日本耳鼻咽喉科学会会報
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76 巻 , 8 号
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  • 玉置 弘光, 杉山 茂夫, 野村 侃, 陌間 啓芳
    1973 年 76 巻 8 号 p. 921-928
    発行日: 1973/08/20
    公開日: 2008/12/16
    ジャーナル フリー
    最近われわれが経験した両側顔面神経麻痺の3症例について報告するとともに,1963年から1972年までの本邦での両側顔面神経麻痺の報告例について検討した.
    症例1 両側外傷性顔面神経麻痺 27才♂
    自動車修理中,自動車の下敷となり,両側顔面神経麻痺に陥つた.右側は保存的療法で完全治癒したが,左側は顔面神経圧排術を行つて完全治癒せしめた.
    症勢2 多発性神経炎 28才♀
    上下肢のしびれ感とともに,両側顔面神経麻痺が出現した.
    副腎皮質ホルモン療法を主体とした治療で3週間後に完全治癒した.
    この症例は両側Bell麻痺との鑑別が困難であつた.
    症例3 Heerfordt's syndrome 35才♀
    左顔面神経麻痺の10日後に右側顔面神経麻痺となり,1ヵ月後両側耳下腺の腫張を来した.
    当院外科でscalenus biopsyの結果,典型的なsareoidosisという病理診断をうけた.
    眼科的にはsarcoidosisによる変化と考えられる虹彩プドウ膜炎が認められた.
    耳鼻咽喉科初診時所見は,両側顔面神経麻痺の他に,両側反回神経麻痺左軟口蓋麻痺がみられた.
    内科に入院の上,副腎皮質ホルモンを主体とした保存的療法で上記脳神経麻痺は軽快した.
    われわれは過去11年間に705例の末梢性顔面神経麻痺患者のうち,12例に両側顔面神経麻痺がみられた.
    過去10年間の本邦の報告例はわれわれの症例をのぞいて19例であつた.
    両側顔面神経麻痺の原因は,系統的疾患にもとずくものも少なくなく,これらの患者の診察にあたつは,特にこの点に留意しなければならないことを強調した.
  • 近藤 穣
    1973 年 76 巻 8 号 p. 929-939
    発行日: 1973/08/20
    公開日: 2008/12/16
    ジャーナル フリー
    1. 目的:日本人胎児における中耳発生について,主として,そのアブミ骨の発生について検索しようと試みた.
    2. 実験法:人工妊娠中絶によつて得られた日本人胎児10胎について,頭部の連続組織切片標本を製作した.それらの全標本について,実体顕微鏡にて,組織学的検索を行い,耳小骨の発生学的観察を行つた.
    3. 結果:
    a. 胎生初期には,ツチ骨とキヌタ骨は,一つの細胞群として認められ,Meckel氏軟骨の方がツチ骨,キヌタ骨の細胞群より早く発現したと推定される.
    b. ツチ骨とキヌタ骨は,上記細胞群の中から,同じ時期に発生したと推定される.
    C. ツチ骨,キヌタ骨とアブミ骨は異なる原基から発生したものと推定される.また,ツチ骨,キヌタ骨の方がアブミ骨より早く発生したと思われる.
    d. アブミ骨の脚と足板部の中耳側層とは同じ原基(Reichert氏軟骨)から発生すると推定される.
    e. アブミ骨足板部の前庭側層とotic capsule前庭窓縁は,同じ原基(otic capsule)から発生すると推定される.
    f. アブミ骨の脚は,足板部(中耳側層も含めて)より早く発生する.
  • 平息 直子, 森満 保, 中島 恒彦, 松元 一郎
    1973 年 76 巻 8 号 p. 940-943
    発行日: 1973/08/20
    公開日: 2008/12/16
    ジャーナル フリー
    アセタゾールアミドは,炭酸脱水素酵素の抑制剤であるが,炭酸脱水素酵素は,蝸牛に,他の組織,器官に比し,最も多く含まれていることが知られている.又,アセタゾールアミド投与後,内外リンパのイオン構成,液量,圧に変化が生じることが,報告されている.そこで,内外リンパイオンの変化等に容易に影響されるCMに,アセタゾールアミドが,変化をもたらすか否かを観察した.
    実験方法は,Preyer反射良好のモルモツトを使用し,differential electrode methodにより,基底回転より,CMを誘導し,50mg/kg,および200mg/kgのアセタゾールアミドを,頸静脈より注射し,CM出力に現われる変化を観察,記録した.
    実験成績は,50mg/kg,200mg/kg投与,いずれの場合も,CM出力の低下をきたしたが,量が少ないと,CMの低下は軽度で,経過は緩慢であり,量が多くなると,CMの低下は甚しく,時間的にも急速な上に,二次的減少を伴なう事が分つた.
    CM低下の原因として,内外リンパ液のNa,Kイオン濃度の変化,内外リンパ液量の減少,圧の減少が考えられるが,それは,アセタゾールアミドが,内耳液の生成吸収の機転を阻害するためであろうと推測した.
