下咽頭T1,T2癌に対する局所の治療法としては放射線治療や喉頭を保存する咽頭部分切除術(PPPL)などの保存的治療が行われている.過去の報告によれば,PPPLでは,局所制御率は放射線単独照射より軽度良好であるが,術後の誤嚥の問題が大きい.そこで,久留米大学では特に下咽頭T1,T2癌に対しては,QOLを損なうことなく治療成績をさらに良好にすることはできないものかと考えて,原発巣をレーザーで減量した後に放射線の根治照射(以下.レーザー&放射線)を行っている.本報告ではその手技を紹介し,過去に久留米大学で行ってきたPPPLの治療成績とこのレーザー&放射線の治療成績とを対比した.
対象はPPPLを行った20例(T1:4例,T2:16例)と,レーザー&放射線を施行した16例(T1:4例,T2:12例)である.これらに対して治療成績を調べ,さらに治療に伴うQOLの変化として経口摂取の状態や気管切開,喉頭摘出の有無などを調べた.
その結果,PPPLでは5年局所制御率は83.6%,5年喉頭保存率は70.4%,死因特異的5年生存率は75.0%であった.一方,レーザー&放射線例ではそれぞれ87.1%,93.8%,87.5%であった.さらに,レーザー&放射線例では気管切開の施行例は少なく,経口摂取も手術翌日から可能で,誤嚥で喉頭摘出を要した症例は認められなかった.
以上より,本治療法はPPPLに比べて,治療成績の劇的な改善をもたらしはしなかったが,全例に誤嚥は認められず,QOLを損なうことはなかった.今後,症例をさらに重ねていく予定である.
抄録全体を表示