一般耳鼻咽喉科勤務の中で, 現在の当科で担当できる頭頸部がん症例数は年間おおよそ100例程度である. 担当しきれない症例は割り振りをすることになり, 選別し適切に担当, 紹介することで医師減少に対応している. 今後, 人員の確保により一層努力することはもちろんであるが, 来るべき未来に準備しておくため, 現状と今後の傾向を把握し人員の減少幅に応じたシミュレーションをあらかじめ行っておく必要がある.
  • 吉野 邦俊
    2010 年 113 巻 12 号 p. 882-888
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/10
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌診療においても標準治療が担保され, 場合によって先進医療が受けられることや, 癌難民を作らない切れ目のない医療が求められる. そのためには癌診療のネットワークを構築する必要があるが, 現在, 国が推進している「がん対策推進基本計画」に沿った「がん診療連携体制」を活用したネットワーク作りが合理的かつ現実的と思われる. ネットワークの要となるのは, 今年度からスタートした頭頸部がん専門医制度における「頭頸部がん研修認定施設」である. 大阪府では現在までに認定された12施設のうち11施設は国指定の「がん診療連携拠点病院」でもあり, ネットワーク構築には好都合である. そして, 頭頸部癌は数が少ないことや人的資源の不足を考えると, 集学的治療の診療体制が整ったこのような病院への頭頸部癌治療の集約化が必要であろう. 治療後の経過観察, 経口抗癌剤の投与, 検査, 各種の支持療法, 緩和ケアなどは, 地元の一般病院や開業医との連携, すなわち病病連携, 病診連携を行うシステムが構築されれば, 患者にとっても便利で切れ目のない医療が期待できる. 連携を確かなものとするためには, 5大癌 (肺, 胃, 肝, 大腸, 乳腺) と同様に頭頸部癌についても統一型の地域連携パスの作成, 運用が好ましい.
    このようなシステムが有効かつ効率的に機能するかどうかは, ひとえに実際に診療に携わる医療者にかかっている. しかし, 現状の耳鼻咽喉科医の不足, ひいては頭頸部がん専門医の不足は深刻であり, 頭頸部がん専門医制度の促進や耳鼻咽喉科医の増加, ボトムアップなど人材育成が喫緊の重要課題といえる. 今後状況が改善され, 質の高い医師の増加を期待したい. 状況改善には頭頸部外科に対するインセンティブを高く維持する環境が必要であるが, そのためには専門医に対する正当な評価に基づいた身分的, 経済的な確保がなされることが不可欠であろう.
原著
  • 猪原 秀典, 富山 要一郎, 喜井 正士, 山本 佳史
    2010 年 113 巻 12 号 p. 889-897
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/10
    ジャーナル フリー
    近年, 頭頸部進行癌に対して臓器温存を目指して化学放射線同時併用療法が多用されているが, その遺残・再発に対する救済手術の意義は確立されていない. 今回われわれは, ドセタキセルとシスプラチンを毎週1回投与する化学放射線同時併用療法で加療した頭頸部進行癌30症例に対する救済手術34例 (遺残19例, 再発15例) について, その合併症・予後について検討したので報告する. 救済手術の内訳は頸部郭清単独21例, 原発巣切除単独1例, 原発巣切除+頸部郭清12例であった. 遺残例では19例中7例 (37%), 再発例では15例中3例 (20%) に合併症を認めたが, 発生頻度に有意差を認めなかった. また, 頸部郭清単独群では21例中6例 (29%), 原発巣切除±頸部郭清群では13例中4例 (31%) に合併症を認めたが, 発生頻度に有意差は認めなかった. 全体として34手術中10例 (29%), 30症例中9例 (30%) に合併症を認めた. 最も多かった合併症は嚥下障害と皮膚壊死でそれぞれ5例に認めた. 嚥下障害の3例に経内視鏡的に胃瘻を造設した. 咽頭皮膚瘻を合併した皮膚壊死の2例では, 大胸筋皮弁による加療を要した. 頸動脈破裂, 乳びは認めなかった. 救済手術後の予後は遺残例で3年累積粗生存率74%, 再発例で3年累積粗生存率87%と良好であった. 頭頸部進行癌に対する化学放射線同時併用療法後の救済手術は, 難易度は高いが致命的な合併症は認めず予後も良好であり, 積極的に施行するべきである.
  • 野田 加奈子, 児玉 悟, 野田 謙二, 渡辺 哲生, 鈴木 正志
    2010 年 113 巻 12 号 p. 898-906
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/10
    ジャーナル フリー
    深頸部感染症は抗菌薬が発達した今日では減少傾向にあるが, 重症化すると致死的な疾患である. 今回, 過去10年間に経験した深頸部感染症299例について, 深頸部膿瘍群と扁桃周囲膿瘍群に分けて, 年齢, 性別, 基礎疾患, 前治療, 肥満の程度, 喫煙歴, 感染の原発部位, 膿瘍の存在部位, 検出菌, 使用抗菌薬, 手術方法, 治療経過, 入院期間などについて比較検討した. さらに, 年齢, 性別, 喫煙歴, 糖尿病, 肥満 (BMI≥25, BMI≥30) の有無によって, 初診時のCRPと在院日数に差がみられるか検討した. 深頸部膿瘍群は50歳代に, 扁桃周囲膿瘍群では20歳代にピークがあり, 健常人と比べて両群ともに喫煙率が高く, 深頸部膿瘍群は肥満, 糖尿病が多い傾向がみられた. また扁桃周囲膿瘍では60歳以上群で, 深頸部膿瘍では高度肥満群で, 在院日数が長くなる傾向がみられた.
  • 松尾 美央子, 力丸 文秀, 檜垣 雄一郎, 冨田 吉信
    2010 年 113 巻 12 号 p. 907-913
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/10
    ジャーナル フリー
    放射線治療は頭頸部悪性腫瘍の治療にかかせないが, まれに重篤な局所の障害を起こすことがあり, 放射線性下顎骨壊死もその一つである. 今回当科における放射線性下顎骨壊死症例を検討したところ, 下顎骨を照射野に含む症例638例中, 骨壊死を来したのは16例2.5%であった. 原発部位別では舌以外の口腔癌が, 線量別では81Gy以上で, 線源別ではX線+電子線で骨壊死が有意に高く発症していた. 発症時期は照射後1年以内の発症が8例と最多で, その後も5年間は骨壊死の発症が認められた. 治療については, 保存的治療での治癒例が44%で, 手術的加療で治癒した例を含めると最終的な治癒率は63%であった. 一方術後病理標本で癌の混在が判明した症例があり全体の25%を占めた. また保存的加療中や手術的加療後に, 嚥下性肺炎によって死亡した症例が2例存在した. 以上より下顎骨を含む放射線治療では線源と線量に留意し, 骨壊死発症後の治療では癌の混在と嚥下機能障害に注意すべきと思われた.
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