日本耳鼻咽喉科学会会報
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109 巻, 7 号
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  • 内視鏡的咽喉頭手術(ELPS)の経験
    佐藤 靖夫, 大森 泰, 田川 崇正
    2006 年 109 巻 7 号 p. 581-586
    発行日: 2006/07/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    下咽頭の表在癌はいまだ症例報告数が少ない.これまで,食道表在癌と同様にEMR-Cで摘出する方法が報告されているが,EMR-Cでは広範囲病変や粘膜吸引が困難な部位では病変の一括切除が困難であり,下咽頭表在癌の治療方針は確立されていない.2000年2月から2005年5月までに当院で局所粘膜手術を施行した下咽頭表在癌67病変(49例)について,その治療方法と成績を検討した.特に,喉頭展開した後に上部消化管内視鏡下に直達的に鉗子を用いて病変を切除する方法(以下,ELPSと仮称)の有用性を検討した.
    現在までに49例のうち5例が死亡したが,当該病変の再発•転移例はなかった(疾患特異的5年生存率:100%).2004年9月までは主にEMR-Cを行っていたが,半数以上は一括切除が困難であった.2004年9月からELPSを導入し11病変に施行したが,下咽頭の観察が容易であり,広域病変や粘膜吸引が困難な部位でも一括切除が可能であった.
    下咽頭表在癌は局所粘膜切除術でも良好な予後が期待でき,早期診断の重要性があらためて示された.下咽頭表在癌は病変の部位や大きさによって摘出方法を選択すべきと考えられた.EMR-Cや顕微鏡下手術では視野の確保や一括切除が困難な病変に対して,ELPSは有用な治療選択肢の1つになりうると考えられた.
  • 大畑 敦, 菊地 茂, 善浪 弘善, 竹腰 英樹, 青木 大輔, 重田 恵一, 大野 俊哉, 谷 康寛
    2006 年 109 巻 7 号 p. 587-593
    発行日: 2006/07/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    深頸部感染症は減少傾向にあるが,対応を誤ると死に至る危険性のある疾患である.今回,埼玉医科大学総合医療センター耳鼻咽喉科において過去10年間に経験した深頸部感染症69例(男性52例,女性17例)について解析し,深頸部感染症を重症化させる因子について検討した.患者の平均年齢は50.0歳で,糖尿病を有する症例は20例であった.感染の原発部位としては,扁桃(34例),歯牙(16例),咽頭(12例)が多く,感染が舌骨上にとどまったものは31例,舌骨下に進展したものが33例,縦隔に進展したものが5例であった.高齢である症例,感染の進展が下方に及んだ症例,糖尿病を基礎疾患に持つ症例では,有意に初診時のCRPが高値を示し,在院日数が延長していたが,性別や感染の原発部位の違いによる初診時CRP値および在院日数の相違は認められなかった.このことから,年齢,感染の進展範囲,糖尿病の存在の3点が,深頸部感染症を重症化させる因子として重要であると考えられた.
  • 喉頭クリアランスに対する影響
    大前 由紀雄, 安達 仁, 磯田 幸秀, 前川 仁, 北川 洋子, 唐帆 健浩, 田部 哲也, 北原 哲
    2006 年 109 巻 7 号 p. 594-599
    発行日: 2006/07/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    気管切開は,呼吸や下気道の管理を容易にすることはあっても嚥下機能にとっては負の要因となる.著者らは,気管切開に伴う呼気流の変化が喉頭腔に流入する食塊や分泌物の処理能力の低下に繋がり,経口摂食への導入を困難にする一因になると考えてきた.このため,気管切開症例にはスピーチバルブの装着を進め経口摂食への導入を試みてきた.今回は,喉頭腔への分泌物の貯留状態を喉頭クリアランスと定義しスピーチバルブ装着に伴う嚥下機能の変化を検討した.対象は,嚥下訓練の過程でスピーチバルブを装着した16症例で,スピーチバルブの装着前後の嚥下機能と経口摂食確立の成否との関連を検討した.初診時の喉頭クリアランスは全例で低下し,14例に喉頭流入を認めた.スピーチバルブ装着後は,喉頭クリアランスと喉頭流入の改善を有意に認めたが,咽頭期の嚥下出力自体には有意な変化を認めなかった.一方,経口摂食の成否は,喉頭挙上障害および喉頭流入•誤嚥の有無が有意に相関した.気管切開孔の造設による呼気流の変化は喉頭クリアランスの低下や喉頭流入の原因となり経口摂食導入への大きな阻害因子となる.こうした病態では,可能な限り呼気を喉頭腔に導き喉頭クリアランスの改善を目指すことが経口摂食導入に向けて大きな一助になる.
  • 北原 糺, 久保 武, 土井 勝美, 三代 康雄, 近藤 千雅, 堀井 新, 奥村 新一, 宮原 裕
    2006 年 109 巻 7 号 p. 600-605
    発行日: 2006/07/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    耳科手術後に,比較的まれではあるが数日遅れて発症する顔面神経麻痺を経験することがある.今回,各種耳科手術後に生じた遅発性顔面神経麻痺の自験例を集計し,手術と本疾患発症との関連について検討した.術後遅発性顔面神経麻痺の定義は術後3日(72時間)以降の発症とした.術後遅発性顔面神経麻痺は7例あり,発症率は乳突削開を伴う鼓室形成術0.7%(2/305),乳突非削開0.0%(0/212),人工内耳埋込術0.8%(3/354),アブミ骨手術0.4%(1/260),内リンパ嚢開放術1.0%(1/98)であった.麻痺側は全例手術側であった.ベル麻痺に準じたステロイド漸減治療ののち,全例とも速やかに治癒した.今回麻痺をきたした7例中,人工内耳埋込術後の1例,アブミ骨手術後の1例を除く5例は,いずれも術中に乳突削開を施行し垂直部顔面神経の露出がないことを確認していた.人工内耳埋込術後の2例,内リンパ嚢開放術後の1例を除く4例は,いずれも術中に水平部顔面神経の露出がないことを確認していた.内リンパ嚢開放術後の1例を除く6例では,いずれも術中に顔面神経知覚枝である鼓索神経に触れる機会があった.また,ヘルペス属ウイルスのペア血清抗体価を調べることができた人工内耳埋込術後の1例,内リンパ嚢開放術後の1例はともにVZV-IgG値の変化が陽性であった.一方,顔面神経運動枝に触れる耳下腺良性腫瘍摘出術や,肉体的精神的ストレスを受けるが顔面神経には触れない喉頭全摘出術の術後には,遅発性顔面神経麻痺が生じた例はなかった.以上より,側頭骨内において顔面神経管に骨欠損がなく内圧が逃げにくい環境を持つ症例において,乳突削開による顔面神経周囲組織への直接の影響や,単なる肉体的精神的ストレスのみによるのではなく顔面神経知覚枝である鼓索神経刺激などにより惹起される膝神経節ヘルペスの再活性化が,遅発性顔面神経麻痺の発症因子の一つとして関与している可能性が示唆された.
  • 顔面腫脹•疼痛
    洲崎 春海
    2006 年 109 巻 7 号 p. 612-615
    発行日: 2006/07/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
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