日本耳鼻咽喉科学会会報
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114 巻, 5 号
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総説
  • 玉利 真由美, 冨田 かおり, 広田 朝光
    2011 年 114 巻 5 号 p. 477-484
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/10
    ジャーナル フリー
    人口の1%以上の頻度で存在する遺伝暗号の違いは遺伝子多型と定義され, それらが病気へのかかりやすさや, 重症度, 薬剤の効果等に関与していると考えられている. 遺伝子多型の代表的なものが一塩基多型 (single nucleotide polymorphism: SNP) であり, その情報基盤の整備と高速大量SNPsタイピング技術の向上により, 遺伝子多型解析が迅速に行われるようになってきた. その結果, 環境と遺伝要因とが共同して発症に関与する機構が分子レベルで明らかになりつつある. 本稿では遺伝子多型を用いた病態解析について, その手法, および疾患関連遺伝子の最近の知見について述べる.
  • 木股 敬裕
    2011 年 114 巻 5 号 p. 485-490
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/10
    ジャーナル フリー
    頭頸部はご存じのように解剖学的に非常に複雑でありながら, 最も人間のQOLにとって大切な機能を有している領域である. この魅力的な領域であるにもかかわらず, 多くの患者に良い医療を提供できるまでの医療人の充足とその整備が進んでいないのを現場の再建外科医として感じている. 今回, 再建外科医の立場から期待する点は,
    1) 耳鼻咽喉科学会に期待すること
    ・多様化する治療内容から標準的治療指針の確立を
    ・頭頸部癌に携わる職制の整備を
    ・各病院の分化度を上げる
    ・国民・患者に対して, 頭頸部癌の情報提供を積極的に
    2) 各病院の耳鼻咽喉科・頭頸部外科Unitに期待すること
    ・チーム医療の推進を
    ・周辺施設や自宅などとの連携医療システムの確立を
    ・患者に対する疾患と治療に関する情報提供を
    3) 耳鼻咽喉科・頭頸部外科医師に期待すること
    ・基礎的な外科技術からより高度な外科技術の習得を
    ・長期的合併症を抑えるために放射線照射は最小限に
    ・形成再建外科医師に術後の短期的長期的結果の情報提供を
    である. さらに4) 世界に発信するような意識と戦略を, 耳鼻咽喉科学会全体と会員の皆さまに持っていただきたい. そして, 若い医師達がこの非常に魅力的な領域に興味を持ち, 頭頸部外科医師がどんどん増え, 全国どこでも患者に良い医療を提供できるような, さらに素晴らしい体制になることを願ってやまない.
  • 渡嘉敷 亮二, 平松 宏之, 本橋 玲, 品田 恵梨子, 井上 瞬
    2011 年 114 巻 5 号 p. 491-497
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/10
    ジャーナル フリー
    音声障害の診断と治療は特に見た目の異常がない場合, 耳鼻咽喉科医にまだ広く知られているとはいえない. 本稿では診断と治療に関して一般耳鼻咽喉科医にはなじみが薄いもの, と同時に新しい知見について紹介する. 声帯に異常が見られない音声障害には, 機能性発声障害や痙攣性発声障害がある. 前者の治療には積極的に耳鼻咽喉科医がかかわるべきもので, 見た目の異常がないことで治療不要との判断をしてはならない. 後者は声帯筋の局所性ジストニアであり, 的確な治療により改善するため, 疾患についての認識と理解が必要である. 老人性声帯萎縮による嗄声は, 日常生活において乾燥の回避や唾液分泌を促進する工夫, 声を積極的に使うことで改善へ向かう. 音声障害の外科的治療は声帯ポリープや声帯麻痺など疾患によりその方法も多彩であるが, いずれにおいても内視鏡の進歩により外来での日帰り手術の適応が広がった. 声帯ポリープ摘出術や声帯萎縮・片側声帯麻痺に対する声帯内注入術は, 喉頭の麻酔を十分に行えば, 内視鏡下での微細な手術が外来で可能である. ただし片側声帯麻痺に対しては, 確実に良い声を得るためには入院での披裂軟骨内転術が望ましい. 音声障害は特徴的な声や声帯の動きといった動的情報が診断に重要である. われわれはweb上でホームページを立ち上げ音声障害に関する情報を発信している.
原著
  • 石川 正昭, 平海 晴一, 山本 典生, 坂本 達則, 金丸 眞一, 伊藤 壽一
    2011 年 114 巻 5 号 p. 498-504
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/10
    ジャーナル フリー
    人工内耳手術が普及し, 多くの患者がその恩恵を問題なく享受できている. 一方で電極の入れ替えを必要とする症例も徐々に増えつつある. 今回, 最近23年間の京都大学附属病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科における人工内耳手術症例において電極の入れ替えを施行した症例について検討した. 人工内耳手術を行った252名 (小児129名, 成人123名) のうち電極の入れ替えを要した症例は小児6名, 成人4名であり, 初回手術から入れ替え手術までの期間は小児で平均50.3カ月, 成人で平均89カ月であった. 入れ替えの原因として多かったのは小児ではHard failureと, 感染と人工内耳機器本体の皮膚への露出のそれぞれ2名 (小児全体の33%), 成人ではSoft failureの3名 (成人全体の75%) であった. 電極の再挿入に関して全電極を埋め込むことができた症例は8名 (80%) であったが, 再挿入に難渋した症例も存在した. 母音, 子音, 文節における術後の語音聴取能はいずれも入れ替えによる悪化を認めなかった. 人工内耳手術における電極の入れ替えは手技的に困難な場合はあるが, 入れ替え後の語音聴取能は入れ替え前に比べて有意な悪化を認めなかった.
  • 金村 信明, 中野 友明, 比良野 彩子, 天津 久郎, 古下 尚美, 植村 剛, 愛場 庸雅
    2011 年 114 巻 5 号 p. 505-510
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/10
    ジャーナル フリー
    ふらつきを主訴に受診し診断に至った頸部原発の神経芽腫 (neuroblastoma, 以下NB) の1例を経験した. 本症例では頸部神経芽腫に伴う呼吸困難や嚥下困難といった身体症状を有さず, 体幹失調のみが認められた. 画像および生検からNBの診断に至り, 強化化学療法後に選択的頸部郭清術を施行した. 現在術後10カ月経つが, 明らかな再発兆候は認められない. NBは小児固形腫瘍として高頻度であるが, 頸部原発のNBはまれである. また, NBに伴う体幹失調としてOpsoclonus myoclonus ataxia syndrome (以下OMA) が知られており, 体幹失調をみた際の鑑別診断としてNBを考える必要がある.
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