頭頸部は鼻・副鼻腔, 口腔, 咽頭, 喉頭など多臓器からなる領域である. 病理組織学的に全頭頸部癌の90%は扁平上皮癌であり (以下, 頭頸部癌), その80%近くがstage III/IVの進行癌で, また活動性の同時重複癌が多い. さらに頭頸部癌症例は高齢者また重症合併症を持つ症例が多く, 強力な治療が選択できないため, こうした症例に対する機能温存の工夫も大切と考える.
頭頸部癌に対する機能温存を目的とする化学療法としては, 一次治療ですべての治療に先行するneoadjuvantあるいはinduction chemotherapy (NACまたはIC), 放射線治療と化学療法を同時併用するconcurrent chemoradiotherapy (CCRTまたはCRT) がある.
1970年代後半から臨床応用され, 頭頸部癌に有効性が認められたcisplatinの出現, また5-fluorouracilの大量療法との併用療法の開発によって, 化学療法を加えた集学的治療が施行され, 機能温存が図られてきた. この2剤にさらにtaxane系の薬剤を加えた併用療法のレジメンが開発され, その有用性が証明されている.
抗腫瘍性の高い化学療法を併用すると, 高度の有害事象の発現を招くため, 予防を含め十分な有害事象対策を行うことが不可欠であり, 重症な有害事象は予後悪化因子となり治療完遂率を低下させる.
CCRT後に腫瘍が残存した場合, あるいは再発腫瘍にはsalvage surgeryが必要となる. 機能温存で用いた放射線治療と化学療法は全身状態だけでなく, 局所の浮腫や瘢痕を招き, 切除に際して各層の剥離が難しくなる. さらに創傷の治癒に関して, 低血流・低酸素化, 局所免疫能低下による創傷治癒の遅延, 感染などに十分な配慮が不可欠である.
抄録全体を表示