日本耳鼻咽喉科学会会報
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102 巻, 6 号
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  • 当教室20年間の統計的観察
    柿本 晋吾, 岩井 大, 熊澤 博文, 中村 晶彦, 湯川 尚哉, 馬場 一泰, 朝子 幹也, 山下 敏夫
    1999 年 102 巻 6 号 p. 801-808
    発行日: 1999/06/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    耳下腺腫瘍は画像診断法の進歩や, 耳鼻咽喉科, 頭頸部外科医の耳下腺腫瘍に対する認識の向上などで, 近年増加傾向にある. 今回我々は, 当教室20年間の耳下腺腫瘤の変遷および臨床統計の検討を行った. 対象は1977年1月から1996年12月までに耳下腺腫瘤に対し外科的治療を施行された633例である. これを前期10年間と後期10年間に分けて検討した. 病理組織分類ではWarthin腫瘍の症例数が前期に比べ後期では増加傾向を示した. 一方mucoepidermoid carcinomaは以前の報告に比べ約4分の1の発生率であった. 腫瘤の存在部位としては, 良性疾患の場合浅葉に存在するものが多いが, 悪性疾患の場合両葉にまたがって存在するものが多く認められた. 随伴症状としては, 顔面神経麻痺や疼痛をきたしているものは, 悪性疾患に多く認められた. 術前の顔面神経麻痺は, 良性・悪性とも術後改善を認めなかった. 術後合併症としての顔面神経麻痺やFrey症候群は, 良性で17.8%, 悪性で18.3%であり, いずれも他の報告と比べ低率であった.
    悪性疾患の予後については, 1985年から1994年までの10年間の症例について検討した. 5年生存率は76.1%で他の報告と比べ良好であったが, 死亡症例がいずれもhigh grade malignancyであり, 今後これらの制御が5年生存率を向上させる要因であると推察した.
  • 予後因子の解析および治療法の評価
    冨田 俊樹, 藤井 正人, 今西 順久, 菅家 稔, 神崎 仁, 大野 芳裕, 徳丸 裕, 犬山 征夫
    1999 年 102 巻 6 号 p. 809-817
    発行日: 1999/06/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    (目的) 耳鼻咽喉科頭頸部領域に発生するI・II期非ホジキン悪性リンパ腫 (以下NHL) の臨床像の把握と今後の治療方針決定の参考とするため, その予後因子の解析および治療内容と成績に関する統計学的検討を試みた.
    (対象) 1981年から1996年に当科で治療を行った, 未治療の頭頸部原発のNHLで, Ann Arborの病期分類でI, II期の48例である.
    48例中男性は26例, 女性は22例で性差は認めなかった. 年齢は15歳から89歳までで, 平均57歳であった. 病期別ではI期が29例, II期が19例であった. 病巣部位別にみると, Waldeyer輪が最も多く25例, 鼻副鼻腔が13例, 頸部リンパ節のみが8例であった. その他は耳下腺1例と口腔底1例であった. 放射線療法のみ施行した症例が5例, 化学療法のみ施行した症例が8例, 化学療法と局所の放射線療法の併用療法を行った症例が35例であった.
    (方法) 単変量解析として背景因子別に粗累積生存率を算出し, Coxの比例ハザードモデルによる多変量解析により予後因子としての独立性およびハザード比を検討した. また治療法別に生存率を比較検討した.
    (結果) 全体の5年生存率は73.5%で, 単変量解析では (1) 年齢, (2) Stage, (3) lymphatic・extralymphaticの別が予後因子と考えられた. 多変量解析によりlymphatic・extralymphaticの別が独立した予後因子と判定された (p=0.0093). 治療内容別の検討では, 治療成績の統計学的な有意差は認められなかった.
    (結論) 今後の治療成績向上のためには, 予後不良因子であるextralymphaticに対する治療を強化する必要があると考えられた. またlymphatic NHLに対する化学療法単独治療の意義を今後慎重に検討していく必要があると思われた.
