日本耳鼻咽喉科学会会報
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97 巻, 4 号
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  • 木谷 伸治
    1994 年 97 巻 4 号 p. 645-653
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    1. モルモットを用いて逆行性顔面神経誘発電位(FEP)に関する基礎的問題を研究し以下のような結論を得た.
    1) 外耳道から記録されるAEPと顔面神経管上の種々の部位から記録されるAEPを比較したところ,潜時が一致したのは両者が最も近い位置にある錐体部付近の場合であった.
    2) 外耳道に記録電極を置き,顔面神経を中枢側から順に切断してAEPの波形変化を検討した.AEPの波形は,錐体部より中枢側切断では二相性であるが,末梢側切断では単相性であった.したがってAEPは錐体部付近の状態を最もよく反映するが,その近傍の状態をも反映し得るものであり,またその波形を分析することにより障害部位診断に利用することが可能である.
    3) 圧迫による側頭骨内顔神麻痺を作製後,一定の期間をおいてAEPとeEMGを同時に記録し比較検討した.AEPはeEMGより麻痺発症後早期に消失し,回復期には早期に再出現した.したがってAEPはeEMGより予後診断法として優れていると考えられた.
    2) 正常者ならびに側頭骨内顔神麻痺患者でAEPの記録を試みた.正常者では全例でAEPを記録できたが,麻痺患者では7例中2例でしか誘発できなかった.今後,発症直後から数日程度までの症例についての検討を重ねる必要があると思われた.本法は理論的には優れているが,臨床応用に際してはなお未解決の問題が残されている.
  • 松島 純一, 熊谷 雅彦, 高橋 国広, 三好 茂樹, 伊福 部達
    1994 年 97 巻 4 号 p. 654-660
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    患者に埋め込み式耳鳴抑制装置を使用することを前提として刺激電流伝送システムについて検討した.
    1. 耳鴫抑制効果が得られる最大電流量は100μAであった.
    2. 耳鳴抑制効果を得るためには,埋め込みコイルはチップコイルを4個使用するのが体外コイル側での負担の軽減につながることが分かった.
    3. 外来における岬角電気刺激の最適耳抑制周波数は,定電流回路では明らかな差はなかった.
    4. 信号伝送システムとして刺激周波数は30kHz近傍が最も効率良いと考えられた.
  • 松島 純一, 熊谷 雅彦, 高橋 国広, 酒井 昇, 犬山 征夫, 佐々木 幸弘, 三好 茂樹, 伊福 部達
    1994 年 97 巻 4 号 p. 661-667
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    両側慢性中耳炎により両側とも高度の混合難聴がある53歳女性に,耳鳴抑制装置を乳突洞に埋めた.それにより,耳鳴の在宅治療が可能になった.加えて,言葉の明瞭度の改善や気分の爽快感も得られた.言葉の明瞭度と耳鳴の改善は刺激と反対耳で起こったことから,本患者では中枢性の関与が考えられた.
  • 正常人の耳管機能
    山口 隆
    1994 年 97 巻 4 号 p. 668-673
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    4歳から74歳までの正常人165人(330耳)に対し耳管機能検査を行い,以下の結果を得た.
    1) 小児では嚥下による耳管開閉持続時間は8歳頃から増大し始め,11歳で成人の値とほぼ同値となった.バルサルバ法による耳管開放圧は年齢とともに上昇し,10歳で成人の値とほぼ同値となった.これらのことより小児の圧依存型の耳管機能は10~11歳で成人の嚥下運動型の成人の機能へ移行すると推定された.
    2) 成人では若年齢層と比較し,60歳以上で嚥下による耳管開閉持続時間は短縮し,50歳以上で耳管開放圧が上昇したことから,耳管機能の劣化が50歳以上で現れ始めると推定された.
  • オステオポンチンの発現
    阪上 雅史, 嶽村 貞治, 梅本 匡則, 久保 武
    1994 年 97 巻 4 号 p. 674-679
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    1. non-RI法によるin situハイブリダイゼーション法を内耳に導入し,RI法によるin situハイブリダイゼーション法よりも良好な結果を得た.
    2. 非コラーゲン骨基質蛋白であるオステオポンチン(OPN)の発現は,(1) イオンの産生•吸収に関係ある部位(血管条辺縁細胞,卵形嚢•三半規管の膨大部の暗細胞),(2) 球形嚢•卵形嚢•三半規管膨大部の感覚細胞,(3) ラセン神経節,にみられた.
    3. OPNに対する抗体を用いた免疫組織化学では,前庭では卵形嚢•球形嚢の耳石に強く反応がみられた.
    4. OPNが前庭感覚細胞で発現し,OPNの蛋白の局在が耳石でみられたことより,耳石の生成に前庭感覚細胞が関与している可能性が示唆された.
  • 吉田 雅文, 青柳 満喜, 牧嶋 和見
    1994 年 97 巻 4 号 p. 680-683
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    二つの異なった周波数の純音によりなる刺激音に対するCMを音響暴露前後で記録し,CMの各周波数成分に及ぼす音響暴露の影響を観察した.その結果,CMの刺激周波数での成分は比較的保たれるのに対し,2f1-f2の周波数における歪成分は音響暴露により著明に抑制され,ことに蝸牛の能動的音受容機構と密接な関連を持つとされる55dB以下の低い刺激に対する歪成分がノイズレベル以下に低下することが判明した.したがって,音響暴露により蝸牛のactive-processが障害ないしは抑制されていると結論した.また,こうした低刺激レベルでのCM歪成分の出力低下は,比較的軽度の暴露条件においても顕著であったことから,蝸牛"active process"は音響暴露に対して最も影響を受けやすい部分であり,その音響による障害はTTSやPTSの成因と密接な関連を持つものと考えられた.
