当科の反回神経切除症例に対する音声再建のアルゴリズムは, 神経即時再建を第一選択とし, 即時再建ができない場合には, 主として脂肪注入を二次的に行っている. 今回これら再建症例の音声機能検査を経時的に行い, 発声機能を客観的に評価することで, 音声再建方法の妥当性を検討した.
2001年~2007年に久留米大学病院耳鼻咽喉科および関連病院で甲状腺癌反回神経浸潤症例に対し, 反回神経合併切除を行った39症例について神経吻合群, 脂肪注入群および非再建群で音声機能を比較検討した.
1) 術後12カ月のMPT, MFR, PPQの値は, 非再建群に比べ神経吻合群の方が良好であった (p<0.05).
2) 術後12カ月のMPT, MFR, PPQの値は, 非再建群に比べ脂肪注入群の方が良好であった (p<0.05).
3) 術後1カ月のMPTは, 脂肪注入群が神経吻合群よりも良好であった (p=0.007) が, その後両者の値は徐々に逆転し, 術後6カ月以降では神経吻合群が脂肪注入群に比べ良くなる傾向があった (p=0.08).
4) 術後1カ月のMFRは, 脂肪注入群が神経吻合群よりも良い傾向があった (p=0.1) が, その後両者の値は徐々に逆転し, 術後6カ月以降では神経吻合群が脂肪注入群に比べ良くなる傾向があった (p=0.1).
5) 従って, 今回の音声機能の結果から, 当科の音声再建方法は, 妥当であると考えられた.
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