日本耳鼻咽喉科学会会報
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115 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
総説
  • 菊田 英明
    2012 年 115 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/14
    ジャーナル フリー
    ペニシリンのなかった時代には, A群β溶血性レンサ球菌による咽頭扁桃炎は重症な細菌感染症で, 発疹を伴う猩紅熱は法定伝染病であり, 小児科医, 内科医が主に治療を行っていたと推測される. 抗菌薬が普及し, リウマチ熱の発症はほとんどみられなくなり, 猩紅熱が重症な溶連菌感染症でないと理解されてからは, 発疹があっても猩紅熱と言わず溶連菌感染症として診断, 治療を行っていた. その後, 1998年の法改正に伴い猩紅熱は法定伝染病でなくなり, 現在に至っている. そのため, 最近は猩紅熱という名前より溶連菌感染症という名前が一般の人に周知されるようになった. A群β溶血性レンサ球菌感染症による咽頭扁桃炎は, 抗菌薬によく反応し重症化することもなく, 全身管理の必要がなくなったため, 小児科医, 耳鼻科医, 内科医で診断, 治療を行っていると思われる. 今回, 小児科医がどのようにA群β溶血性レンサ球菌感染症による咽頭扁桃炎の診断, 治療を行っているかを知っていただき, 日頃の臨床の場に役立てていただければと思う.
  • 阪上 雅史
    2012 年 115 巻 1 号 p. 8-13
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/14
    ジャーナル フリー
    「味覚障害診療の手引き」によると味覚障害患者はこの10年間で1.8倍に増加している. 特発性, 亜鉛欠乏性, 薬剤性の3大原因の他に心因性の増加がみられる. 症状は味覚脱失と減退が大部分を占めるが, 口腔乾燥症や舌痛症も増加している. 味覚検査は, 保険適応の電気味覚検査と濾紙ディスク検査の他に, 微量金属を測定する血液検査, 自覚症状を測るVAS, 顕微鏡による舌乳頭の観察, 唾液量検査, 自己評価式抑うつ尺度 (SDS) などを行う. 味覚障害の治療は亜鉛補充療法を3-4カ月間行う. 自覚症状の治癒率は60-70%, 改善以上は70-90%であるが, 電気味覚検査・濾紙ディスク検査の改善率は30-40%と低く解離がみられる. 症状発現から受診までの期間が6カ月未満であると, 改善率が高く改善期間も短い傾向にあった. ポラプレジンクの味覚障害に対する第II相臨床試験では, ポラプレジンク300mg/日はプラセボに対して有効性がみられ, 150mg/日は80%の有効率がみられた.
  • 中村 正
    2012 年 115 巻 1 号 p. 14-21
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/14
    ジャーナル フリー
    めまいの原因疾患として良性発作性めまい症をはじめとする耳鼻咽喉科疾患が多数を占めていることが医療関係者の間にも一般市民の間にも広く認識されるようになり, その結果, 耳鼻咽喉科外来を訪れるめまい患者が増え, めまい診療に対する耳鼻咽喉科医の期待も高まっている. さらに, 外来診療は診療所が中心に行うという医療機関の機能分化が進められている状況から, 耳鼻咽喉科診療所がめまい診療を担う機会も増加することが予想される. 一般的に耳鼻咽喉科診療所を訪れる患者数は多く, 多くの時間をかけざるを得ないめまい患者を診ることは容易ではない. まれではあるが脳血管障害などのめまい疾患に遭遇することもある. 診療所では効率よく診療を進めることが求められるが, まず最も頻度が高い良性発作性頭位めまい症を確実に診断することができれば危険なめまいを除外することができる. このためには頭位変換眼振検査が必須であり, 新患に限らず再来でも必ず行うことが好ましい. 診療所では急性期を過ぎた慢性期めまい患者も多く, 潜在的な眼振を検出するためには赤外線CCDカメラ下で行う眼振検査が有用であり, 診療所にとって眼振検査は費用対効果の面でも必須の検査機器である.
原著
  • 重田 泰史, 大櫛 哲史, 吉川 衛, 飯田 誠, 中山 次久, 浅香 大也, 濱 孝憲, 森 恵莉, 小島 純也, 吉田 拓人, 飯村 慈 ...
    2012 年 115 巻 1 号 p. 22-28
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/14
    ジャーナル フリー
    副鼻腔は頭蓋や眼窩などと隣接していること, また解剖学的に複雑でバリエーションも多いことなどより, 視器損傷や髄液鼻漏など, 重篤な術中副損傷の発生が少なからず存在する. 今回われわれは鼻副鼻腔炎症性疾患および嚢胞性疾患に対する内視鏡下鼻内手術において, 多施設における術中副損傷および術後合併症の発生頻度とそれらに関わる因子について検討したので報告する. 対象は2007年4月1日から2008年3月31日までの1年間に東京慈恵会医科大学附属病院および教室関連病院 (計16施設) において内視鏡下鼻内手術を施行した1,382例である. 術中副損傷あるいは術後合併症を起こした症例が80症例 (5.8%) あり, 過去の報告と同様に眼窩内側壁損傷の頻度が一番高かった. 副損傷/合併症群と非副損傷/合併症群とを比較すると性別, 麻酔方法, 糖尿病の既往の有無で有意差を認めた. また, 多重ロジスティック回帰分析では, 患者が男性であること (p=0.003, オッズ比 2.50, 95%信頼区間 1.35-4.55), 全身麻酔下での手術 (p=0.014, オッズ比 3.21, 95%信頼区間 1.27-8.12) が副損傷/合併症に関わる因子であった.
  • 倉田 奈都子, 高橋 正時, 古宇田 寛子
    2012 年 115 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/14
    ジャーナル フリー
    早期のIgA腎症における口蓋扁桃摘出術 (扁摘) の有用性はこれまで多く報告されているが, 生体腎移植後にIgA腎症が再発した場合の治療法はいまだ確立されていない. 近年, 腎移植後の再発例に対しても扁摘が有用であったという報告がなされている.
    当院では2008年3月~2010年3月の約2年間に13例の腎移植後再発IgA腎症の扁摘を施行した. 対象13例の内訳は, 平均年齢44.8歳 (29歳~67歳), 移植後平均年数6年2カ月 (1年3カ月~15年) であった. 口蓋扁桃の形状は埋没型やMackenzie分類I度肥大が多く, 膿栓は術中所見で12例において認めた. 合併症は, 1例で術後1週間に出血を認めたが, 保存的治療で止血した. 術後ステロイドパルスは1例において追加した. 術後観察期間は1カ月から1年11カ月であり, 血清クレアチニン値は9例で改善を認め, 特に腎障害程度が軽度の症例では有意に改善していた. また, 尿蛋白も改善傾向であった. 生体腎移植例では免疫抑制剤やステロイド剤を継続して内服する必要があるが, 慎重な周術期管理を行い, 重篤な合併症を認めなかった.
    IgA腎症に対する扁摘は早期であるほど効果が高いとされる. 腎移植後再発IgA腎症に対しても, 早期に扁摘を行うことで, 腎症の進行や移植腎喪失の予防となり得ることが示唆される.
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