日本耳鼻咽喉科学会会報
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113 巻, 11 号
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総説
  • 田渕 経司, 原 晃
    2010 年 113 巻 11 号 p. 831-837
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/05/28
    ジャーナル フリー
    グルココルチコイド製剤は急性感音難聴治療において頻用されている薬剤であるが, 急性感音難聴治療におけるグルココルチコイド製剤の効果についてはいまだ一定の見解が得られていない. 本総説ではグルココルチコイド製剤の蝸牛虚血性障害, 音響性障害に対する効果について, 実験動物を用いた検討から得られた近年の知見について概説した. 動物実験における検討からはグルココルチコイド製剤全身投与ではグルココルチコイド製剤の良好な内耳移行が認められ, 本薬剤は蝸牛虚血性障害, 音響性障害に対し, 保護効果を有することが確認されている. グルココルチコイド製剤は両障害において音を感受する蝸牛有毛細胞に関しても保護効果を有することが確認されており, その保護機序については, 細胞質内グルココルチコイド受容体を介するgenomic pathwayが関与することが示唆されている一方, 非特異的な保護作用であるnon-genomic pathwayを介する経路も存在することが推察される. 音響性障害における検討から得られた知見では, グルココルチコイド治療のtherapeutic time windowは障害受傷後比較的短いと考えられ, 受傷後早期の治療が肝要であると考えられた. グルココルチコイド製剤の急性感音難聴治療における使用にあたり, 動物実験から得られた知見は本治療の理解に重要であると考えられた.
原著
  • 寺田 友紀, 佐伯 暢生, 宇和 伸浩, 佐川 公介, 毛利 武士, 阪上 雅史
    2010 年 113 巻 11 号 p. 838-843
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/05/28
    ジャーナル フリー
    2000年1月から2008年12月までの9年間に当科で喉頭全摘出後の代用音声にProvox2® を使用した40例を対象に, 会話能力と音声獲得率, 最長持続発声時間 (MPT), 交換頻度, 合併症の種類と頻度について検討した.
    会話能力の評価は, 1例の評価不能例を除く39例で検討した. 発声良好群は29例74.4%, 発声可能群は7例17.9%, 発声不良群は2例5.1%, 発声不能群は1例2.6%であった. 発声良好群と発声可能群を音声獲得とすると, Provox2® による音声獲得率は92.3%であった. また, 手術法別の発声良好群の割合は, 再建なしが81.8%, 空腸が50.0%, 大胸筋皮弁が75.0%であった. MPTは平均14.5秒 (8秒~28秒) であった. MPTは, 年齢, 放射線照射の有無, 原疾患, 咽頭再建の有無に影響を受けなかった.
    症例1人当たりの交換間隔は, 最短9週, 最長74週 (17.0カ月) と個人差が大きく, 全症例の平均は25週 (5.8カ月) であった.
    合併症は16例40.0%に認められた. 頻度の高い合併症は, プロテーシス周囲の肉芽形成と感染であった. その他, 誤嚥性肺炎, 瘻孔の拡大による漏れ, 交換困難,気管軟化症, 気管異物が認められた. また, 合併症以外に(1)コストの問題, (2)癌根治後も頻回の通院を要する問題, (3)シャント発声が可能にも関わらずほとんど使用しない症例の存在, などの問題点も痛感した.
    Provox2® によるシャント発声は症例を選ばず良好な音声が獲得できる一方, 合併症や管理上の問題点を考慮すると, その適応を判断するためには患者およびその生活, 家庭環境を含めた十分な理解が必要と思われる.
  • 鈴木 淳, 小林 俊光
    2010 年 113 巻 11 号 p. 844-850
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/05/28
    ジャーナル フリー
    目的: 2009年におけるインターネット人口普及率は75.3%であり, 今後インターネット上での医療情報収集がますます進むと予想される. インターネット上には顔面神経麻痺に関するさまざまな情報が存在するが, それらを検討した報告はない. 今回, インターネット検索サイト (Google Japan, Yahoo! Japan, Google USA) にて「顔面神経麻痺」, 「facial palsy」「facial nerve paralysis」をキーワードに検索を行い, 上位50サイトについて検討を行った. 結果: 鍼灸院のサイトは日本語サイトの約40%と多数を占めた. 日本語サイトでは, 医師作成サイトや公共性の高いサイト (大学・学会・公共組織) の割合が英語サイトに比較し少なかった. 耳鼻咽喉科医以外が作成した日本語サイトでは, 中耳炎・耳下腺腫瘍・側頭骨腫瘍の記載率が少なかった. 医師作成サイトと鍼灸師作成サイトの比較では, 改善率, 改善時期, NET (nerve excitability test)・ENoG (Electroneuronography), ステロイド, 形成外科手術の各記載率について, 医師作成サイトが有意差をもって多かった. 結論: 十分な情報が記載された日本語サイトは少ない. 今後は公共性の高い組織から, 質の高い情報が発信されることが望まれる. 耳鼻咽喉科医は, インターネット上での情報提供により積極的に参加していくことが必要と考えられる.
  • 山崎 博司, 内藤 泰, 篠原 尚吾, 藤原 敬三, 菊地 正弘, 十名 洋介, 金沢 佑治, 栗原 理紗
    2010 年 113 巻 11 号 p. 851-855
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/05/28
    ジャーナル フリー
    悪性外耳道炎 (MEO: malignant external otitis) は主に高齢の糖尿病患者に発症する難治性の外耳道炎で, しばしば頭蓋底骨髄炎 (SBO: skull base osteomyelitis) を伴い致死的となる. 感染が重症化する一因として, 糖尿病や緑膿菌感染に起因する病変部位の血流障害が挙げられる. われわれは, 抗菌薬の静脈注射と外科的デブリードマン後も増悪してSBOを合併した2例のMEOに対し, 抗菌薬の局所濃度を高める目的で外頸動脈領域に抗菌薬の動脈注射 (動注) を施行した. 動注直後より症状は軽減し, 動注後さらに経静脈・経口抗菌薬投与を継続すると炎症は著明に改善して, 画像上も頭蓋底に軽度残存するのみとなった. 以上の結果から, 既存の治療に抵抗するMEOに対しては, 抗菌薬動注が有効な治療法であると考えられる.
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