目的:聴力正常者,各種聴覚障害例(鼓膜穿孔のないもの),末梢性顔面神経麻痺例を対象にインピーダンスオージオメトリーをおこない,ルーチン検査として臨床に応用し得るか否かを検討した.
方法:インピーダンスメーターはelectro acoustic impedance bridge (Madsen ZO 70)を使用し,Tympanometry,音響インピーダソス測定,音響性アブミ骨筋反射測定の3者をおこなつた.本測定法では外耳道の気密性が重要な因子になるので,イアチップとして Balloon Catheter を用い,カフに空気を注入して外耳道を密栓した.
結果
1) Tympanometry は3つの型(A,B,C)に分類できた.中耳に障害がないと考えられる聴力正常耳,感音難聴例,顔面神経麻痺例はほぼA型を示した.伝音および混合難聴例では多くはB型ないしC型を示したが,耳硬化症例や耳小骨連鎖離断例はA型を示した.
2) 音響インピーダンス値は聴力正常耳,感音難聴例,顔面神経麻痺例ではほぼ1000~3500a.ohmを示した.一方伝音および混合難聴例では多くは4000a.ohm以上を示した.ただし耳小骨連鎖離断例では1000a.ohm以下であつた.
3) 音響性アブミ骨筋反射測定において,聴力正常耳は500~4000Hzの周波数で60~95 dB SL(平均約75 dB)の間に反射域値が検出できた.感音難聴例のうちレクルートメント陽性例では純音域値と筋反射域値との接近が認められたが,聴神経腫瘍例では純音聴力が比較的残存する例でもアブミ骨筋反射は検出されなかつた.伝音および混合難聴例では筋反射はほとんど検出されなかつた.純音域値よりも低い域値で筋反射反応が検出された例は詐病が疑われた.顔面神経麻痺例では発症初期には筋反射は検出されない例が多かつたが(88%),1ヵ月を経過すると大部分の例(88%)で筋反射反応を検出できた.
4) インピーダンスオージオメトリーは3つの測定結果を総合的に判定することより,中耳俵音障害の有無やその細別診断,他覚的レクルートメント検査,末梢性顔面神経麻痺の部位診断,詐聴の検出等臨床上他覚的聴力検査法として充分応用できる.
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