日本耳鼻咽喉科学会会報
Online ISSN : 1883-0854
Print ISSN : 0030-6622
ISSN-L : 0030-6622
74 巻, 12 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 立木 孝, 南 吉昇
    1971 年 74 巻 12 号 p. 1601-1607
    発行日: 1971/08/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    頭部打撲をともなわない鞭打ち損傷を受けその後に何らかの聴覚障害を訴えて当科を訪れた19症例について自覚症状を調査するとともに,(i)純音オージオメトリー,(ii)自記オージオメトリー,(iii)語音明瞭度検査,(iv)両耳合成能検査及び(v)各種平衡機能検査を施行し,次の成績を得た.
    (1)19例38耳の中に15例26耳の聴覚異常を検出した.
    (2)その障害部位を検討した結果,内耳障害5例,後迷路障害3例,その両者を合併するもの2例,不明5例という推定成績を得た.
    (3)障害の内容は頭部打撲によるものといろいろの点で類似しており,従つて鞭打ち損傷による聴覚障害の発生機転は,頭部打撲によるものとほとんど変らないと推論した.
  • 綿貫 幸三, 河本 和友, 片桐 主一
    1971 年 74 巻 12 号 p. 1608-1614
    発行日: 1971/08/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    1)目的:耳石器宮は球形のう及び卵形のう双方とも,振動,重力,直線加速度の感受器官と考えられているが,耳石の分布状態は,球形のう及び卵形のうにおいて差異が認められる.また耳石の形態及び分布状態は,岡一耳石斑内で一様でなく,耳石斑の部位により異なつた分布様式がみられる.本研究では,耳石分布をその部位的差異及び感覚上皮層との関連に重点を置いて報告した.
    2)実験方法:モルモットを用い,切片標本作製の固定には,燐酸緩衝3%グルタルデハイド(pH7.4)を用い,エポソ封入,トルイジンブルー染色が行なわれた.取出し標本の作製には2%オスミュウム酸固定を用い,耳石膜を耳石ごとスライドガラス上で乾燥し,投下光により光学顕微鏡的観察がなされた.
    3)結果:耳石結晶は,耳石斑辺縁部,Striola及び耳石斑湾入部では非常に小さく,大きさにあまり差が認められないが,その他の部分では,耳石層最下部で最も大きく,表面に行くにつれて小さくなつていた.耳石層辺縁部は斜面をなして終つているが,卵形のう斑では内側縁よりも外側縁で,球形のう斑では後方縁よりも前下方縁で辺縁部の斜面は短かつた.耳石層下部の主な耳石の大きさを比較すると,Pars Externa において Pars Internaにおけるより耳石に大きかつた.耳石層の厚さほ,一般にPars Externaにおいて Pars Internaにおけるより厚かつた.卵形のう斑Striolaにいては,耳石層は他の中心部におけるよりも薄すく取出し標本の観察で表面に窪みを形成していた.球形のう斑のStriolaにおいては,耳石層は厚く,取出し標本で中心部に出脈状の高まりが観察された.
  • 山本 直哉, 粟田口 省吾, 今 一郎, 橋本 弘茂
    1971 年 74 巻 12 号 p. 1615-1632
    発行日: 1971/08/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    内耳神経節の神経細胞はほとんどが髄鞘に囲まれた双極細胞で極めて特異的な存在である.しかし蛙の同神経節では80%が無髄細胞であると云う報告(Munzer)があるが,これは温血動物とは全く対照的な所見である.そこでこの事実を確かめるべく,われわれは蛙8脳神経節を超微レベルで観察し,以下の如き結果を得た.
    本神経節には大型の有髄細胞と小型の無髄細胞が認められたが,前者は一般の末梢神経節にみられるいわゆる明細胞に,又後者は暗細胞に一致した.
    小型暗細胞は神経周辺部に多く分布し,大型有髄細胞は中心部に多かつた.又両者の分布比はMunzerの指摘する如く前者が約80%を高めた.
