日本耳鼻咽喉科学会会報
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116 巻, 10 号
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総説
  • ―鼻副鼻腔および側頭骨領域―
    尾尻 博也
    2013 年 116 巻 10 号 p. 1083-1092
    発行日: 2013/10/20
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    耳鼻咽喉科領域の画像診断の対象として, 鼻副鼻腔領域の炎症性病変, 側頭骨の真珠腫を取り上げる. いずれも耳鼻咽喉科領域の日常診療において, 比較的高い頻度で扱われる病態であり, 画像評価対象となる場合も多い. 画像診断ではある特定の病態・症状に対して過不足なく情報を獲得するためには系統的な評価が必要となる. 鼻副鼻腔の炎症性病態では (1) 副鼻腔の発達の確認, (2) 正常変異の確認, (3) 鼻副鼻腔領域の含気の状態, (4) 病態の確認・特定, (5) 病変の程度・範囲, 合併症の有無の確認につき, 評価を行うのが論理的であるが, 本稿では鼻副鼻腔領域の代表的な炎症性病変として慢性鼻副鼻腔炎, 好酸球性副鼻腔炎, 歯性上顎洞炎, 真菌性副鼻腔炎の画像所見を記述する. 側頭骨の中耳真珠腫 (あるいはその疑い) では, (1) 鼓室, 乳突洞・蜂巣の発達の確認, (2) 鼓室内の含気 (異常軟部濃度の有無) の確認, (3) 軟部濃度病変の局在の把握, (4) 骨侵食性変化の有無・部位の確認, (5) 頭蓋内合併症の評価, (6) 正常変異の確認につき, 系統的な評価を行う. 骨侵食性変化ではscutum, 耳小骨の他, 顔面神経管, 半規管骨壁, 天蓋などが重要となる. また, 術後症例では (1) 術式の確認, 鼓室・乳突腔の含気の確認, (2) 真珠腫再発の有無, (3) columellaや残存する耳小骨の状況の把握などが重要となる. 上記の系統的評価項目につき実際の症例の画像を提示し, 概説する.
  • 市村 恵一
    2013 年 116 巻 10 号 p. 1093-1099
    発行日: 2013/10/20
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    漢方薬には効果が早く表れるものもあるが, 一般に漢方薬はマイルドに効くという概念があるせいか, すぐ効果が表れなくても患者は許してくれる. 診察の度に患者と一緒に薬の効き目をいろいろな面から検討することで, 良好なコミュニケーションがなされ, 良い医師患者関係を築くことができるのが何よりも好ましい. 感冒時の発熱を解熱させる方法には二通りある. 一つは直接解熱させるNSAIDsなどの解熱鎮痛薬を用いる方法で, もう一つはいったん体を温めて発汗させることにより体温を冷やす漢方薬の麻黄剤を用いる方法である. 両者の解熱効果を比較した研究では漢方薬の方が早く解熱し, 平均薬剤数, 平均処方日数, 総薬剤費ともに漢方薬使用の方が少なかったという報告がある. 感冒に対してはその時期, 体調によりさまざまな漢方薬が用いられる. めまいでは, 不安の強いときは苓桂朮甘湯, 頭痛や胃腸症状があるとき, 手足の冷えがあるときは半夏白朮天麻湯, 座っていても「くらっ」とするとき, 雲の上を歩いている感じ, 吸い込まれそうな感じがするときには真武湯を用いるとよい. 外耳道湿疹には消風散か治頭瘡一方を用い, アレルギー性鼻炎では小青竜湯をまず用いて, その効果をみて, 効果が不十分と感じたら, 炎症が強ければ麻黄や石膏の多い薬剤に変更し, 寒証らしい場合は附子剤の併用か, 麻黄附子細辛湯に変更する. 慢性副鼻腔炎では若年者, 成人では葛根湯加川芎辛夷が, 中高年では辛夷清肺湯が第一選択薬で, 虚証例では荊芥連翹湯が選択される. 頭頸部癌患者の免疫状態の悪化に対して十全大補湯, 補中益気湯, 人参養栄湯などが, 術後, 化学療法時の食思不振に対して六君子湯が, 化学療法による口内炎や下痢に対して半夏瀉心湯や温清飲が用いられる. 耳鳴は漢方でも最も効き目の悪い症状の一つであるが, 直接効果よりも間接効果狙いでアプローチする.
原著
  • 明石 健, 林 隆一, 篠崎 剛, 宮崎 眞和, 大幸 宏幸, 海老原 充
    2013 年 116 巻 10 号 p. 1100-1105
    発行日: 2013/10/20
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    【目的】中咽頭扁平上皮癌における頸部リンパ節転移の頻度や範囲を調べ, 予防的頸部郭清の必要性および, 行う場合の郭清範囲について検討する.
    【方法】当院において1994年から2008年の15年間に, 中咽頭扁平上皮癌に対して初回治療として手術を施行した242例について検討を行った.“潜在的頸部リンパ節転移” を, 予防的頸部郭清施行例における病理組織学的頸部リンパ節転移および後発頸部リンパ節転移と定義して, その頻度や範囲を調べた. 原発巣再発を認めた53例と, 原発不明癌として先に頸部郭清術を施行された9例を除いた180例を対象とした.