  • 坂下 桂之助
    1973 年 76 巻 8 号 p. 944-964
    発行日: 1973/08/20
    公開日: 2008/12/16
    ジャーナル フリー
    頭頸部外傷患者の難聴,めまいがどのような受傷機転で起るのか,また聴覚検査,平衡機能的査結果ではどのようなものであつたかを頭部外傷とむち打ち損傷に分けて的索した.症例数は15才から70才迄の男女658名である.頭頸部外傷患者の聴覚,平衡障害の発現機序は々ある.脳実質障害と思われるもの例えば脳挫傷型は聴力損夫60dB以上の症例数において脳振盪,単純型より多い,また脳神経症状を現わしたものは自記オージオグラムでJerger III IV型に多い.
    また脳幹の障害と思われるでperverted nystagmus, Lightning Eyemovement, OKPのInversionや椎骨脳底動脈不全,外傷性正常脳圧水頭症には聴平衡障害がある.
    このほか中枢性眩暈にRomberg陽性や下肢の偏倚が多くこれは深部知覚の障害がかなり関与している.頭頸部外傷は受傷部位により一定の病像が現われるものでなく脳外傷の衝撃の方向CoupとCo-ntrecoup injuryで脳損傷の好発部位が決まることが多い.内耳においては蝸牛前庭三半規管の振盪による内耳難聴,前庭障害が起る.その他中枢,末梢の聴覚,平衡機能障害を区別できない合併したものがあり,また聴覚神経路と前庭神経路とは解剖的にまた組織の低抗性も異なり聴覚機能と平衡機能とは必ずしも一定の同じ病像(中枢または末梢)を現わさない.
    頭部外傷とむち打ち損傷を比較すると聴覚障害.耳鳴,平衡障害の三つを伴うものが頭部外傷例がむち打ち損傷例より多い.聴力障害のみは頭部外傷例が多いが耳鳴,頭鳴のみはむち打ち損傷例が多い.中枢性眩暈と思われるものは頭部外傷例が多くこれらは頭部外傷が直接脳組織に衝撃が加わるからと思われる.
  • 柏木 稔暖
    1973 年 76 巻 8 号 p. 965-988_1
    発行日: 1973/08/20
    公開日: 2008/12/16
    ジャーナル フリー
    1. 目的:鼻涙管は鼻腔に隣接し,また接続する管腔であることから,鼻涙管と鼻副鼻腔との発育ならびに容積的関係を観察し,鼻涙管の成立機序,とくに下鼻道への開口機序を明らかにすることを目的とした.
    2. 方法:1ヵ月~10ヵ月までの邦人胎児60例を用いて,連続切片を作製し,H•E重染色後,鼻涙管と副鼻腔(上顎洞)の大いさを比較計測した.また補整プラニメーターを用いて両者の面積を算出した.次に鼻涙管および涙嚢の状態とともに鼻腔,上顎洞および篩骨洞の発育分化の状態,さらに発育過程に認められる粘膜の炎症様現象について観察した.
    3. 結果:
    1) 鼻涙管腔の発達度は副鼻腔の発育度の良好なものほどよい.
    2) 涙小管の初期は肥厚した上皮細胞束が内眼裂の内側,すなわち将来の涙小管の位置にまず存在していて,その中心部が融解し管腔が成立してゆく過程が認められる.
    3) 鼻涙管の成立機序は涙小管のそれとは異なり,上は涙小管に運なり,下は下鼻道側壁に開口するが,完成後の位置に相当して上皮細胞の管壁状の配列とその増殖および周囲組織の吸収とによつて成立したもののようである.原基をなす上皮細胞の由来については憶測の域に止まり明かでない.
    4) 下鼻道側壁への開口は下鼻道と鼻涙管腔との間の結合組織が吸収されてやき,ついには穿孔し,開口する.
    5) 管腔の胎生発育期では,個体差が著しく,管腔内面のヒダ形成,隔壁形成,分割などの形態をとるものが多い.
    6) 下鼻道側壁においての開口形態および位置には個体差があり,いろいろの形をとる.
    7) 下鼻道への開口は,6ヵ月において1例認められたが,他はいずれも8ヵ月以後であつた.ただし胎生月令と開口の頻度は必ずしも平行しない.10ヵ月のもののうち開口しているものは5例中2例であつた.
    8) 鼻涙管形成の過程で,管腔内への円形細胞の遊出と上皮下組織内における細胞浸潤などの炎症様現象が認められた.
    9) この現象は,中耳乳様蜂窩形成および副鼻腔形成の初期に認められている管腔形成に伴なう異物性の炎症と同質的なものとみなすべきものとした.鼻涙管腔の発育がよくなく,管腔が狭いもの,ヒダの多いものに細胞浸潤が強い.
