日本耳鼻咽喉科学会会報
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73 巻, 10 号
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  • 久保田 肇, 木村 淑志, 西田 正剛, 李 汝培, 清水 真臣, 安藤 一郎, 和田 昌士, 栄木 恭男
    1970 年 73 巻 10 号 p. 1553-1566
    発行日: 1970/10/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    聴神経腫瘍2症例に関して, 術前術後に各種の聴覚検査を実施したところ次の様な結果が得られた.
    1) 純音域値検査では二例とも術前相当の域値上昇を示したが, 一例は術後かなり回復し, 他の一例は術後も変化なかった.
    2) 語音検査では二例とも術前最高明瞭度値の低下が認められたが, 一例は術後ほぼ正常に回復し, 他の一例は術後も変化なかった.
    3) リクルートメント現象の検査では2例とも陰性を示した.
    4) TTS検査では二例とも術前にTTSが連続音にて認められたが, 一例は術後それが認められなくなり, 他の一例では術後もいぜんとして認められた. この例では術後断続音にてもTTSが認められた.
    5) 聴神経腫瘍におけるTTSの変動については, 腫瘍の進展に伴ないTTSが出現する周波数は高い方からだんだん低い方えと移動し, 腫瘍が除去され障害が改善されてくると, 逆にTTSが出現する周波数は低い方から高い方えと移動していくものと考える.
    6) 断続音にてTTSが認められる場合は, 連続音では反応しない周波数で認められ, その周波数はその時点において反応を示す最高の周波数である.
    7) 歪語音検査では何れも術前と比べて術後は改善されているが, なお中枢性障害が残っているものと考えられる. さらに一例については健側耳においても異常値が認められ, このことは患側聴神経腫瘍による反対側すなわち健側えの二次的影響と考えたい.
    8) 方向感検査にては二例とも異常を示しているが, 純音域値検査にて左右の域値差が相当に認められるので, この成績をそのまま方向感機能異常と速断出来ない.
    9) 両耳合成検査では術前異常値を示したものが, 術後一例は正常値に回復し, 他の一例では正常値ではないけれども片側歪語音検査の結果と比べてみてかなりの回復を示している.
  • 服部 政夫, 水野 茂
    1970 年 73 巻 10 号 p. 1567-1576
    発行日: 1970/10/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    コルチ氏器の組織学的研究の大部分は, celloidin封埋による蝸牛の連続切片で行なわれているが, その方法にはさけがたい限界がある. Engstrom (1966) が“surface preparation technique”なる方法を報告していらい, この方法は多くの研究者によって応用されつつある. 本法は蝸牛の膜様迷路をとり出すために骨迷路を除去せねばならず, そのため大多数の研究者は実験動物として蝸牛が鼓室内に突出しているモルモットを用いている. しかしながらモルモットは実験の種類によっては長期間の観察には耐えがたい場合もあるので, 著者は本法を家兎に応用すべく試みた. 家兎を断頭し, 側頭骨を分離し, 中耳骨胞を開放し, 両内耳窓及び岬角を明視下においた. 手術用顕微鏡下でアブミ骨両脚の延長線と鼓室筋裂との交叉点を指標として, burrにて蝸牛頂をあけ, 両内耳窓を開放し, 蝸牛頂部より1.5% veronal buffered osmium tetroxide solutionを滴下し, それらが両迷路窓より流出するのを確認する方法をとった. 標本採取にあたっては, 蝸牛頂が側頭骨内に埋没しているので, まず手術用顕微鏡下で蝸牛の周囲, 特に裏面をドリリングし, あたかもモルモット蝸牛のごとく蝸牛が中耳腔内に突出した様にした. さらに骨迷路を薄くし, 骨壁, Lig. spirale及びVas spiraleを除去する事により, 膜様迷路を全回転に渉って明視下におくことが出来た. かくして蝸牛全回転よりコルチ氏器の部分をsurface specimenとして連続的に採取し, グリセリンで封入後, 位相差顕鏡にて検鏡した. この方法により家兎のコルチ氏器の標本採取後短時間に, 広い範囲に渉つて, 有毛細胞はその聴毛から蓋板へ, 核から基底板迄, 又柱細胞はその頭板から内外柱細胞の結合部を, 夫々optical sectioningしながら観察することが出来た.
