日本耳鼻咽喉科学会会報
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105 巻 , 11 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 岡香 澄, 近松 一朗, 江浦 正郎, 桂 文裕, 湯本 英二, 徳永 英博
    2002 年 105 巻 11 号 p. 1109-1115
    発行日: 2002/11/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    最近5年間に当科で術前診断を目的として吸引細胞診(FNAB)を施行した大唾液腺疾患未治療例で,切開生検あるいは手術によって病理組織診断が確定した93症例(耳下腺69例,顎下腺24例)についてFNABの結果と病理組織診断を比較検討した.正診率は88.5%,敏感度は53.3%,特異度は95.8%であり,良性疾患に関してFNABは有用であると思われた.悪性腫瘍例の偽陰性は5例で扁平上皮癌,多形腺腫内癌腫,悪性リンパ腫,粘表皮癌低悪性型,腺房細胞癌の各1例であった.前2者の偽陰性は穿刺部位の不正確さによるものと考えられ,後3者では,穿刺部位,標本ともに問題はなかったが,細胞の異型性に乏しく,FNABにおける悪性の診断は困難であった.理学所見,画像所見から,特に悪性リンパ腫が疑われる症例ではFNABに依存せず,切開生検にて速やかに組織診断を行うべきと思われた.一方,偽陽性例は筋上皮腫の1例で,筋状構造を示し,内部に粘液様物質を含んでいたため,腺様嚢胞癌と診断された.FNAB所見での筋上皮腫と腺様嚢胞癌の鑑別に留意すべきと思われた.偽陰性を減らすべく,確実に病変部を穿刺すること,病歴,理学的所見,画像診断等,諸検査の結果とFNABの結果が一致しない場合,FNABの再検を検討する,または,術中迅速病理検査を行うことが重要であると思われた.
  • 村上 直子, 原 浩貴, 山下 裕司
    2002 年 105 巻 11 号 p. 1116-1120
    発行日: 2002/11/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    山口大学耳鼻咽喉科では睡眠時無呼吸,いびきを主訴に受診した患者に対して,1996年12月よりAlice3 v1.20を用いて終夜睡眠ポリソムノグラフィー(以下PSG)を行っている.今回,これまでにPSGを行った症例について検討した.
    1996年12月から2001年6月までにPSGを行った症例数は167症例であった.当科では閉塞型睡眠時無呼吸(Obstructive sleep apnea syndrome,以下OSAS)と診断された症例に対して,UPPP (Uvulo palato pharyngoplasty),下甲介切除術,鼻中隔矯正術,口腔内装具(スリープスプリント),Nasal CPAP (Nasal continu-ous positive airway pressure)などの治療を行っており,治療の効果判定の目的で再度PSGを行った症例が27例あった.
    それぞれの治療法について効果を検討した.外科的治療の効果は他施設の報告と同程度であった.口腔内装具では高い改善率が得られた.Nasal CPAPは長期受容率が低かった.今後,より高い治療効果を得るために,外科的治療と保存的治療の併用,症例に応じた治療法の選択が重要と考えられた.
  • 高橋 伸明
    2002 年 105 巻 11 号 p. 1121-1127
    発行日: 2002/11/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    (目的)末梢神経近位部の評価が可能であるF波を用いBell麻痺,Hunt症候群の回復過程におけるWaller変性後の神経再生について検討した.
    (対象)1999年4月~2000年10月までの間に当科を受診したSell麻痺,Hunt症候群で,麻痺発症後2週間以内にENoG (Electroneurography)最低値が0%に陥った(完全脱神経と考えられる)非治癒症例20例と健常者11例である.
    (方法)F波の測定は,顔面神経下顎縁枝を刺激しオトガイ筋よりF波を記録した.同時に,麻痺スコア(40点法)とENoGの測定も行った.検討項目をF波の最小潜時,最大潜時,平均潜時,20回の刺激におけるF波の出現頻度,麻痺スコア,ENoG値とし,それらの麻痺後の変化について健常群と比較し検討した.
