(目的) 聴覚系および温度眼振反応の加齢変化については今までにもいくつかの報告があるが, まだ統一した見解が得られておらず, その両者の関係も明らかでない. そこで, 同一被験者で温度眼振反応と純音聴力の加齢変化について調べ, その両者間の関係を調べた.
(対象および方法) 今回, 年齢24歳から84歳までの神経耳科学的に異常のない健康なボランティア12人 (24耳), 自覚的に難聴およびめまいのない耳鳴患者74人 (148耳) の合計86人 (172耳) を対象とし, 温度刺激検査 (20℃冷水5ml 10秒間注水20秒間刺激) および純音聴力検査を行い, 年齢別, 性別に温度眼振反応の最大緩徐相速度 (以下SPEVと略す) と高周波域平均聴力レベルの平均値を調べ, それぞれの加齢変化について調べるとともに, その両者間の関係について検討した. また, SPEVおよび聴力の各年齢層間あるいは男女間の有意差検定には, Wilcoxon testを行い, SPEVと高周波域の純音聴力との関係についてはPearsonの相関係数を求めた.
(結果) 1) 温度眼振反応の最大緩徐相速度 (SPEV) は, 高齢まではほとんど変化せず, 男性では65歳以降, 女性では75歳以降有意に低下し, 男性のほうが女性より早く加齢変化がみられた. 2) 高周波域の聴力レベルは, 50歳以降急速に低下するが75歳以降緩慢に推移する. 65歳以降は, 男性のほうが女性より有意に聴力が低下していた. 3) SPEVと高周波域聴力との間には, 加齢変化において弱いながらも相関関係が認められた.
(結論) 1) SPEVがかなりの高齢まで変化しないことから, 半規管の加齢変化は少ないと推察された. 2) SPEVも高周波聴力も65歳以降, 男性のほうが女性より加齢変化が進んでいた. 3) 聴力とSPEVの加齢変化に相関性が認められた.
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