    小型暗細胞は電顕的には更に一層の外套細胞のみの無髄神経細胞と,数層の外套細胞質より成る疎性髄鞘を有する細胞とに分けられた.両者共核周部には粗面小胞体•ribosome等のorganellaが密に存在し,細胞全体としては暗調を呈している.
    本細胞にはglycogen顆粒が多いこと,外套細胞に特有のvesicleが認められること等も,他の末梢神経節細胞とよく類似していることを示している.
    一方大型有髄明細胞の特徴は,有髄神経線維と同一緻密度のcompact myelinで外周が坂り巻かれていることである.又核周部は organellaが少なく,neurofilamentが多いので全般に明るい外見をみせている.更にこの有髄細胞は形態上の種々の特徴から,有髄神経線維との著しい類似性を思わせた.大型明細胞が髄鞘を付けていた事実は,明暗細胞の意義づけに対し新たな根拠を与えるものと考えられる.
    神経節における神経線維は中心部に太い有髄神経線維,それよりやや外方に細い有髄線維,周辺部には無髄神経線維が多く分布していた.小型暗細胞より突出した無髄線維は途中より髄鞘形成を示しているが,周辺部にみられる無髄線維の多くは自律神経性のものと思われた.
  • 猪 忠彦, 村上 泰, 行木 英生, 川原 夏子, 須藤 至, 中尾 紘
    1971 年 74 巻 12 号 p. 1627-1634
    発行日: 1971/08/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    鎮静剤 Droperidol と鎮痛剤 Pentazecine との組合せによる新しい静脈麻酔法である Neurole-ptanalgesia は,内視鏡下の検査,治療に対し非常に有用である.即ちその特長は(1)呼吸抑制がないので挿管が不要であり充分な視野が得られる(2)充分な安静が得られ,又,反射もかなり抑制されている(3)意識があるので発声•嚥下などの動作が可能であるの三点である.しかも問題となる副作用は殆どないので,短時間で済む Micro-examination や Micro-Surgery には有用と思われ,我々はかかる症例に対して,46年2月より7月までの間の35例にこの麻酔法を使用して良い結果を得たので報告する.
  • 西田 裕明
    1971 年 74 巻 12 号 p. 1631-1652
    発行日: 1971/08/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    耳鼻咽喉科領域において,瞳孔径の測定は幼児の聴力検査に聴性瞳孔反射が利用され,またメニエール病などの際に頭頸部自律神経支配の左右差をみるために瞳孔径左右差の観察がなされたほかにはほとんど検討されていない.
    著者は赤外線テレビ装置を使用し,一眼または両眼を同時に観察し得る瞳孔観察装置を開発し,各種疾患における瞳孔径の観察および各種の実験的刺激に対する瞳孔反射を観察し,耳鼻咽喉科領域における瞳孔径測定の意義を再検討する目的で本研究を行なつた.
    本研究は次の4つの項目について行った.
    (研究1)実験的局所刺激による瞳孔径左右差変動の観察:鼓室,鼻中隔および軟口蓋粘膜の一側にキシロカインを塗布,または注射などの操作を加えた際の瞳孔径の変動を左右同時に観察した結果,一側鼓室,鼻中隔および軟口蓋粘膜への操作によりいつれも高率に人工的に瞳孔径左右不同症を発現させることができた.
    (研究2)メニエール症候群における瞳孔径左右不同症の観察:メニエール症候群および対照として健康成人について,無操作時,いきこらえ,冷刺激および点眼などの操作を加えた際の瞳孔径の変動を左右同時に観察し比較した.その結果メニエール症候群では正常者群に比して瞳孔径左右差発現率が高く,とくに冷刺激,点眼などの操作を加えると推計学的にも有意の差がみられた.
    (研究3)回転刺激による瞳孔反射の観察:電動式回転椅子を用い,クプロメトリー方式による回転刺激を与え回転中および停止後の瞳孔径の変動を健康成人および家兎について観察した.また家兎には両側頸部交感神経切断,両側内耳破壊,アトロピン点眼などの操作を加えた際の瞳孔反射をも観察した.その結果,ヒトにおける回転停止後の瞳孔反射には散瞳型,縮瞳型,瞳孔動揺型の三つの反応バターンがみられ,散瞳型が最も多かつた.