    家兎コルチ氏器の細胞構造は, モルモットに比較して, 大きな差はみられなかった. 家兎を用いてもsurface preparation techniqueが可能であり, 今後広く応用しうると確信した.
  • 水野 茂
    1970 年 73 巻 10 号 p. 1577-1594
    発行日: 1970/10/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    音響性外傷による聴器の病変には, 強大音の音響エネルギーによつて内耳が物理的に破壊される場合と, 内耳を急激に破壊しない様な音響に聴器が長期間曝露され, いつとはなしに難聴が起ってくる場合のいわゆる慢性の聴器傷害があると考えられている.
    著者は急激に内耳破壊をきたさない程度の一定音圧の刺激音に聴器が長期間さらされた場合, 内耳有毛細胞はいかなる反応を示しながら推移するかを知ろうとした. その際長期間に渉る内耳機能の推移を正円窓永久電極装着家兎によるcochlear microphonics (以下CMと略す) を指標として把握すると共に, CM変化のある時期における内耳有毛細胞の変化を知るためにsurface preparation techniqueによる形態学的観察を行なった. 得られた結果は次の如くである.
    (i) 家兎にとって, 自由音場で頭頂端子上での100dbが徐々に内耳傷害を起す音圧と推察された.
    (ii) 2000Hz. 100dbの純音を1日2時間宛連日繰返し音刺激した場合, CMの経日的変化は1~2日の音刺激による第1次の低下と1次的回復後の第2次の低下という2つの谷をもつ経過曲線を示すことが知られた,
    (iii) 音響による蝸牛外有毛細胞傷害はその形態学的変化によりa) いわゆるcollapsed cell b) 膨化細胞 c) 網状膜構造の消失の3つに大別した.
    (iv) CMの第1次の低下後24時間おいて観察したコルチ器は, 第2回転前半部に膨化した外有毛細胞を多数認め, これを1週間放置し電位が急激に回復したものでは, これら膨化細胞は大部分正常に復し, 一部は更に傷害が進んでいた. 第2次の低下後24時間おいて観察したコルチ器は第1回転後半部から第2回転後半部にかけて外有毛細胞のcollapsed cellを多数認め, 傷害部位は第2回転前半部を中心に下方回転に進展する傾向のあることが知られた. これを1週間放置したものでは電位は殆んど回復せず, 又組織学的には傷害の部位及びそのピークは個体により相違が認められ, 音刺激中止後の傷害細胞の回復或は増悪の仕方に個体差があることが想像され, これは音響曝露期間が長期に渉る程著明であろうと推察した.
    (v) 音刺激による外有毛細胞の3列相互間には傷害差は見出せなかった.
    (vi) 2000Hz, 100db, 1日2時間宛反復音刺激した結果, 外有毛細胞は初期には胞体の膨化という可逆性の形態学的変化から, 音刺激の継続によりついにはcollapsed cellという不可逆性の形態学的変化に移行していくことをCM変化の推移より推論した.
    (vii) 以上音響性外傷による内耳傷害をCMを指標として経日的に追求すると共に, 2つの時点で内耳有毛細胞の傷害を形態学的に観察した結果, 最初の電位低下における傷害細胞と一旦電位が回復し, 再び低下した時点での傷害像には著るしい相違があることを見出した.
