日本耳鼻咽喉科学会会報
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106 巻, 6 号
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  • 特に腺癌症例を中心とした臨床的考察
    中村 有希, 井口 広義, 高山 雅裕, 楠木 誠, 角南 貴司子, 山根 英雄
    2003 年 106 巻 6 号 p. 671-677
    発行日: 2003/06/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    1. 1992年1月から2001年12月までの過去10年間に当科で経験した8例の原発不明頸部転移癌症例について臨床的検討を行い,さらに原発不明頸部転移腺癌に主眼を置き文献的考察を行った.
    2. 今回の検討における原発不明頸部転移癌の頻度は,頭頸部悪性腫瘍総症例数の0.93%で,諸家の報告と合致するものであった.
    3. 組織型別には半数を扁平上皮癌が占め,部位別では,上および中深頸部が過半数を占めた.N分類では,N2症例が5例,N3症例が3例であり,治療として手術療法を行った3例のN2症例に非担癌生存が得られた.
    4. 文献的に,原発不明頸部転移腺癌は,後に原発巣が特定された場合,その原発巣は鎖骨下領域に存在することが多く(65.0%),一般的に予後不良と報告されている.原発不明頸部転移腺癌の治療法に統一された方法はないようであるが,可能な限り積極的に手術療法を中心とした集学的治療を行い,頸部局所制御に努めることが予後の改善に寄与すると考えられる.
  • 和田 伊佐雄, 加瀬 康弘, 飯沼 壽孝
    2003 年 106 巻 6 号 p. 678-684
    発行日: 2003/06/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    外耳道異物は,日常外来でしばしば遭遇する疾患である.病態が単純であり診断も容易であるためか臨床像の分析あるいは多数例に基づく臨床統計的な検討についての報告が少ない.
    本研究では,1986年1月から2001年12月までの16年間に埼玉医科大学•耳鼻咽喉科を初診し病歴の記載が明らかで診断が確定した外耳道異物509症例の臨床像につき検討し.臨床統計的検討を行った.
    16年間の外耳道異物症例は,509症例でこの間の新患患者数は68,579名であり,外耳道異物が新患患者に対して占める割合は,0.74%であった.
    異物症例の受診時間帯をみると時間内を受診したのは161症例(31.6%),時間外は,348症例(68.4%)であった.
    性別では,男性307症例(60.3%),女性202症例(39.7%)であった.
    左右別では,右側251症例(49.3%)左側241症例(47.3%),両側4症例(0.8%)であった.
    受診月別にみると月平均42.4症例で,7月,8月と気温の高い時期に多く認めた.
    年齢分布では,平均年齢25.4歳で生後1カ月の乳児から90歳までの各年齢層に認めた.年代別でみると9歳以下の小児が182症例(35.8%)で最も多かった.
    種類別にみると,有生物206症例(40.5%),無生物は288症例(56.6%)であった.
    また,受診月別平均気温と有生物の症例数の間には極めて強い相関関係が認められた.
  • 小川 浩司
    2003 年 106 巻 6 号 p. 685-691
    発行日: 2003/06/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    滲出性中耳炎55症例に風船を使った自己通気(鼻吹き風船)治療を行い次の結果を得た.
    1. 中耳換気チューブの既往歴のない小児27例49耳の87%,成人16例23耳の65%が著効以上の成績を示した.鼻吹き風船で治癒した小児の26%,成人の31%が14日以内に,また小児の24%は15日から21日までに治っていた.
    2. 3年以上治療し換気チューブの既往歴がある小児7例中5例,成人5例中1例が鼻吹き風船によって治癒した.引き続き治療が必要だった6例中2例はアレルギー性鼻炎を合併していて,換気チューブ留置により貯留液が消失しても音響耳管法による耳管開口が認められず,成人2例は喘息,副鼻腔炎を合併した好酸球性中耳炎であった.中耳や耳管粘膜病変が強い場合は受動的換気だけでは治らない.また,他の2例は自己通気を決められた回数どおりに続けられなかった症例で,通気回数と継続が結果を左右するものと考える.
    3. 風船を膨らませるとき鼻咽腔にかかる圧力は40~48mmHgでポリッツェル送気圧の40~60mmHgやユニット付き送気管の60~100mmHgに比べ低く,より安全なものと思われる.当院ではこれまで圧外傷等の副作用はなかった.
  • 竹井 慎, 上野 ゆみ, 與田 順一, 田村 真司, 保富 宗城, 藤原 啓次, 九鬼 清典, 山中 昇
    2003 年 106 巻 6 号 p. 692-699
    発行日: 2003/06/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌を対象とし,βカテニンの過剰蓄積とWntシグナル経路の活性化による癌化の関与を検討するため,βカテニンの過剰蓄積について免疫組織学的手法で,βカテニン,APCの遺伝子変異をダイレクトシークエンス法で検討した.
    βカテニンの過剰発現は49例中12例(24.5%)に認められ,正常発現群に比べ,過剰発現群の予後が不良であることが示され,さらに過剰発現群において局所再発の頻度が高い傾向が認められた.
    APCの遺伝子異常が15例中1例に認められたが,βカテニンexon3領域の遺伝子変異は認められず,頭頸部領域においてAPC,βカテニンの遺伝子変異の関与の頻度は低く,βカテニン過剰蓄積の原因として,APC,βカテニン以外の因子の関与が推測された.
  • 星川 広史, 後藤 理恵子, 唐木 將行, 宮部 和徳, 森 望
    2003 年 106 巻 6 号 p. 700-704
    発行日: 2003/06/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    1985年8月から2001年7月の間に香川医科大学耳鼻咽喉科で折り畳み咽頭弁形成術を行った鼻咽腔機能閉鎖不全症例51例の検討を行った.
    原疾患の内訳は,口蓋裂術後症例が27例(53%),粘膜下口蓋裂症例が8例(16%),先天性鼻咽腔閉鎖不全症例が16例(31%)であった.他部位の先天異常との合併は,口蓋裂症例で1%,粘膜下口蓋裂症例で25%,先天性鼻咽腔閉鎖不全症例で31%であった.発達遅滞を伴った割合は,口蓋裂症例で15%,粘膜下口蓋裂症例で38%,先天性鼻咽腔閉鎖不全症例で56%であり,特に先天性鼻咽腔閉鎖不全症例で高い傾向にあった.
    手術成績の検討は1年以上経過観察できた48例について行い,術前に重度の不全と診断された症例39例中34例(87%)で術後の鼻漏出が消失した.軽度不全の9例中8例(89%)で鼻漏出が消失し,ブローイング検査による判定では両群の間に差を認めなかった.会語レベルでの構音改善度を比較すると,軽度不全症例では78%に正常構音の獲得がみられたのに対し,重度不全例では46%の改善に留まった.疾患別では粘膜下口蓋裂症例で会話レベルの改善度が高く(86%),先天性鼻咽腔不全症例では発達遅滞のあった症例で会話レベルの改善度が低かった.術後の予後因子となる要素の詳細な検討が今後必要と思われる.
  • 白崎 英明, 成田 慎一郎, 渡邊 一正, 金泉 悦子, 佐藤 純, 今野 信宏, 小笠 原英樹, 山本 哲夫, 朝倉 光司, 形浦 昭克, ...
    2003 年 106 巻 6 号 p. 705-709
    発行日: 2003/06/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    前年の2月と7月の気象条件とシラカバ花粉の年間総飛散数には,関連が存在することが確認され,スギ花粉と同様な飛散花粉数予測が可能であることを示した.今後も毎年のデータを積み重ね,より精度の高い予測式の確立が必要であると考えられた.
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