1) 蛍光眼底造影検査用の造影剤であるフルオレサイトを正常家兎に静注し,脳神経根部の血管透過性を検討した。
2) 動眼神経では海綿静脈洞部より末梢側に,顔面神経では内耳道遠位部より末梢側に蛍光がみられ,三叉神経,舌咽神経,迷走神経などは神経節より末梢側で蛍光がみられたが,嗅神経,視神経,聴神経には蛍光がみられなかった.その他の脳神経では神経が細く蛍光は確認できなかった.
3) 組織学的には,蛍光の見られた部位の神経外膜や神経周膜に強く蛍光が見られた.神経内膜にも蛍光がみられたが,その程度は弱かった.神経線維内には蛍光は認められなかった.また,神経節では,節細胞や細胞間結合織にも蛍光が観察された.
4) 神経根部におけるフルオレサイトの透過性の移行部は,神経の支持細胞がシュワン細胞から神経膠細胞に変わる部位(glial-neurilemmal junction)よりも末梢側に位置しており,脳神経が硬膜,クモ腰を通過する部位と思われた.
5) フルオレサイトの家兎の脳神経への分布がみられたことより,Gd-DTPAの同部位への分布が示唆され,このため造影MRIにて正常な顔面神経や三叉神経にも造影効果がみられるのではないかと思われた.
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