    回転停止後散瞳を呈した家兎に両側頸部交感神経を切断すると,停止後縮瞳がみられ,また両側内耳を破壊すると停止後は何の変動もみられなかつた.停止後無反応とみとめられた正常家兎にアトロピンを点眼すると停止後散瞳がみられた.
    (研究4)嗅刺激による瞳孔反射の観察:嗅覚障害を訴えない健康成人に blast injection 法で酢酸アミルによる嗅刺激を与えた際の瞳孔反射を観察し,ついで同一被検者について音刺激(拍子木一回叩打)による瞳孔反射を観察し比較した.その結果,瞳孔反射には散瞳型,瞳孔動揺型,無反応型の三つの反応パターンがみられ,音刺激の場合と同様散瞳を呈したものが最も多く他は少数例であった.以上より耳鼻咽喉科領域においても瞳孔径の測定によつて(1)病巣の局在,進展範囲,病態の解析,(2)メニエール病の素因調査,鑑別診断,予後の判定,(3)聴覚,嗅覚,平衡機能検査への応用などに意義のある資料をうることがでぎる場合がしばしばあるものと考えた.
  • 動注法における制癌剤MDS併用経験
    竹山 勇, 安藤 良子, 勝見 祐介, 小津 雷助
    1971 年 74 巻 12 号 p. 1653-1664
    発行日: 1971/08/20
    公開日: 2008/07/31
    ジャーナル フリー
    目的:近年制癌剤の開発進歩に伴い,またその使用法として動注法が普及するにおよび頭頸部悪性腫瘍に対する治療成績の向上して来ていることは周知の通りである.
    しかし動注法を行うに際し,チューブ押入の困難例やチューブ内の閉塞,チューブの逸脱例に遭遇したり,また口内炎ないし口腔内びらんの発生などにより所期の目的を達し得ないという事態もしはしば見聞するところである.
    そこで私共は動注法の改良を試み,併せて口内炎などの防止に留意し,制癌剤を確実かつ十分な量を一定期間行うことによつて頭頸部悪性腫瘍の治療成績の向上を計らんとした.
    方法:薬剤として5-Fuを用い,併せて60Co照射も行った.5-Fuは最初2週間は週3回,以後は週2回とし,1回量250mg,総計20回をもつて1クールとし,60Coは1回200r,総計6000r照射しこれを基本治療とした.
    動注時の混合薬剤としてMDS1200mg,タチオン400mg,フラビタン10mgを混注し,動注開始時と終了時にそれぞれヘバリン1Aを注入し,one shot 法を行った.
    動注法として浅側頭動脈を利用したが,耳前部切開を比較的下方迄加え,顎部に入る直上部で押管した.押管チューブには蓋付きカットダウンチユーブNo.23を用いた.
    結果:腫瘍症例19例に動注法を行い,比較的多数にみられた上顎癌症例12例において,動注法ならびに60Co照射を完了したのちに,あるいは途中で手術を施行した4例中2例は広範囲な浸襲があり,術後2ケ月以内に死亡したが生存例2例では基本治療の効果は著しく,癌浸潤範囲も殆んど縮小し適確な手術をなし得ており,術後1年6ケ月においても再発はなく健在である.非手術例では著効,有効合せて8例中5例にみられ,不変2例は手術不能と判定した症例であつたが一時的には有効の状態が続いており,治療後1年以上の生存率は8例中6例(75%)であつた.
    これらの事から上顎癌治療としての動注法ならびに60co照射の同時療法はかなり主体性をもつた治療指針といえる.
    上咽頭癌に対しても著しい効果を示し,これまで難治の症例として取り扱われてきた上咽頭癌にも有用な治療法と思われた.
    注入薬剤にMDS,フラビタオン,タチオンを同時注入し副作用防止につとめたところ,全例において口内炎などは全く発生しなかつた.
  • 猪 初男
    1971 年 74 巻 12 号 p. 1661-1670
    発行日: 1971/08/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
  • 三吉 康郎
    1971 年 74 巻 12 号 p. 1671-1685
    発行日: 1971/08/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
feedback
Top