日本耳鼻咽喉科学会会報
Online ISSN : 1883-0854
Print ISSN : 0030-6622
ISSN-L : 0030-6622
113 巻, 3 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
総説
  • 中山 健夫
    2010 年 113 巻 3 号 p. 93-100
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/19
    ジャーナル フリー
    根拠に基づく医療 (EBM) は, 臨床的エビデンスと, 医療者の専門性と, 患者の価値観の統合により, より良い医療の提供を目指すものである. 「エビデンスをつくる」臨床研究は, 想定されるクエスチョンよって, 適切な疫学的研究デザインは異なる. 「ランダム化比較試験によるエビデンスが無ければEBMは実践できない」「ランダム化比較試験を行わないと臨床研究として認められない」という考えは誤解であり, それぞれの目的に沿った臨床研究の手法を採ること, 「現時点で利用可能な最良のエビデンス」を意思決定に慎重に用いることがEBMの基本である. 診療ガイドラインは, 「特定の臨床状況のもとで, 臨床家と患者の意思決定を支援する目的で, 系統的に作成された文書」と定義される. 診療ガイドラインは, エビデンスを現場に伝える役割を担い, エビデンス・診療ギャップの改善に役立つとともに, 患者と医療者のshared decision makingを進める基点となることが期待される.
原著
  • 久保田 彰, 古川 まどか, 藤田 芳史, 八木 宏章
    2010 年 113 巻 3 号 p. 101-109
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/19
    ジャーナル フリー
    根治切除可能な進行頭頸部扁平上皮癌に対する化学放射線同時併用療法 (CRT) の毒性および効果に関連する因子を検討した. stage IIIとIVの115例に対する放射線の中央値は66Gy (58-70) で, 化学療法は5FUの1,000mg/m2 を4日間の持続点滴とcisplatinの60mg/m2 の2コース同時併用を行った. grade 3以上の粘膜炎はN0が13%でN1-2は59%と有意差を認めた. 治療の完遂率はN0が87%, N1-2が82%で有意差はなかった. 経過観察期間の中央値は42カ月 (5.8-91) で3年生存率 (OS) は66%, 3年progression free survival率 (PFS) は55%であった. OSで有意差を認めたのはstage IIIの86%とIVの57%, T0-2の78%とT3-4の62%, N0-1の83%とN2の53%, adjuvant chemotherapy (nedaplatin/UFT) ありの77%となしの50%, 舌の33%と中咽頭の77%であった. PFSで有意差を認めたのは, T0-2の72%とT3-4の49%, CRの77%とPRの53%, 舌の22%と下咽頭の58%, 中咽頭の66%, 喉頭の53%であった. 多変量解析ではT3-4, N2, adjuvantなし, 舌がOS, PFSと有意に関連する独立した危険因子であった. 根治切除可能な進行頭頸部扁平上皮癌のCRTは有用である. adjuvant chemotherapyの追加でCRTの治療成績をさらに向上する可能性があるが, 舌癌は不良で他の治療を検討する必要がある.
  • 平位 知久, 福島 典之, 小野 邦彦, 羽嶋 正明, 片桐 佳明, 益田 慎
    2010 年 113 巻 3 号 p. 110-114
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/19
    ジャーナル フリー
    現在, 嚥下障害患者に対する食品の多くは, 食品本来の形, 風味が失われていることが多く, およそ食欲をかきたてるものではない. これに対し, 広島県立総合技術研究所食品工業技術センターにおいて開発された凍結含浸食品は, 食品本来の形, 風味を保ったまま, 硬さを制御する凍結含浸法という新しい技術によって開発された軟らかい食品である. 本研究では, この食品に造影剤を浸透させて嚥下造影検査を行い, 33%イオパミドール, ゼリー/ヨーグルトを用いた場合と比較検討した. その結果, ゼリー/ヨーグルトで誤嚥を認めない症例においては, 33%イオパミドール摂取時の誤嚥の有無にかかわらず, 凍結含浸食品で誤嚥を認めた症例はなかった. また, ゼリー/ヨーグルトに比較して, 凍結含浸食品の方が, やや残留を多く認める傾向にあった. したがって, 嚥下障害患者に対して, 嚥下造影による十分な評価を行えば, ゼリー/ヨーグルトに続く段階の食品として凍結含浸食品を導入可能であると考えた.
  • 藤田 芳史, 久保田 彰, 古川 まどか, 八木 宏章, 佃 守
    2010 年 113 巻 3 号 p. 115-122
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/19
    ジャーナル フリー
    過去11年間に当科で治療した耳下腺癌症例34例について検討した.T1/2/3/4aが5例/12/7/10, N0/1/2が25例/3/6, stage I/II/III/IVが5例/10/6/13であった. 病理組織型は, 多形腺腫由来癌が9例, 腺癌が8例の他, 計10種類の組織型を認めた. 同期間の良性腫瘍98例を含め, 穿刺吸引細胞診 (FNA) の有用性を検討したところ, 感度76.0%, 特異度95.4%, 良悪性の正診率91.1%であり, 過去の報告と同等であったが, 4例の偽陽性と, 6例の偽陰性を認め, FNAの結果のみで悪性腫瘍と判定し, 顔面神経の処置を決定するのは危険なことが判明した. 悪性腫瘍29例に手術を施行した. 顔面神経は可能な限り温存を試み, 15例で全5枝を温存した. 悪性腫瘍で, 顔面神経浸潤が疑われる症例, リンパ節転移陽性, 高悪性度の症例, 切除断端陽性の15症例に対して, 術後放射線照射を施行し, そのうち3例に再発を認めた. 手術不能例5例に対しては, 化学放射線同時併用療法または放射線単独照射を行ったが, 現在まで全例生存している. 5年overall survival (OS) は87.4%, 5年progression free survival (PFS) は71.4%であった. stage分類別5年PFSは, stage I/II: 91.7% (stage I: 100%, stage II: 87.5%), stage III/IV: 51.6% (stage III: 50%, stage IV: 47.9%) で, 両者の間には有意差が認められた. またN分類別5年PFSでも, N0: 86.2%, N+: 38.1% (N1: 66.7%, N2: 20.8%) で, 両者の間には有意差が認められた.
専門講座
feedback
Top