2000年1月から2008年12月までの9年間に当科で喉頭全摘出後の代用音声にProvox2
® を使用した40例を対象に, 会話能力と音声獲得率, 最長持続発声時間 (MPT), 交換頻度, 合併症の種類と頻度について検討した.
会話能力の評価は, 1例の評価不能例を除く39例で検討した. 発声良好群は29例74.4%, 発声可能群は7例17.9%, 発声不良群は2例5.1%, 発声不能群は1例2.6%であった. 発声良好群と発声可能群を音声獲得とすると, Provox2
® による音声獲得率は92.3%であった. また, 手術法別の発声良好群の割合は, 再建なしが81.8%, 空腸が50.0%, 大胸筋皮弁が75.0%であった. MPTは平均14.5秒 (8秒~28秒) であった. MPTは, 年齢, 放射線照射の有無, 原疾患, 咽頭再建の有無に影響を受けなかった.
症例1人当たりの交換間隔は, 最短9週, 最長74週 (17.0カ月) と個人差が大きく, 全症例の平均は25週 (5.8カ月) であった.
合併症は16例40.0%に認められた. 頻度の高い合併症は, プロテーシス周囲の肉芽形成と感染であった. その他, 誤嚥性肺炎, 瘻孔の拡大による漏れ, 交換困難,気管軟化症, 気管異物が認められた. また, 合併症以外に(1)コストの問題, (2)癌根治後も頻回の通院を要する問題, (3)シャント発声が可能にも関わらずほとんど使用しない症例の存在, などの問題点も痛感した.
Provox2
® によるシャント発声は症例を選ばず良好な音声が獲得できる一方, 合併症や管理上の問題点を考慮すると, その適応を判断するためには患者およびその生活, 家庭環境を含めた十分な理解が必要と思われる.
抄録全体を表示