  • 術前, 術後の評価
    辻 富彦, 山口 展正, 濱田 幸雄, 三谷 幸恵, 青木 和博, 森山 寛
    1999 年 102 巻 6 号 p. 818-824
    発行日: 1999/06/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    鼓膜癒着症は, 難治性疾患でありその病因や病態がいまだ解明されていない. その病因の一つとして耳管機能不全の関与が指摘されている. しかしその耳管機能不全の実態についてはいまだ明らかでない. 今回, 我々は手術治療を施行した鼓膜癒着症48症例 (癒着性中耳炎24例, 癒着を伴う中耳真珠腫24例) の耳管機能について術前, 術後に評価を行い, 術後の鼓膜の状態との比較検討を加えた. 検査法としては術前は音響法, インピーダンス法の他, 動的鼓膜所見の観察を行い, 術後は加圧・減圧法, サッカリンテストを行った. 術前において動的鼓膜所見では57%, インピーダンス法では35%, 音響法では74%で耳管の開閉が認められたが, いずれの方法でもその開閉率は, 健常者の開閉率に比べて劣っていた. また音響法における耳管開閉持続時間は鼓膜癒着症症例では健常者に比べて有意に短縮していたが, 一部に著しい延長があり, 耳管の狭窄傾向と一部の開放型が混在していた. 一方, 術後の加圧・減圧法では90.9%で耳管の開閉が認められず, また線毛性排泄能は81.3%で不良であった. 術後, 鼓膜の再陥凹や再癒着を呈する不良例の中には一部に耳管機能の比較的良好な症例もみられた. 全面癒着例と後半部癒着例との間では明らかな差はいずれの方法でも認められなかった. 鼓室形成術術後の鼓膜, 教室の状態と耳管機能は一部に相関しないものもあり, 術中の粘膜の除去など他の要因も考慮する必要があると考えられた.
  • 浜本 誠, 氷見 徹夫, 村上 弦
    1999 年 102 巻 6 号 p. 825-834
    発行日: 1999/06/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    顔面神経窩アプローチによる人工内耳手術においては, 顔面神経および鼓索神経の損傷は絶対に避けねばならない. そのため顔面神経窩付近における両神経の走行を明らかにし, さらに正円窓窩との位置関係を調べることは人工内耳手術を行う上で参考になる. そこで今回われわれは26個の日本人側頭骨を用い, 手術顕微鏡下に乳突削開術および後鼓室開放術を実施するとともに, 側頭骨内の顔面神経および鼓索神経の全走行を追跡した. ピンゲージおよび針を用いて, 人工内耳電極挿入方向の外耳道後壁に対する角度も含め, 様々な計測を行った. 後鼓室開放術において顔面神経, 鼓索神経およびキヌタ骨を避けながら最大視野が得られるのは顔面神経第2膝部付近においてであった. また, その最大視野が得られる視軸は外耳道後壁よりも後方に角度をなしており, その先は正円窓窩よりもわずかに前方を向いているものが多かった. 蝸牛に電極を挿入する際には正円窓開大より, 直接岬角に開窓するほうが角度的には有利と考えられた. 92.3%の標本では正円窓窩と鼓索神経を結んだ線は, 外耳道後壁より前方を向いており, 人工内耳手術で正円窓窩を臨むとき鼓索神経が術野の障害になる前に外耳道後壁が障害となる可能性が高いと考えられた. 11.5%の標本では正円窓窩と顔面神経を結ぶ線は外耳道後壁よりも前方を向いており, 外耳道後壁を削開しなければ, 正円窓窩が確認できない手術困難例と考えられた. 顔面神経および鼓索神経の損傷を避けながらの後鼓室開放術至適部位を, 外側半規管隆起およびキヌタ骨短脚を基準にして考察した. また, 多くの解剖学的指標の中で術前の画像検査にて検討でき, しかも最大アプローチ幅および最大アプローチ幅の角度と相関する指標を抽出した.
