頭頸部癌治療における最新の医療技術について, 手術手技を中心に紹介した.
Supracricoid Laryngectomyは輪状軟骨より上部の喉頭組織を甲状軟骨とともに一塊切除するもので, 進行癌に対する初回治療としても救済手術としても画期的な術式である. 誤嚥の問題が心配されるが, 根治性は高く, 従来の喉頭温存切除術と比べて術後音声も遜色ない.
拡張型喉頭鏡で術野を確保し, ハイビジョン内視鏡によりモニターを見ながら腫瘍を切除する経口的喉頭・下咽頭部分切除術は, 鮮明な視野が得られ, 早期の声門上癌やNBI内視鏡の普及により急増してきた咽頭表在癌の切除に有望な治療法である. 専用の機器がない場合は, 鼻内手術用内視鏡を代用できる.
化学放射線療法は, 原発巣に比べて頸部リンパ節転移への効果が乏しく, 原発巣のみ化学放射線療法での治癒を期待し, 頸部リンパ節転移については計画的に頸部郭清術を行うという治療戦略planned neck dissectionが本邦でも普及しつつある. 創傷治癒障害, 喉頭咽頭の浮腫, 嚥下障害などの問題があり, 手術の適応や時期, 郭清範囲の検討が今後の課題となっている.
今や鼻副鼻腔炎の標準的手術方法となった内視鏡下手術は, 腫瘍性病変にも応用されるようになってきた. 主な対象は内反性乳頭腫などの良性腫瘍だが, 悪性腫瘍に対しても, 開頭手術に手術支援ナビゲーション・システムと鼻内内視鏡を併用することにより, 頭蓋底や眼窩内側の良好な視野が得られ, 顔面の皮膚切開も最小限にとどめることができ, 内視鏡支援下手術の効用は大きい. 今後, 前頭蓋底手術の標準的な手術手技となっていくと思われる.
抄録全体を表示