  • 崎浜 教之
    1994 年 97 巻 4 号 p. 684-687
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    1) 蛍光眼底造影検査用の造影剤であるフルオレサイトを正常家兎に静注し,脳神経根部の血管透過性を検討した。
    2) 動眼神経では海綿静脈洞部より末梢側に,顔面神経では内耳道遠位部より末梢側に蛍光がみられ,三叉神経,舌咽神経,迷走神経などは神経節より末梢側で蛍光がみられたが,嗅神経,視神経,聴神経には蛍光がみられなかった.その他の脳神経では神経が細く蛍光は確認できなかった.
    3) 組織学的には,蛍光の見られた部位の神経外膜や神経周膜に強く蛍光が見られた.神経内膜にも蛍光がみられたが,その程度は弱かった.神経線維内には蛍光は認められなかった.また,神経節では,節細胞や細胞間結合織にも蛍光が観察された.
    4) 神経根部におけるフルオレサイトの透過性の移行部は,神経の支持細胞がシュワン細胞から神経膠細胞に変わる部位(glial-neurilemmal junction)よりも末梢側に位置しており,脳神経が硬膜,クモ腰を通過する部位と思われた.
    5) フルオレサイトの家兎の脳神経への分布がみられたことより,Gd-DTPAの同部位への分布が示唆され,このため造影MRIにて正常な顔面神経や三叉神経にも造影効果がみられるのではないかと思われた.
  • 佐脇 正之, 服部 〓
    1994 年 97 巻 4 号 p. 688-695
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    1. 聴力正常成人において誘発耳音響放射(EOAE)を指標としたforward maskingを測定した.
    2. 条件音を一定音圧以上に大きくすると音圧の増大に伴いEOAEの振幅が減少し抑圧が認められた.
    3. 正常例ではアブミ骨筋反射(SR)閾値付近で抑圧曲線の傾きが急峻となり,SRの影響が認められた.一方,SRのない顔面神経麻痺症例では傾きの変化は認められなかった.
    4. SR閾値以下の強さの条件音を用いる場合,条件音の持続時間を一定以上に長くすると抑圧が認められ,その抑圧量はほぼ一定であった.また,2音の間隔(ΔT)を一定以上に短くすると抑圧が認められ,ΔTを短くするに従い抑圧は大きくなった.
    5. forward maskingによるEOAE抑圧の機序として,オリーブ蝸牛束,short-term adaptatiton,及びlateral inhibitionの関与が示唆された.
  • 北奥 恵之, 山本 俊宏, 成尾 一彦, 松永 喬
    1994 年 97 巻 4 号 p. 696-702
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    1. 双極刺激電極を用いた電気味覚刺激を警告刺激とし,音刺激を命令刺激としたCNVを予告法で測定した.電極は自作の固定器を用いて舌にゆるやかに固定した.
    2. 従来から行われている単極陽極刺激による電気味覚検査の閾値の平均は-4.2±3.8dB,双極刺激電極による持続時間100msecの刺激では0±3.9dB,持続時間500msecの刺激では-1.4±2.9dBとなって有意差があった.しかし,有意差はあるものの持続時間500msecの方が従来からの電気味覚検査の閾値に近く,持続時間500msecの刺激は閾値の点で有用であった.
    3. CNVの出現は10例すべてに認められたが,Czでの測定であったので後期成分が主であった.
    4. 40μAの警告によるP300の出現は4例に認められた.P300は持続時間100msecの方が明瞭で,500msecでは幅が広くなってCNVとの境界がわかりづらくなった.持続時間100msecの刺激はP300の明瞭度の点で有用であった.
    6. CNV測定のためには注意力の持続が必要となるため,検査時間短縮の工夫が必要であった.
    7. CNVとP300を組み合わせれば味覚検査を客観的に評価できる可能性が高まる.
  • 一側前庭神経切断カエルの反応
    池田 卓生, 関谷 透, 木戸 利成, 金谷 浩一郎, 田原 哲也, 原 浩貴
    1994 年 97 巻 4 号 p. 703-708
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    今回我々は,北海道上砂川町にある地下無重力実験センター(Japan Microgravity Center: JAMIC)を利用する機会を得たので,これが身体平衡系の研究における新しい実験手段として有用であるかを検討する目的で,平衡系実験セット(姿勢•行動観察用及び筋電図記録用)を作製し,カエルを用いた予備実験を行った.
    1) 姿勢•行動観察では,無処置群において頭部が背屈し,四肢が伸展するという特徴的な姿勢が観察できた.また前庭神経切断群では,落下前の姿勢変化はそのまま持続し,障害側を下にする回転運動が見られた.
    2) 筋電図では,落下直後に前庭脊髄反射のためと考えられる筋活動の亢進を認めた.また前庭神経切断例では,術側の潜時が,やや遅延した.
    3) カエルは,落下実験施設を利用した平衡系実験の実験動物として適当である.
    4) 微小重力暴露時の身体平衡系の研究において,落下実験施設は非常に有用な実験手段である.
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