  • 2年以上経過した4症例の検討
    東野 哲也, 稲葉 順子, 竹中 美香, 清水 謙祐, 森満 保, 小宗 静男
    1999 年 102 巻 6 号 p. 835-845
    発行日: 1999/06/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    宮崎医科大学耳鼻咽喉科で手術した人工中耳4症例について臨床経過を検討し, 難聴治療における人工中耳の有用性と問題点を検討した. 全例とも従来の鼓室形成術では聴力改善が十分でないと判断した術後耳で, 1994年9月から1996年10月に半植え込み型人工中耳手術を行った. 人工中耳適応の最終判定は局麻下術中振動聴力検査により行った. 術直後より良好な人工中耳聴力が維持されているのが2例, 人工中耳効果が術後半年以降改善したのが1例, 軽度の悪化を来したのが1例であった. 悪化傾向を示した1例は正常な位置に鼓膜を形成した外耳道保存鼓室形成術後例で, 形成鼓膜の内陥により鼓膜と振動子の接触による振動効率の低下が原因と考えられた. 他の3例は根治術後耳であったが, 一期的な人工中耳植え込みと外耳道閉鎖を行い, 良好な人工中耳聴力成績が得られた. したがって, 人工中耳振動子の可動性を長期維持する方策として意図的鼓膜浅在化が有効と考えられた. 全例とも現在, 優れた音質に満足して人工中耳を使用しており, 術後2~4年の観察期間内に骨導低下や中耳炎の再燃等は認められなかった. 以上の結果より, 人工中耳が鼓室形成術による聴力改善の限界を補う一つの有望な難聴治療法であることが確認された. 現時点では, 人工中耳の性能上, 骨導閾値50dB以内の症例に適応が限定されるが, 従来の聴力改善手術では術後の補聴器装用が避けられない混合性難聴症例に対する外科的治療法として人工中耳の役割が期待される.
  • 数量化理論による解析
    白石 君男, 江浦 陽一, 末田 尚之, 今村 明秀, 加藤 寿彦, 福與 和正, 曽田 豊二
    1999 年 102 巻 6 号 p. 846-852
    発行日: 1999/06/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    耳鳴の音印象としての耳鳴の高低感と清濁感に影響を及ぼす要因について, 数量化理論II類を用いて検討した. 標準耳鳴検査法1993を施行した, 一側性で1種類の耳鳴患者91名を対象とした. 次の結果が得られた.
    1) 耳鳴の高低感では, 耳鳴の周波数だけではなく, 年齢, 耳鳴音の清濁感や耳鳴のラウドネスも強い要因であった.
    2) 耳鳴の高低感を耳鳴の周波数に対応させると, 「高い」音では耳鳴の周波数が高く, 「低い」音には耳鳴の周波数が低く, 「どちらでもない」では耳鳴の周波数が中音域と考えられた. その他に, 耳鳴のラウドネスも複雑に関与している可能性が示唆された.
    3) 年齢によって耳鳴の高低感が変化し, 若年者では「高い」音が多く, 高齢者では「低い」音か「どちらでもない」に評価されていた.
    4) 耳鳴音の清濁感では, 検査音の種類だけではなく, 耳鳴の周波数, 耳鳴のラウドネスも強い要因であった.
    5) 耳鳴音が「澄んでいる」は, 耳鳴の周波数が高音域から中音域にあり, 耳鳴のラウドネスが比較的に小さいものであった.
    6) 耳鳴音が「濁っている」は, 耳鳴の周波数が低音域にあることや耳鳴検査音の種類が雑音であるときに評価されると考えられた.
    以上の結果は, 耳鳴の音色を耳鳴検査と対応させ評価する上で臨床的意義のあるものと考えられた.
  • その有用性と限界
    杉山 直美, 土井 勝美, 井脇 貴子, 山本 好一, 川島 貴之, 久保 武
    1999 年 102 巻 6 号 p. 853-857
    発行日: 1999/06/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    人工内耳手術を施行した46人の言語習得後失聴者において, プロモントリーテストの各パラメータ (域値 (T), ダイナミックレンジ (DR), 最短弁別幅 (GAP), 最短弁別時間差 (TDL) ) と, 術後3ヵ月および1年の言語聴取能 (母音, 子音, 単語, 文聴取能) との相関を統計学的に解析した.
    術後3ヵ月の子音および文聴取能は, 低周波数 (50, 100, 200Hz) 刺激でのDRと正の相関を示し, GAP20ms以下の症例は文聴取能が良好であった (P<0.05). 一方, 術後1年の言語聴取能との間には全く相関は認められず, 人工内耳言語聴取能を予測するという観点から, プロモントリーテストの限界が明らかとなった.
  • 扁桃周囲膿瘍
    野田 寛
    1999 年 102 巻 6 号 p. 858-861
    発行日: 1999/06/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
  • 藤田 信哉
    1999 年 102 巻 6 号 p. 862
    発行日: 1999/06/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
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