    【結果】cN0症例の患側の潜在的頸部リンパ節転移陽性率は21.4%であった. 亜部位別では偏りや傾向は認めなかったが, T分類別ではT1: 5.0%, T2: 19.4%, T3: 44.4%, T4: 60.0%とT分類が上がるにつれて高くなる傾向を認めた. 健側の潜在的頸部リンパ節転移陽性率は2.9%のみであった. cN+症例の健側の潜在的頸部リンパ節転移陽性率は17.2%であった. 亜部位別では, 側壁以外で高い傾向にあった.
    【考察】cN0症例では, T3/4症例で患側の予防的頸部郭清が必要と考えられた. 健側については予防的頸部郭清の意義は少ないと考えられた. cN+症例の健側では, 側壁T1/2症例以外では予防的頸部郭清を検討すべきと考えられた.
  • 工藤 香児, 水戸部 一孝, 本田 耕平, 石川 和夫
    2013 年 116 巻 10 号 p. 1106-1113
    発行日: 2013/10/20
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    重心動揺の測定は, 平衡機能や姿勢制御機能を評価する方法として従来から日常臨床の場で広く実施されてきた. しかし高齢者にみられるような加齢に伴う平衡障害など, このような検査では評価が困難な例も多い. また姿勢制御の本質的な評価には, 重心動揺だけでなく頭部動揺も含めた全身的な解析が重要であるといわれてきたが, これらを正確にかつ簡便に計測する方法は少ない. 本研究では, 磁気式モーションキャプチャーシステムを用いて直立時の頭部と体幹の動きを記録し, 加齢による変化を観察するとともに本システムの有用性を検討した. 66歳から83歳までの高齢者7名を対象に, 重心動揺計の上に開眼と閉眼でそれぞれ30秒間の両脚起立を行い, 頭部, 頸部, 腰部の動揺を三次元的に記録し, 重心の動揺と比較した. その結果, 直立時の身体動揺は頭部が最も大きく, 次が頸部, 腰部の順であった. また腰部動揺の軌跡は重心動揺の軌跡とよく一致していた. これら身体動揺は年齢に伴って大きくなり, ふらつきを訴える患者でより大きな動揺が観察された. 腰部動揺に対する頭部動揺の比率も年齢とともに大きくなり, 姿勢制御機能を評価するための有効な指標となると思われた. 磁気式モーションキャプチャーシステムは, 正確かつ簡便なため日常診療の検査にも応用可能で, これを用いて身体の動揺を計測することにより, 従来の検査でははっきりしない潜在的な異常も検出できる可能性が示唆された.
  • 平賀 幸弘, 黄 淳一, 霜村 真一
    2013 年 116 巻 10 号 p. 1114-1119
    発行日: 2013/10/20
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    血管免疫芽球性T細胞リンパ腫 (angioimmunoblastic T-cell lymphoma: AITL) の1症例を経験した. 患者は33歳女性で, 前頸部に単発の腫瘤を認め, 手術にて摘出された. 病期診断はStage IAで, CHOP3コースと頸部へのX線照射40Gyが施行され, 経過観察中であるが再発を認めない.
    AITLは, 非ホジキンリンパ腫の1.2~2.5%にみられるまれな疾患で, 耳鼻咽喉科領域での報告は認めない. 全身リンパ節腫脹, 肝脾腫, 皮疹, 貧血, 高ガンマグロブリン血症などを症状とする. 治療は多剤併用の化学療法が一般的であるが, 5年生存率20~50%と高悪性に分類されている.
  • 末吉 慎太郎, 進 武一郎, 中島 格
    2013 年 116 巻 10 号 p. 1120-1125
    発行日: 2013/10/20
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    症例は66歳男性. 咽頭痛を主訴に当科受診した. 診察上, 咽喉頭の左半側にアフタと不規則なびらんを多数認めた. 急性咽喉頭炎の診断で抗生剤, 抗真菌薬の内服を行うも改善なく, 徐々に咽頭痛が増悪し, 吃逆を認めた. 抗ウイルス薬を開始し, ステロイドの投与を併用したところ咽頭の炎症は改善するも, 吃逆は持続した. 加えて失神発作を繰り返すようになり, 当科入院となる. 入院後, 精査を行い, 吃逆時に洞停止が起こることが判明した. 吃逆に対してバクロフェン, 芍薬甘草湯の内服を行い, 吃逆の速やかな消失とともに失神発作も改善した. 失神は吃逆による状況失神が考えられた. 吃逆は, 咽頭炎による舌咽神経咽頭枝の刺激で誘発された可能性がある.
  • 小松 愛, 鈴木 一雅, 波多野 孝, 藤田 芳史, 森 義明, 折舘 伸彦
    2013 年 116 巻 10 号 p. 1126-1130
    発行日: 2013/10/20
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    経皮経食道胃管挿入術 (percutaneous trans-esophageal gastro-tubing: PTEG) は, 経口摂取困難な患者の経管栄養ルートとして普及している経皮内視鏡的胃瘻造設術 (percutaneous endoscopic gastrostomy: PEG) が造設困難な場合に有用である. PTEGは消化器科医が施行することがほとんどであるが, 当院では耳鼻咽喉科医が施行しており, 2007年から2012年で9例施行した. PTEGの手技は主に頸部の操作であり, 耳鼻咽喉科医単独で安全に施行可能であった.
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