    (結果)F波最小潜時は麻痺後経過群と健常群に有意差を認めなかった.F波最大潜時,平均潜時は麻痺後経過群で健常群と比べ有意に延長していた.F波の出現頻度は1年未満は正常と比較し有意差をもって低下するが,1年以降はほぼ健常群と同等であった.麻痺スコアは麻痺後6ヵ月以降に30点前後まで回復したが,正常まで回復することはなかった。ENoG値は経時的に回復を示したが,2年以降の長期を経ても50%前後であり正常まで回復することはなかった.
    (結論)麻痺後に再生した神経線維の多くは,正常と比較し伝導速度が遅延している.しかし,麻痺後に再生した神経線維の中には,正常と同等に速い伝導速度の神経線維も存在すると考えられた.
  • 渡邉 睦, 鹿野 真人
    2002 年 105 巻 11 号 p. 1128-1137
    発行日: 2002/11/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    目的:超選択的CDDP動注療法は原発巣制御に高い効果が認められている.臨床上,本療法で原発巣だけでなく頸部の転移リンパ節が縮小する症例を経験するが,頸部組織へのCDDPの移行について検討された報告はない.そこで動注されたCDDPの動態を基礎的に検討することを目的として本研究を行った.
    対象と方法:ラットを用いて動注法と静注法でのCDDP (Pt)の血中濃度動態,舌組織内濃度動態,左右別の頸部組織内濃度動態を比較検討した.動注法では左総頸動脈に,静注法では左外頸静脈に翼状針を刺入してCDDP(10mg/kg)を投与し,30分ごとに120分までPt濃度を測定した.頸部組織の採取は,頸部の軟部組織から顕微鏡下で筋肉,血管を除き,投与側(左),非投与側(右)に分けて行った.
    結果:血中Pt濃度は投与後から緩徐に減少し両群間に有意差を認めなかった.舌の組織内Pt濃度も経時的に緩徐に減少したが,投与後30分のPt濃度に両群間で有意差(p<0.05)を認めた.頸部組織内Pt濃度は,動注群の投与側のみが動注群非投与側や静注群より有意に(p<0.01)高濃度を示した.さらに,動注群投与側の頸部組織内Pt濃度は,投与後90分まで上昇し,静注群の減少と著しいtime lagを認めた.
    結論:動注群投与側の頸部組織でのCDDPの濃度動態から,標的臓器から頸部組織へ血行性ではなくリンパ行性にCDDPが移行する経路が存在することが推察された.このことから,従来,原発巣に対する治療法の域を出ないとされていた動注療法が所属リンパ節を含めた周囲組織に対しても効果的な治療法となりうる基礎的な根拠が示された.
  • 一條 宏明
    2002 年 105 巻 11 号 p. 1138-1142
    発行日: 2002/11/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    近年眼球運動の3次元的な解析方法が進歩し,眼振の回転軸を求めることが可能になった.それにより,頭位性めまい症などの末梢性眼振を解析し責任病巣を追求しようとする試みがなされている.その際に左右の後半規管および前半規管のなす解剖学的角度が重要な意味を持つ.MRI画像を用いてこめ角度を計測した.対象は,主に頭痛を訴え頭部MRIを撮影した50例(男21例,女29例,平均年齢53.6歳)である.軸位断のT2強調画像のMRI画像において後半規管,前半規管を確認し,左右の後半規管のなす角度(角P)ならびに左右の前半規管がなす角度(角A)を測定した,角Pの平均値±標準偏差は92.6±11.7度(最大値は120度,最小値は67度)角Aの平均値±標準偏差は76.1±10.4度(最大値は94度,最小値は50度)であった.さらに変動係数を計算すると,角Pで0.124,角Aで0.136と比較的大きく,ばらつきの大きな集団であった.左右の後半規管,前半規管のなす解剖学的角度は個人差が大きく,必ずしも90度の角をなしていないということが明らかとなった.したがって後半規管,前半規管ともに矢状面と45度の角度をなしているとは限らず,眼球運動解析の際にはこのことを考慮する必要がある.
