高齢者頭頸部癌症例における背景因子の特徴や治療法の選択,治療による合併症などについて非高齢者群と比較対比して検討した.
検討対象は70歳以上の頭頸部癌一次症例121例である.70歳~79歳を高齢者群,80歳以上を超高齢者群に分類した.また比較対象群として50歳代の群(56例)についても検討した.
原発部位は舌 口腔および喉頭癌がともに28%と最も多かった.
併存全身疾患保有率は高齢者群74%,超高齢者群93%で,非高齢者群に比べ有意に高かった.内訳として高血圧,虚血性心疾患,呼吸障害,腎機能低下などが多かった.
治療は放射線治療と外科的治療が中心であった.周術期合併症の発生率は非高齢者群の56%に対し,高齢者•超高齢者群では48%であった.高齢者超高齢者群では特に心血管系合併症,誤嚥性肺炎,術後譫妄,腎障害が多かった.放射線治療における合併症発生率は非高齢者群14%,高齢者群27%であったが,超高齢者群では53%と高頻度で,粘膜障害による摂食不良,肺炎,脱水電解質異常が高率に見られた.
高齢者 超高齢者群においても根治治療が原則となるが,治療にあたっては個々の身体的•社会的活動性,治療意欲,臓器予備能力を正確に評価することが大切である.また,集学的治療を選択する機会の多い非高齢者群に比べ,より治療効果と全身状態への影響のバランスを考慮した治療法の選択が重要である.
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