日本耳鼻咽喉科学会会報
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103 巻 , 9 号
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  • 西野 宏, 藤澤 嘉郎, 金澤 丈治, 石川 和宏, 宮田 守, 市村 恵一, 阿部 弘一, 田中 秀隆
    2000 年 103 巻 9 号 p. 963-969
    発行日: 2000/09/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    局所再発および転移頭頸部扁平上皮癌に対する化学療法が試みられてきたが,現在までに明らかな生存期間の延長を認めるには至っていない.しかしcomplete response(CR)例などの一部の症例には生存期間の延長を認め,化学療法の検討は必要である.今回再発•転移頭頸部癌14症例に対し,cisplatin(CDDP)•5-fluorour-acil(5-FU)•大量leucovorin(LV)療法またはtumor dormancyを目的とした低用量化学療法の少量CDDP•tegaftur•uracil療法を施行した.performance status(PS)の良い4症例にはCDDP•5-FU•大量LV療法を施行し,一方PSの悪い10症例には少量CDDP•tegafur•uracil療法(7例入院治療,3例外来通院治療)を施行した.症例全体の平均年齢は63歳(51~86歳),男性13:女性1例であった.全体の治療効果はCR1例,partial response (PR)4例,no change (NC)4例,progressive dlsease (PD)5例であり,奏効率36%,奏効期間平均16週間であった.経過では4~67週間の治療後の生存期間が得られ,13例が原病死,1例が33週問担癌生存である.化学療法別ではCDDP•5-FU•大量LV療法の効果はCR1例(奏効期間11週),NC2例,PD1例であった.grade 3•4の骨髄抑制と消化器症状の有害反応を高頻度に認め,いずれの症例も化学療法終了後にPSの低下を認めた.化学療法終了後16~32週間の生存期間を認めた.少量CDDP•tegafur•uracil療法の効果はPR3例(奏効期間12~23週),NC3例,PD4例であった.有害反応はgrade2までであつた.治療終了後4~67週間の生存期間を認めた.現段階では生存期間の明らかな延長は認めていないが,いずれの化学療法もさらに検討に値する化学療法と思われた.
  • 猪本 雄一郎, 鈴木 聡明
    2000 年 103 巻 9 号 p. 970-976
    発行日: 2000/09/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    (目的)Microfissureは正円窓窩領域に関しては多くの報告があるが,卵円窓窩領域に関してはほとんどみられず,また同一症例で両領域を比較検討した報告もみられない.そこでヒト側頭骨標本を用いて両領域のMicrafissureを比較検討した.
    (対象)両領域の観察に適したヒト側頭骨333例637耳を対象とした.
    (方法)標本は,Heidenhain-Susa液またはホルマリン液にて固定し,脱灰,脱水後,セロイジン包埋し,25μmの厚さで水平断連続切片とし,10枚毎にH-E染色を施し,光学顕微鏡下に観察した.両領域のMicrofissureの出現頻度を性別,左右別,年齢別に検討した.
    (結果)卵円窓窩領域のMicrofissureは66.2%に認められ,正円窓窩領域のMicrofissureは92.0%に認められた.卵円窓窩領域にMicrofissureを認めた症例はすべて正円窓窩領域にもMicrofissureを認めた.両領域とも性差はなかった.
    卵円窓窩領域では74.4%,正円窓窩領域では98.1%で両側にMicrofissureが認められ,左右差はなかった.年齢別では,卵円窓窩領域のMicrofissureは14歳で認められ,以降60歳代まで年齢とともに出現頻度が増加していた.一方,正円窓窩領域のMicrofissureは3歳から認められ,10歳代以降ほぼ全例に認められた.また正円窓窩領域のMicrofissureの出現頻度はいずれの年代でも卵円窓窩領域のMicrafissureの出現頻度より高かった.
    (結語)卵円窓窩領域より正円窓窩領域の方がMicrofissureが生じやすい部位と考えられた.Micrnfissureは成長など左右差のない事象により生じるものと考えられた.卵円窓窩領域のMicrofissureの出現頻度が20歳代以降も徐々に増加している所見は.成長が終了した後も咀嚼等の因子によりMicrofissureが生じる可能性があると考えられた.Microfissureの関与が疑われる病変の場合,卵円窓窩領域の病変についても十分に留意する必要があると思われた.
