日本耳鼻咽喉科学会会報
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104 巻, 3 号
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  • 小川 郁, 井上 泰宏, 新田 清一, 熊埜御堂 浩, 井出 里香, 神崎 仁
    2001 年 104 巻 3 号 p. 187-191
    発行日: 2001/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    目的: 耳閉塞感の発症機序を明らかにする目的で, 難聴の病態が明らかな耳硬化症を対象としてその臨床所見, 検査所見と耳閉塞感との関係について検討した.
    対象と方法: 手術所見より耳硬化症と診断された116例, 140耳とした. 耳閉塞感の有無は初診時の問診表及びカルテの記載より判定し, 耳閉塞感の有無と臨床所見, 検査所見との関係をretrospectiveに検討した.
    結果: 耳閉塞感 (+) 群は44耳 (31%), 耳閉塞感 (-) 群は96耳 (69%) であった. 耳閉塞感と耳鳴との関係では耳閉塞感 (+) 群で耳鳴の合併率が高い傾向があった. 初診時の4周波数平均気導および骨導聴力レベルは耳閉塞感 (+) 群で有意に低かった. 両群の平均聴力レベルの差は主に2kHz, 4kHzで明確であった. 低音域聴力レベルと高音域聴力レベルの差は耳閉塞感 (+) 群で有意に大きかった. 術後の耳閉塞感は44耳中34耳 (77%) で消失または軽快し, 特に聴力改善が良好な症例ほど耳閉塞感が消失, 軽快する傾向があった.
    結論: 今回の検討で術後に聴力改善が良好な症例ほど耳閉塞感が消失, 軽快する症例が多い傾向があったことは耳硬化症における耳閉塞感がアブミ骨の固着による難聴に起因することを示している. 耳閉塞感 (+) 群の2kHzおよび4kHzの気導および骨導聴力レベルが有意に低く, 低音域と高音域聴力レベルの差が有意に大きかったことから, 入力音の低音域と高音域の音圧差が聴覚心理的に耳閉塞感という異常感覚の原因になっている可能性と, アブミ骨の固着が原因と考えられる2kHzを中心とする骨導聴力の低下 (Carhart notch) が耳閉塞感発症と関連している可能性が考えられた.
  • 佐藤 美奈子, 松永 達雄, 神崎 仁, 小川 郁, 井上 泰宏, 保谷 則之
    2001 年 104 巻 3 号 p. 192-197
    発行日: 2001/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    突発性難聴の重症度分類は, 初診時の5周波数平均聴力レベルを4段階に分類し (Grade 1: 40dB未満, Grade 2: 40dB以上60dB未満, Grade 3: 60dB以上90dB未満, Grade 4: 90dB以上), めまいのあるものをa, ないものをbとして, 初診時に突発性難聴のグレーディングを行う方法である. しかし臨床データによる研究は少なく, その有用性・問題点については未知の部分が多い.
    本研究では, 発症後1週間以内に治療を開始した初診時聴力レベル40dB以上の突発性難聴263例を, 前述の重症度分類に基づき6群に分類, 聴力回復との関係を検討した. 固定時聴力の比較では, 予後良好な順にGrade 2b>2a>3b>3a>4b>4aであった. 初診時聴力レベルに影響を受けない予後の定量的評価の方法として, 聴力改善率と各群の治癒症例の割合を用いて検討すると, 予後は良好な順に, Grade 2b, 3b>2a>3a>4b>4aの5段階に位置づけられ, Grade 4aの予後が顕著に不良であった. Grade 2, 3では, 初診時聴力レベルよりめまいの有無の方が予後に対する影響が大きいと考えられた. Grade 4を聴力レベル100dBで分けた場合の聴力予後は, 4aでは100dBを境に大きな差が見られ, 100dB未満の4aは3aと同程度であった. しかし4bでは, 100dB以上の予後がやや悪いものの, その差は小さかった. 今回の検討により, 発症後1週間以内に治療を開始した突発性難聴では, 初診時聴力にかかわらず, ほぼ同程度の聴力改善が望めるレベルが存在し, このレベルはめまいのない場合40-89dB, めまいのある場合60-99dBであると考えられた. 各々の予後は, めまいのない場合, 治癒する可能性約60%, 聴力改善率平均80%以上, めまいのある場合, 治癒する可能性約40%, 聴力改善率平均60%程度と推察された. また, 初診時Gradeと重症度分類に準じた固定時Gradeを比較すると, 初診時Grade 2, 3では, 固定時Grade 1, Grade 4では, 固定時Grade 3の症例が多かった.