  • 関根 啓一
    1970 年 73 巻 10 号 p. 1595-1619
    発行日: 1970/10/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    吸入性アトピー性アレルギーが本邦の慢性副鼻腔炎にどのように関与しているか, その臨床的意義は何かを解明しようと試みた. そのため先ず鼻アレルギー患者に問診, 鼻鏡検査, 抗原による皮内, 誘発反応, 鼻汁, 血中好酸球検査, ヒスタミン鼻反応, 血中抗体価測定, 病理組織学的検査, X線学的検査, 内視鏡検査, 自然孔閉塞度測定の諸検査を行った. そしてこれらの諸検査結果からアレルギー性副鼻腔炎の病態を把握し, 次に慢性副鼻腔炎患者に上記の諸検査を行い, アレルギーの特徴がどの程度にみられるかをみた. 更に鼻茸を有する患者にアレルギー検査を行い, 鼻茸のアレルギー説がはたして正しいかどうか検討した. また小児喘息患者, および多数の集団について抗原による感作の状態と副鼻腔炎罹患率を比較した. 最後に慢性副鼻腔炎で手術を行つたものについてアレルギー検査, 術後経過のアンケートによる調査を行い, アレルギーが術後経過におよぼす影響につき検討した.
    結果
    1鼻アレルギーの副鼻腔特に上顎洞所見
    1) X線陰影は正常か比較的軽度のものが多く, 造影像では, 洞粘膜の肥厚はあっても軽く, 茸状腫脹は少く, 膿汁貯溜のある例も少いが造影剤の排泄不良例が多かった.
    2) 組織学的にも洞粘膜には浮腫, 細胞浸潤の軽度のものが多いが, 軽度のものでも自然孔閉塞, 好酸球増多, 杯細胞増生のみられる例があった.
    3) 一般に洞粘膜の形態的変化は軽度のようでもアレルギー性炎としての特徴をそなえ, しかも線毛機能は減退し, 自然孔の閉塞している例が多くみられた.
    2慢性副鼻腔炎患者におけるアレルギー像
    1) アレルギー歴陽性者は全体として35.6%にみられたが, 鼻鏡所見, 症状から鼻アレルギーを推定される例は少かった.
    2) ハウスダスト皮内反応陽性率は27.8%であったが, 皮内, 誘発反応共に陽性例は約5%にすぎなかった.
    3) 副鼻腔特に上顎洞のX線所見では陰影度も強く, 粘膜の腫脹, 茸状変化も強く, それと平行して造影剤の排泄も悪かった,
    4) 内視鏡所見でも変化の高度のものが多かった.
    5) 病理組織学的にも病変高度で, 細胞浸潤, 線維増生など慢性炎を示していたが, 皮内, 誘発反応共陽性例は他に比しカタル型に多く, 好酸球浸潤をみる例が多かった.
    6) 結局, 慢性副鼻腔炎の5~10%にアトピー性アレルギーの特徴ある所見がみられた.
    3鼻茸におけるアレルギー所見は少く, 鼻茸がアレルギーによつて特に形成され易いとはいえなかった.
    4小児喘息患者の副鼻腔陰影増強は約70%にみられたが, アレルギーのものと, 非アレルギーのものとで差がみられなかった.
    5集団検診で副鼻腔炎の有無と抗原感作の状態を対比したが両者にはつきりした関係はなかった.
    6副鼻腔炎術後経過とアレルギーの有無とに特別の関係はみい出されなかった.
  • 早期診断の観点から検討
    佐藤 文彦
    1970 年 73 巻 10 号 p. 1620-1633
    発行日: 1970/10/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    上咽頭腫瘍に関する幾多の臨床的・統計的研究業績は, 現在までにもすでに報告されており, 早期診断・治療の指針に関し十分に検討が加えられているにもかかわらず, なお早期発見を逸した反省すべき症例が少くない. それ故に, あらたに早期診断の重要性を再認識し, 1955年1月より1969年12月までの15年間に京都府立医科大学耳鼻咽喉科学教室で取扱かった上咽頭悪性腫瘍43例について統計学的分析を行うと共に, 最近2年間に経験した5例について病歴を紹介し早期診断の観点から症例の検討を試みた.
    1. 当教室を訪ずれ, 診断・治療を行った頭頸部悪性腫瘍患者数は741例で, そのうち上咽頭悪性腫瘍は43例5.8%を占めた.