  • 森 一功, 千々 和圭一, 梅野 博仁, 梅野 哲義, 坂本 菊男
    2000 年 103 巻 9 号 p. 977-985
    発行日: 2000/09/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    下咽頭T1,T2癌に対する局所の治療法としては放射線治療や喉頭を保存する咽頭部分切除術(PPPL)などの保存的治療が行われている.過去の報告によれば,PPPLでは,局所制御率は放射線単独照射より軽度良好であるが,術後の誤嚥の問題が大きい.そこで,久留米大学では特に下咽頭T1,T2癌に対しては,QOLを損なうことなく治療成績をさらに良好にすることはできないものかと考えて,原発巣をレーザーで減量した後に放射線の根治照射(以下.レーザー&放射線)を行っている.本報告ではその手技を紹介し,過去に久留米大学で行ってきたPPPLの治療成績とこのレーザー&放射線の治療成績とを対比した.
    対象はPPPLを行った20例(T1:4例,T2:16例)と,レーザー&放射線を施行した16例(T1:4例,T2:12例)である.これらに対して治療成績を調べ,さらに治療に伴うQOLの変化として経口摂取の状態や気管切開,喉頭摘出の有無などを調べた.
    その結果,PPPLでは5年局所制御率は83.6%,5年喉頭保存率は70.4%,死因特異的5年生存率は75.0%であった.一方,レーザー&放射線例ではそれぞれ87.1%,93.8%,87.5%であった.さらに,レーザー&放射線例では気管切開の施行例は少なく,経口摂取も手術翌日から可能で,誤嚥で喉頭摘出を要した症例は認められなかった.
    以上より,本治療法はPPPLに比べて,治療成績の劇的な改善をもたらしはしなかったが,全例に誤嚥は認められず,QOLを損なうことはなかった.今後,症例をさらに重ねていく予定である.
  • 金子 研吾, 島貫 朋子, 菰田 二一, 加瀬 康弘, 飯沼 壽孝
    2000 年 103 巻 9 号 p. 986-992
    発行日: 2000/09/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    近年,呼気中に排出されるNOの大部分は鼻•副鼻腔にて生産されることが明らかになり,鼻アレルギーとの関連性については多くの報告がある.今回我々は鼻出血に活性酸素が関与する可能性を予測し,RT-PCR法による鼻粘膜におけるNOSの発現,鼻腔NO濃度,スーパーオキシドアニオン(O2-•)を消去するsuperoxide dismutase(SOD)活性を測定し鼻出血との関連について検討した.
    鼻粘膜にiNOSの遺伝子発現を認め,鼻出血患者では正常者の鼻粘膜に比べてiNOSの発現が有意に減少していた.これは鼻出面患者ではNO量が減少し,結果として血圧上昇が関与する可能性を示唆した.基礎疾患に高血圧があり,酸化ストレス等で一過性に血圧が上昇し,鼻腔内血管の破綻が起こり鼻出血が生じると考えた.
    血清SODは出血時に有意に高値を示した.これは鼻出出血にO2-が関与する可能性があり,それが出血時大量に放出されるため,O2-を消去する酵素であるSODが生体防御反応として増加すると解釈できた.
    また,鼻出血と鼻腔における呼気中のNOとの関連について測定し,コントロールの健常者に比較し鼻出血患者においての鼻腔内NOが有意に低下することが判明した.
    以上の結果より,鼻出血患者においてはNO産生が減少し,これが鼻出血に高血圧や活性酸素による粘膜障害などを通じて関与する可能性が示唆された.
  • 馬場 陽子
    2000 年 103 巻 9 号 p. 993-1000
    発行日: 2000/09/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    アブミ骨筋の加齢による変化を組織学的に観察,検討し,同じ耳小骨筋である鼓膜張筋との違いや機能について考察を加えた.対象は当教室で作製した水平断側頭骨連続切片標本の中から54例80耳とした.性別は男性27側40耳,女性27例40耳で,年齢は胎生38週の胎児から89歳までであった.観察は光学顕微鏡下に行い,観察部位は側頭骨連続切片で高さの目安としやすい正円窓窩の高さで行った.筋線維の太さ,アブミ骨筋が存在する骨窩に対する筋,結合組織の割合,アブミ骨筋腱からでる筋線維数について測定し,それぞれの測定結果と加齢との関係を検討した.結果は,1) 筋線維は9歳以下では細く,太さのばらつきは少ない.10歳代から60歳代までは変化はなく,70歳以降で筋線維は細くなり,太さのばらつきも大きくなる.2) 骨窩に対する筋,結合組織の割合は,胎生38週から60歳代までは大きな変化はない.70歳以降では筋の割合が減少し結合組織の割合が増加する.3) 筋線維数も胎生38週から60歳代までは著変はないが,70歳以降では減少している.これらの結果から,アブミ骨筋は10歳代から60歳代までは変化の少ない安定した状態を保っており,70歳以降,比較的急速に加齢による萎縮が起こると考えられた.鼓膜張筋と比較するとアブミ骨筋は加齢による脂肪組織の増加は非常に少なく,筋の萎縮も高齢にならないと起こりにくい.このことはアブミ骨筋の音響刺激による反応は鼓膜張筋とは違い非常に大きく頻度も多いことに起因しているためであると推測される.