  • 末梢血単核球 (PBMC) における検討
    盛川 宏, 馬場 廣太郎
    2001 年 104 巻 3 号 p. 198-207
    発行日: 2001/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    鼻アレルギーなどのI型アレルギーの病態形成にはヘルパーT細胞のうちTh2が重要な役割を果たしていると考えられている. ナイーブT細胞が活性化されTh2へと分化するには, 第1シグナルと共に第2シグナル (costimulatory signal) が必要と考えられている. スギ花粉症におけるcostimulatory分子の関与について検討した.
    まず, 花粉症患者12名, 健常者11名についてスギ花粉抗原刺激により末梢血単核球 (PBMC) 上に表出される各costimulatory分子と, 培養上清中のサイトカインのパターンを健常者とスギ花粉症患者とで比較した. さらにcostimulatory分子の関与をより明確にするために, 花粉症患者7名について中和抗体を用いたblocking試験を行った.
    PBMCをスギ花粉抗原で刺激するとスギ花粉症患者においては, 健常者に比べCD19陽性細胞上のCD86, CD40が有意に強く発現された. 培養上清中のIL-5は花粉症患者で, IFN-γは健常者で有意に高かった. IL-4は花粉症患者, 健常者共に検出できなかった. 抗CD86抗体, 抗CD40抗体によるblocking試験では, 抗CD86抗体添加群ではPBMCの細胞増殖能は抗体無添加群に比べ有意に抑制されたが, 抗CD40抗体添加群では一定の傾向を示さなかった. IL-5の産生は抗CD86抗体添加群では抗体無添加群に比べ有意に抑制された. IFN-γの産生はいずれの群でも差はなかった. IL-4はいずれの群でも検出できなかった.
    鼻アレルギーにおいては, ヘルパーT細胞のうちTh2が優位となっており, Th2への分化にはcostimulatory signalのうちB7-2 (CD86) を介するsignalが重要な役割を果たしている可能性が示唆された.
  • 日高 利美, 秋定 健, 竹本 琢司, 粟飯原 輝人, 平井 眞代, 原田 保
    2001 年 104 巻 3 号 p. 208-211
    発行日: 2001/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    51歳, 男性の右頸部交感神経原発の悪性神経鞘腫の1例を報告する. 本症例は, 病理組織学的に良性神経鞘腫から悪性転化した悪性神経鞘腫であった. 一般に良性神経鞘腫からの悪性転化は極めて稀で, 本邦での報告はなく, 過去の報告では10例にすぎない. また頸部交感神経由来は西山の報告の1例のみである. 本症例は外科的切除にて腫瘍は一塊に摘出でき経過良好であったが, 術後3カ月で局所の再発を認めたため, 再発腫瘍に対して2回の外科的切除と放射線治療を行った. 放射線治療は一般に感受性は極めて低いとされているが本症例では, 再発のスピードから考えると術後照射野の再発はみられなかったことから再発予防に効果が期待できたと考えられた. 治療開始より約11カ月で遠隔転移にて死亡したが, 極めて稀な腫瘍であるとともに治療の難しさを痛感させられた症例であった.
  • 症例報告と当院における肺塞栓例の検討
    北尻 真一郎, 田渕 圭作, 平海 晴一
    2001 年 104 巻 3 号 p. 212-215
    発行日: 2001/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    鼓室形成術後の重篤な肺塞栓症 (pulmonary embolism: 以下PEと略す) 例を報告する. 69歳, 女性の右中耳真珠腫に対して, 全身麻酔下に鼓室形成術3型を施行した. 手術時間は3時間27分, 麻酔時間は5時間9分であった. 帰室14時間5分後にあたる術翌朝, 起床時に意識消失をきたした. 一時意識は回復したがその後ショック状態となり, 心肺停止した. 人工呼吸と心マッサージ等で心拍再開したが血圧は安定せず, エコー上右心負荷があり肺動脈圧も高いことよりPEと考え, 血栓溶解を行って循環動態は安定した. その後造影CTで両側肺動脈内に血栓を確認した. PE発症後23日目に低酸素脳症のため死亡した. 過去5年10カ月間に当院全体では40例のPE症例があり, そのうち5例が術後発症例で, 術後PEの発生率は0.03% (5/16277) である. 術後発症例のうち3例が死亡していた. PE症状を有し治療開始前もしくは開始直後に造影CTを施行できた21例中19例 (90.5%) でCTで塞栓を指摘でき, 造影CTは診断上有用であった. 耳鼻咽喉科・頭頸部外科ではPEへの関心は高いとは言えないが, 術後急激に発症して重篤な結果をもたらすことも多く, 迅速な診断とその予防が重要である.
  • 高齢者の滲出性中耳炎の病態とその対応
    中野 雄一
    2001 年 104 巻 3 号 p. 216-219
    発行日: 2001/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
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