耳鳴の音印象としての耳鳴の高低感と清濁感に影響を及ぼす要因について, 数量化理論II類を用いて検討した. 標準耳鳴検査法1993を施行した, 一側性で1種類の耳鳴患者91名を対象とした. 次の結果が得られた.
1) 耳鳴の高低感では, 耳鳴の周波数だけではなく, 年齢, 耳鳴音の清濁感や耳鳴のラウドネスも強い要因であった.
2) 耳鳴の高低感を耳鳴の周波数に対応させると, 「高い」音では耳鳴の周波数が高く, 「低い」音には耳鳴の周波数が低く, 「どちらでもない」では耳鳴の周波数が中音域と考えられた. その他に, 耳鳴のラウドネスも複雑に関与している可能性が示唆された.
3) 年齢によって耳鳴の高低感が変化し, 若年者では「高い」音が多く, 高齢者では「低い」音か「どちらでもない」に評価されていた.
4) 耳鳴音の清濁感では, 検査音の種類だけではなく, 耳鳴の周波数, 耳鳴のラウドネスも強い要因であった.
5) 耳鳴音が「澄んでいる」は, 耳鳴の周波数が高音域から中音域にあり, 耳鳴のラウドネスが比較的に小さいものであった.
6) 耳鳴音が「濁っている」は, 耳鳴の周波数が低音域にあることや耳鳴検査音の種類が雑音であるときに評価されると考えられた.
以上の結果は, 耳鳴の音色を耳鳴検査と対応させ評価する上で臨床的意義のあるものと考えられた.
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