  • 斎藤 成司, 鈴木 安恒, 福田 宏之, 尾形 キヨウ子, 北原 哲, 秋田谷 直, 粉川 信之, 小野 博
    1973 年 76 巻 8 号 p. 989-996_2
    発行日: 1973/08/20
    公開日: 2008/12/16
    ジャーナル フリー
    目的:喉頭のmicrosurgeryは拡大視下に確実な手術ができるため,ひろく一般に行なわれるようになつた.喉頭のmicrosurgeryの大きな目的の一つに術後の発声機能をできるだけ正常にすることがある.従来の喉頭のmicrosurgeryの方法では術中に喉頭の発声機能を知ることとは難かしかつた.この点を解決するためストロボスコープを使用して,手術の経過と共に発声時の声帯振動の状態を観察し,声帯振動ができるだけ正常に近い状態で手術を終了すれば術後の音声も最良の結果をうると考えて,その方法を試みた.
    方法:従来の喉頭のmicrosurgeryの光源としてストロボスコープの光源を使用する方法をとつた.すなわち,ストロボスコープの発光管のより明るいものを試作し,その両端よりグラスフアイバーを導光用として喉頭鏡の両側先端まで導き,手術用顕微鏡を介して喉頭鏡下に発声時の声帯の振動を観察しうると共に,同じ光源でスイツチの操作一つで最高発光がでるようにして,手術も行ないうるようにストロボスコープを改造した.手術の実際は,1. 麻酔は発声が必要であるため,Neuroleptanalgesiaに咽喉頭局所噴霧麻酔,もしくは局所塗布注入麻酔のみで行ない,2. 喉頭を展開し,3. 手術用顕微鏡下に局所所見を観察し,4. 術前の声帯振動を観察し,5. 手術を施行し,6. 声帯振動観察の順に行なう.必要に応じて5.6. を繰返し声振帯動が正常に最も近いと考えられる状態で手術を終了する.
    結果:昭和47年1月より12月の1年間に喉頭の器質的疾患152例に本法を施行した.多くの疾患において手術の進行と共に声帯振動は改善され正常に近い振動が観察されるものが多かつた.
    その経験から:
    1. 術前の声帯振動の状態で手術方法を選択しうる.
    2. 声帯振動の観察から手術の終了時を決定しうる.
    3. 声帯振動が最もよい状態で手術を終了するため,術後の音声改善が確実である.以上のような利点があり,声帯の器質的疾患の手術法として非常に有効な方法と考えられる。その方法及び代表症例について述べた.
  • 野原 忠
    1973 年 76 巻 8 号 p. 997-1015
    発行日: 1973/08/20
    公開日: 2008/12/16
    ジャーナル フリー
    1. 目的:1938年A.B. Hertzman,D.L.Davis等がphotoelectric plethysmographを発表して以来,広い分野で多くの研究者によつて基礎的および臨床的研空が数多く発表されている.耳鼻咽喉科領域では白岩,堀江,加藤,山川らによつて容積脈波計測装置の創製がなされ,鼻腔粘膜の容積脈波に関する研究が報告されている.著者は,口蓋扁桃および口唇粘膜の血流動態の生理的ならびに病理的変化を研究する目的でCdsを応用した反射光電式容積脈波計測装置を使用して実験を行なつた.
    2. 実験法:反射光電式容積脈波計測装置のpick upを口蓋扁桃粘膜に一定の条件のもとに接着,固定出来るように考案し改良した.このpick upを使用して,正常な口蓋扁桃成人男女123例,習慣性アレギーナ55例,口蓋扁桃内膿瘍14例,口唇炎28例,口唇血管腫25例について,一定条件のもとで,容積脈波を中指容積脈波と共に記録し,検討した.また検査可能なものでは血管造影や組織学的検査を行つた.
    3. 結果:(1) 口蓋扁桃のplethysmogramで正常な口蓋扁桃では,一定の振幅と波長をもつた規則正しい半円形波が得られた.左右差は殆んどなく,2種類の基線の動揺が見られ,一つは呼吸性の変動であり,他は周期の長い自然動揺であつた.(2) 深呼吸時の容積脈波は吸気に応じて振幅の縮少を伴つて基線は下降し,呼気に前後して振幅は再び増大し,基線も上昇する.(3) 容積脈波は中指のそれに較べ,口蓋扁桃では変動が著明で,基線の上昇,下降が激しく,変動幅も2倍以上におよんでいる.(4) 病的口蓋扁桃の容積脈波では,それぞれの病理組織学的病変に対応した波形,振幅,波長などの変化を認めた.すなわち,容積脈波上にみられた鋸歯状波は扁桃の炎症病変による反応と思われる.また扁桃潰瘍の容積脈波では,殊に上昇脚に著しく不規則な混乱した波形が認められた.(5) 動脈硬化の扁桃容積脈波では,鼻粘膜及びその他の部位でも認められる波形の単純化が認められた.(6) 口唇の粘膜における容積脈波は,正常の場合,口蓋扁桃の場合と差は認められなかつた.(7) 下口唇の血管腫の容積脈波は,波形の頂部に弾性隆起が認められ,波形全体が強い山型を示した.(8) 口唇粘膜の炎症時の容積脈波は下降脚に著明な変化が認められた.この変化は,病理組織学的所見で口唇粘膜の固有層に毛細血管の増殖および充血,軽度の内皮細胞腫脹,線維芽細胞の増殖,また筋組織内にも細小動静脈が認められ,細小動脈附近の毛細血管が充血性であるという所見にうらづけられていると考えられる.
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