日本耳鼻咽喉科学会会報
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112 巻, 11 号
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総説
  • 丹生 健一, 大月 直樹, 斎藤 幹, 長谷川 信吾, 土井 清司
    2009 年 112 巻 11 号 p. 735-738
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/01/26
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌治療における最新の医療技術について, 手術手技を中心に紹介した.
    Supracricoid Laryngectomyは輪状軟骨より上部の喉頭組織を甲状軟骨とともに一塊切除するもので, 進行癌に対する初回治療としても救済手術としても画期的な術式である. 誤嚥の問題が心配されるが, 根治性は高く, 従来の喉頭温存切除術と比べて術後音声も遜色ない.
    拡張型喉頭鏡で術野を確保し, ハイビジョン内視鏡によりモニターを見ながら腫瘍を切除する経口的喉頭・下咽頭部分切除術は, 鮮明な視野が得られ, 早期の声門上癌やNBI内視鏡の普及により急増してきた咽頭表在癌の切除に有望な治療法である. 専用の機器がない場合は, 鼻内手術用内視鏡を代用できる.
    化学放射線療法は, 原発巣に比べて頸部リンパ節転移への効果が乏しく, 原発巣のみ化学放射線療法での治癒を期待し, 頸部リンパ節転移については計画的に頸部郭清術を行うという治療戦略planned neck dissectionが本邦でも普及しつつある. 創傷治癒障害, 喉頭咽頭の浮腫, 嚥下障害などの問題があり, 手術の適応や時期, 郭清範囲の検討が今後の課題となっている.
    今や鼻副鼻腔炎の標準的手術方法となった内視鏡下手術は, 腫瘍性病変にも応用されるようになってきた. 主な対象は内反性乳頭腫などの良性腫瘍だが, 悪性腫瘍に対しても, 開頭手術に手術支援ナビゲーション・システムと鼻内内視鏡を併用することにより, 頭蓋底や眼窩内側の良好な視野が得られ, 顔面の皮膚切開も最小限にとどめることができ, 内視鏡支援下手術の効用は大きい. 今後, 前頭蓋底手術の標準的な手術手技となっていくと思われる.
原著
  • 齋藤 康一郎, 稲垣 康治, 長西 秀樹, 高岡 卓司, 磯貝 豊, 小川 郁
    2009 年 112 巻 11 号 p. 739-746
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/01/26
    ジャーナル フリー
    高周波スネアの利用は, 消化器内視鏡下ポリペクトミーにおいては日常の診療行為として普及しており, また膀胱病変や気管支病変に対する有用性も認知されている. しかしながら, 頭頸部領域への高周波スネアの応用は, ほとんど報告がない. われわれは2006年10月以来, 咽喉頭・頸部病変17症例に対して高周波スネアの利用を試み, 非常に有用であったので報告する.
    対象疾患には, 肉芽性病変, 乳頭腫, 嚢胞, 悪性腫瘍が, 存在部位としては喉頭, 中咽頭, 下咽頭, 気管孔が含まれた. また, 器具の使用は, 全身麻酔下, 局所麻酔下どちらでも可能であり, さらにスネアを通す経路としては, ファイバースコープあるいはビデオスコープ経由をメインとしたが, 内視鏡を通さない直視下にも使用可能であった. どの症例でも出血はほとんど認められず, 手技も容易で安全に施行可能で術後合併症もなく, 摘出断端と周囲の境界は明瞭であった. 高周波スネアは, 咽喉頭・頸部病変に対しても低侵襲で迅速に使用可能であり, 症例により有用な治療器具の一つとなり得ると思われた.
  • 森田 由香, 花澤 秀行, 植木 雄志, 高橋 姿
    2009 年 112 巻 11 号 p. 747-751
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/01/26
    ジャーナル フリー
    遺伝性血管浮腫は, C1インヒビター遺伝子の変異が原因で, 全身のさまざまな部位で限局性に浮腫を来す疾患である. 耳鼻咽喉科領域では, 口腔, 咽頭, 喉頭, 顔面に起こりうるが, 特に喉頭浮腫を来した場合は致命的になる.
    症例は26歳女性で, 10代の頃に咽喉頭浮腫で3回の入院歴がある. 今回呼吸困難で救急外来を受診した際, 頸胸部CTにて食道全長にわたる著しい腫脹と両側の胸水を認めた. C1インヒビター活性を測定したところ, 著明な低下が確認され, 発症10年以上の経過でようやく確定診断に至った. 比較的まれな疾患ではあるが, 特発性浮腫の鑑別診断として念頭に置くべきであると考えられた.
  • 井上 真規, 中川 千尋, 小倉 健二, 神尾 鋭, 佃 守
    2009 年 112 巻 11 号 p. 752-756
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/01/26
    ジャーナル フリー
    ランゲルハンス細胞組織球症 (Langerhans cell histiocytosis: LCH) は異常なランゲルハンス細胞が増殖する非常にまれな疾患である1). 今回われわれは1年前からの両難治性外耳道炎にて受診したLCHの症例を経験したので報告する. 本症例は, CT所見にて左側頭骨に骨破壊を伴う軟部組織陰影を認めた. 一方, 入院時の胸部単純X線で両肺野に多発網状陰影を認めたため経気管支肺生検を施行したところ, 病理組織所見でCD1a抗原陽性でありLCHと診断した. また他臓器の検索を行った結果, 骨, 皮膚, 肺, 下垂体, 甲状腺, リンパ節に病変を有するLCH多臓器多病変型と診断し, 治療目的で他院血液内科へ紹介となった. LCHはまれな疾患であるが難治性外耳道炎で画像所見にて骨破壊を認めた場合にはLCHも念頭に置く必要があると思われた.
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