  • 野々山 勉, 間島 雄一, 有馬 忍, 竹内 万彦, 坂倉 康夫
    2000 年 103 巻 9 号 p. 1001-1006
    発行日: 2000/09/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    慢性副鼻腔炎に対する治療として内視鏡下鼻内副鼻腔手術が導入されて以来,多くの施設に普及している.しかし,日常臨床においては良好な術後経過が得られない症例に遭遇する場合もあり,これらの難治性症例に対するその原因および対策についての検討が望まれる.今回我々は,内視鏡下鼻内副鼻腔手術を行った慢性副鼻腔炎症例につき,術前の重症度,および術後経過を,特に鼻茸合併症例を中心に検討した.対象は1993年1月から1997年12月までの5年間に三重大学耳鼻咽喉科で内視鏡下鼻内副鼻腔手術を行った17歳以上の慢性副鼻腔炎症例79例(男性50例,女性29例)で年齢は17歳から79歳(平均50.6歳)である.このうち両側手術例は62例,左右どちらかの片側手術例は17例であった.また,79例中初回手術例は54例で25例は過去に副鼻腔根本術,鼻内副鼻腔手術,鼻茸摘出術等の手術歴があった.なお,経過観察期間の平均は術後17.5ヵ月であった.術前の副鼻腔炎の重症度に対するStage分類はKennedyの分類を用いて検討し,手術対象となった症例はStage3が最も多かった.また,KennedyのStage分類は術後の鼻茸再発を予測するのに有効であるとは考えられず,diffuse polyposis病変や気管支喘息,アスピリン喘息合併症例に術後経過観察中に鼻茸の再発が多く認められた.
    今回の検討により,difuse polyposis病変を有するもの,気管支喘息アスピリン喘息合併例では特に念入りな術後の経過観察が必要であり,再発を認めた場合には早期に外来で鼻茸の摘除あるいは浮腫性粘膜の除去を行い,常にostiomeatal complex areaを開存させておくにとが重要であると考えられた.
  • 鈴木 立俊, 八尾 和雄, 岡本 牧人
    2000 年 103 巻 9 号 p. 1007-1014
    発行日: 2000/09/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    アレルギー性鼻炎の病態解明および治療効果の評価には,鼻粘膜中に浸潤している各腫細胞を観察することが一つの方法である.そこで通年性アレルギー性鼻炎の下甲介粘膜中の肥満腫胞に着目し,その細胞中に含まれるトリプターゼとキマーゼを酵業抗体二重染色法で分別しそれらの細胞浸潤の特徴を検討するとともに,トリクロール酢酸(TCA)による下甲介化学剤手術後の粘膜内細胞浸潤数を定量し,この治療法の有効性を示した.対象は通年性アレルギー性鼻炎と鼻中隔弯曲症を含併した症例で,十分な説明と納得の後,本人の希望に従って鼻中隔弯曲の凹側のみをTCAで治療したものの改善がみられなかった症例の内,再度の説明と本人の納得のもとに鼻中隔矯正術と下甲介切除術を行った15例の両側下甲介標本である.すなわち同一個体の非治療側を対照として治療側と比較を行った.結果は非治療側ではトリプターゼ単独陽性肥満細胞(MCT)は粘膜上皮基底膜側に多数存在し,特に杯細胞化した上皮層には密に存在した.また粘膜固有層の腺組織,血管周囲にも認められた.トリプターゼ•キマーゼ両陽性肥満細胞(MCTC)は粘膜固有層に多数認められ,粘膜上皮層にも散見された.TCA治療を受けた上皮層ではMCTの存在はわずかで,粘膜固有層中のMCTCは散在するのみであった.定量的結果は上皮層の肥満細胞数は,治療側で有意に減少していた(p<0.05).また治療側の固有層ではMCTおよびMCTC数それぞれが非治療側に比べ有意に減少していて(p<0.01),両者を合わせた肥満細胞数も治療側で有意に減少していた(p<0.05).
    以上よりアレルギー性鼻炎粘膜中の肥満細胞浸潤の特徴より,MCTはI型アレルギーの症状発現に第に関与し,MCTCはその後の組織修復に関与していると考えた.またこれらの細胞浸潤数に対する統計学的検討で,TCA治療が有効であると結論した.
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