Saroidosisは,肺,眼,皮膚,唾液腺,全身のリンパ節,その他の組織に,類上皮細胞を主体とする肉芽腫を形成する原因不明の系統的疾患であると云われている.この内,唾液腺腫脹,ブドウ膜炎,脳神経麻痺,微熱等を伴った型は,所謂Heerfordt氏病,又はuveoparotidfeverと云われ,本邦での報告例は極めて少ない.最近当科に於て,肺門リンパ腺腫脹,ブドウ膜炎,唾液腺腫脹,顔面神経麻痺,微熱等を伴ない,しかも口乾燥症,乾燥性角結膜炎,血清蛋白異常等,所謂Sjogren症候群をも呈する興味ある症例を経験したので報告する.
猛例は47才,主婦.、昭和45年5帰18日,左顔面神経麻痺に気付き,4日後左耳下腺部に腫脹を来し,徐々に増大す.6月15日,更に右側耳下線部の腫脹を来し,半月後,同例の顔面神経麻痺が招来した.其頃から口内乾燥感,眼球充血,味覚障害が現われ,7月5日,某医より当科へ紹介された.
現症として,両側顔面神経麻痺(全枝),両側耳下腺の浸潤性腫脹,仮面様顔貌等が見られ,眼科受診で,両側ブドウ膜炎,乾燥性角結膜炎を指摘された.又内科的には,肺門部リンバ腺腫脹(BHL)を指摘されたが,Mantoux反応2000倍陰性,TB菌は検出されず.尚腋窩,股関節等のリンバ節腫大はなく波疹認められなかつた.その他一般検査では,難の低素性貧血,赤沈値亢(60mm/hr),7gl21.2.2%,CRP陽性,RA-test陽性,γG,γM増加等が異常所見として認められた.
唾液分泌機能検査では,中等度の障害を示し,唾液腺組織像では,正常の腺細胞は減少し,典型的な類上皮細胞と巨細胞の浸潤があつたが,乾酪化は見られなかつた.
Kveim抗原は,予研製のLot23を用いたが,この症例では陰性であつた.
以上の検査結果からSarcoidosisを疑い,Steroidを中心とした治療を開始し,約1ケ月後には軽度の左顔面神経麻痺とBHLを残すのみで,ブドウ膜炎はほとんど完治している.
尚当初見られた口内乾燥感も著しく軽快し,隈症状と共に自覚しない迄に至つている.以上Sazcoi-dosisとしての病変が,肺門リンパ節,唾液腺,顔面神経,眠等に現われ,しかもSjogren症候群を合併した興味ある症例を報告した.
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