日本耳鼻咽喉科学会会報
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110 巻, 5 号
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原著
  • 川俣 光, 大氣 誠道, 佐久間 貴章, 洲崎 春海
    2007 年 110 巻 5 号 p. 395-402
    発行日: 2007/05/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    1999年1月~2003年3月までの約4年間の突発性難聴 (以下, 突難) に対する横浜労災病院での治療成績を報告する. 突難に対する当院での治療方針は, 副腎皮質ホルモン (ベタメサゾン) 点滴静注および高圧酸素療法の併用を基本方針とした. この治療を施行し, 他院で何らかの治療を施した症例をすべて除き純粋な急性期新鮮例は, 男性56例, 女性53例, 合計109例 (111耳) であった. 病側は左側52例, 右側55例, 両側2例, 年齢は8~78歳で平均52.6歳であった. 治療開始が発症1週間以内をI群, 1~2週間をII群と分類した. I群では男性48例, 女性47例, 合計95例 (97耳) で, II群では, 男性8例, 女性6例, 合計14例 (14耳) であった. 治療成績は, 40dB以上の難聴例において, めまいの有無でそれぞれ聴力障害が重症な症例ほど治癒率は悪く, 同じ重症度においては, めまいのある症例の方がめまいのない症例より治癒率は低かった. 次に, 聴力型による治療成績では, 低音障害型・谷型・水平型の順に治癒率が高かった. 糖尿病合併例は20例あり, 糖尿病合併の有無は突難の治療成績に差はなかった. 当院での突難症例109例 (111耳) に対する副腎皮質ホルモン・高圧酸素療法併用療法の治療成績は, 治癒32.4%, 著明回復32.4%, 回復21.6%, 不変13.5%であり, 他施設での71耳以上の多数例の副腎皮質ホルモン単独での治療成績と比較した結果, その有効性が示唆された.
  • 猿谷 昌司, 長嶺 尚代, 小宮 卓, 伊藤 茂彦, 飯野 ゆき子, 小寺 一興, 今村 哲夫
    2007 年 110 巻 5 号 p. 403-409
    発行日: 2007/05/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    中耳良性腫瘍は比較的めずらしい腫瘍であるが, 当施設で経験した中耳傍神経節腫瘍, 中耳カルチノイド, 中耳腺腫の6例を報告する. 術前に臨床所見, 画像所見より中耳良性腫瘍と考え中耳手術を行った6例を対象とした. 手術は診断と治療を兼ね, 中耳腫瘍摘出術, または鼓室開放術を行った. 手術により得られた標本に対しHE染色, 免疫組織染色を行い確定診断とした. これらの3疾患のHE染色の病理組織像はたいへん似通っており, 診断は困難であった. 特に中耳カルチノイドと中耳腺腫は混同されやすく, 確定診断には免疫組織染色が重要であると考えられた. 画像検査では側頭骨CTで傍神経節腫瘍の術前診断が可能な症例も存在するが, われわれの症例では診断が困難であり側頭骨MRIが有用であった. 中耳カルチノイドや中耳腺腫では, 側頭骨CT, MRI所見も含め一定の傾向はなく術前診断には有効ではなかった. 治療についてはいずれの疾患も手術治療が基本である. 悪性腫瘍とは異なるが, 腫瘍の全摘出が原則である. 手術は2段階手術とし, 初回手術ではあぶみ骨以外の耳小骨を除去し, 腫瘍の摘出を行った. 二期手術で腫瘍の残存を確認し, また伝音連鎖再建術を行う方針とした.
  • 足立 真理, 岩井 大, 八木 正夫, 南野 雅之, 大前 麻理子, 李 進隆, 山下 敏夫
    2007 年 110 巻 5 号 p. 410-415
    発行日: 2007/05/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    当科における耳下腺腺様嚢胞癌12例につき検討した.
    まず診断について, 局所痛発生率 (33.3%) が他の耳下腺悪性腫瘍より高いと考えた. 穿刺吸引細胞診での正診率は高くなかったが, 術中迅速病理組織診は有効であった.
    治療については, T3, T4症例に対し耳下腺全摘出術, さらに拡大耳下腺全摘出術が行われた. しかし, 術中迅速病理組織診にて切除断端陽性と判明し追加切除され, 腫瘍を一塊切除できなかった症例が多かった. 一方, 5年, 10年の各死因特異的生存率は90.0%と80.8%であり, これまでの報告より良好であった. 当科では積極的に術後放射線照射を行っており, この照射が有効であると考えた. 今回の12例はいずれもN0であり, 頸部郭清術施行症例ではすべてpN0であった. また, 予防的頸部郭清術施行いかんに関わらず頸部再発は認められなかった. したがって, 予防的郭清術の意義は少ないと考えた.
    予後について, これまで腫瘍の大きさ, 手術切断端の腫瘍浸潤, 神経浸潤が予後を悪化させる因子であると報告されている. 今回の検討ではこのうち神経浸潤, 特に術前顔面神経麻痺 (T4a) が強い予後因子と考えた. したがって, こうした症例ではより厳重な切除範囲決定と集学的治療の改善が必要であると考えた.
  • 目須田 康, 折舘 伸彦, 西澤 典子, 森 美果, 堂坂 善弘, 古田 康, 福田 諭
    2007 年 110 巻 5 号 p. 416-419
    発行日: 2007/05/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    muscle tension dysphonia (MTD) がプロトンポンプ阻害剤 (PPI) 投与にて改善した例を3例経験した. 全例女性で年齢は44~68歳. 1例は声門後部の間隙を示し, 2例は声門上部の狭小化を生じていた. 一般的な消炎治療に反応せず, PPI投与開始から2~4週目から音声が改善し始めた. 喉頭筋の緊張の調節不良を示す機能性発声障害は従来不適切な発声習慣や情緒などの障害が原因とされているが, 近年海外では胃食道逆流症・咽喉頭酸逆流とMTDの統計的な関連を示す記載が散見される. 今回の症例は咽喉頭酸逆流が何らかの形でMTDの発症に関与しうることを示唆するものと考えられる.
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