  • 藤吉 達也, 後藤 享也, 塩盛 輝夫, 宇高 毅, 坂部 亜希子, 田邊 忠夫, 牧嶋 和見
    2002 年 105 巻 11 号 p. 1143-1146
    発行日: 2002/11/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    咽後膿瘍の脊髄硬膜外膿瘍合併例の報告は少ない.72歳女性,激しい後頸部痛を主訴とした.膿瘍は咽頭後壁から頸動脈間隙を経て上頸部に達していた.頸胸椎移行部硬膜外膿瘍はMRIにて判明した.化膿性脊椎炎はなく,膿が頸神経根に沿って後部硬膜外腔に波及したと推察された.咽後膿瘍は口蓋扁桃炎が原因と考えられたため,それを摘出してさらに膿瘍腔を開放したところ,硬膜外膿瘍も消失して治癒した.黄色ブドウ球菌(膿と扁桃組織)とミレリ連鎖球菌(扁桃組織)が検出された.文献報告例は7例のみで,うち4例が予後不良であった.頸部痛を訴える咽後膿瘍症例では化膿性脊椎炎とともに硬膜外膿瘍の合併も念頭に置く必要性がある.
  • 松本 直美
    2002 年 105 巻 11 号 p. 1147-1156
    発行日: 2002/11/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    本研究では,頭部X線規格写真計測法(セファロメトリー)による角度および距離計測を用い,閉塞性睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleep apnea syndrome: OSAS)に施行した口蓋垂口蓋咽頭形成術(uvulopalatopharyngoplasty: UPPP)の有効群と非有効群との間でこの計測値を比較し,手術適応を判断する材料となりうるか検討することを目的とした.
    対象は,術前後に終夜睡眠ポリソムノグラフィ検査(polysomnography: PSG)を施行したUPPP症例43例(男性42名,女性1名),コントロール群50例である.
    OSAS群全体とコントロール群と比較では,OSAS群は上顎の前突傾向や上顎下顎間の不調和などの形態学的特徴が明らかとなった.また,手術有効群,非有効群の北較では,Y-axis angle, Gonial angle, ANB, Go-Me, MPT (maximum palate thickness)などから,形態的特徴として小下顎で下顎角が大きく,上顎下顎間の不調和が存在する症例において軟口蓋厚が大きい場合,UPPPの有効性が高いと推測され,手術適応を判断する上で有用であるという結論に至った.
  • 松脇 由典, 柳 清, 中島 庸也, 森山 寛
    2002 年 105 巻 11 号 p. 1157-1165
    発行日: 2002/11/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    Allergic fungal sinusitis (AFS)は真菌に対するアレルギー炎症がその病態と
    考えられ,再発率が非常に高い難治性の副鼻腔真菌症と言われている.欧米では
    AFSの有病率は,手術に至った慢性副鼻腔炎症例の4~7%程度であると報告
    されているが,現在までのところ日本においては我々の報告した症例も含め5例
    報告されているのみであり,現時点では非常にまれな疾患であると言える.今回
    我々は日本人におけるAFSの有病率とその病態,診断法について調査研究すべ
    く,手術適応の慢性副鼻腔炎症例を対象に研究を行った.手術に至った慢性副鼻
    腔炎症例102例中,Bentらの診断基準の下,AFSと診断された症例は4例(3.9%)
    であり,欧米の報告よりもやや少ない傾向にあった.AFS症例4例の診断•治
    療•経過について報告する.またこの4例の内承諾の得られた2例に対し,それ
    ぞれの検出真菌に対する抗原誘発テストを施行し,即時相は陽性であった.IgE
    抗体を介するI型アレルギーが今回のAFSの病態の一部に関与している可能性
    が考えられた.
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