    2. 性別・年令別統計においては, 男女比が1.7: 1であり各年令層に分布していたが, 特に肉腫の場合10才代と60才代にピークを認め, 悪性リンパ腫の特徴とされている二峰性曲線を認めた.
    3. 初発症状および主訴に関しては, いづれも鼻閉が最多であり, 頸部腫瘤, 鼻出血がこれに次いだ.
    4. 初発症状から確診までの期間に関する集計では平均7.6カ月, 最短期間1カ月, 最長期間2年半であったが, 癌腫に比し肉腫に期間の短かい傾向を示した.
    5. 初発症状発現から上咽頭悪性腫瘍と確定診断されるまでに種々の耳鼻科的処置や, 手術を施こされる場合が多いが, 最近2年間に, 副鼻腔炎と全く同様の自覚症状を訴えたために, その対症療法のみにとどまり, 早期診断を逸した2例, 原発腫瘍を発見しながら適切な治療がなされなかつた1例, 頸部腫瘤のため外科に受診し, 癌腫との病理組織診断を得ながら原病巣の追求が行われなかった1例, 又慢性中耳炎との合併例1例の病歴を紹介し, 症例の検討を行った.
    6. 病理組織学的分類では, 肉腫の場合reticulum cell sarcomaが約40%で最多, 癌腫においては広義の扁平上皮癌が大多数を占め64%に達した.
    7. 脳神経症状は, 37.1%に現われ, 癌腫にその頻度の高いことを認め, 粘膜下浸潤型の多いことを示していた.
    8. 転移に関しては, 頸部リンパ節転移をきたしたもの36例中, 両側性転移をみたものは21例に達していた.
    9. 治療法は癌腫, 肉腫共放射線療法を主体に用いた.
    10. 生存率についての集計では, 3年生存率25.7%, 5年生存率18.1%で肉腫に比し癌腫に低生存率を示した.
  • 西山 明雄
    1970 年 73 巻 10 号 p. 1634-1661
    発行日: 1970/10/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    言語障害児を臨床神経学的立場, とくに高次神経活動の面から検査する目的で, 言語障害児を対象とした随意運動発達検査法を作製した.
    この検査は次の各検査項目より構成される.
    I手の随意運動
    1) 視覚・筋覚の統合
    2) 視覚空間的統合
    3) 力動的統合
    II顔面・口腔の随意運動
    III躯幹・下肢の随意運動
    IV高次視覚機能
    1) 視覚的空間分析
    2) 文字・図形の空間分析
    3) 空間における知的操作
    V人物画
    VI生活運動
    作製にあたっては2~6才までの183名の正常児が対象として用いられた.
    さらに各検査項目が比較検討し易いように発達輪廓をつくった.
    言語障害児に本検査法を応用したところ, きわめて有用であることが結論づけられた.
  • 吉浦 禎二
    1970 年 73 巻 10 号 p. 1662-1673
    発行日: 1970/10/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    我耳鼻咽喉科領域における上気道粘膜はその殆んどが線毛上皮細胞によって被覆され, その線毛運動により, 気道内の異物, 細菌等を常に除去せんとする重要な役割を演じている. 一方他の動物においては, 運動・栄養・循環・生殖等, 種によりそれぞれ異った機能を発揮している.
    形態学的には近年電子顕微鏡の発達にともないその微細構造は次第に解明されているが機能的観点から線毛の収縮および協調運動の機構などについては未解決の点が多く残されている.
    従って私は上気道粘膜の病態生理特に線毛運動機構に関して, 原生動物からる脊椎動物にいたる8種の動物の線毛運動様式と線毛装置の微細構造との関係を比較検討することにより, 形態と機能との間の関連性を追求することを目的として本研究を企図した.
    研究方法として, 線毛協調運動様式の観察には, 位相差顕微鏡下に16ミリcinecameraを使用し高速度撮影し, 線毛装置の微細構造はJEM-T5型電子顕微鏡下に観察しそれぞれ比較検討した.
    固有線毛の内部構造には殆んど差違は認められず, いわゆる「9+2」patternを示した. しかしながらbasal bodyおよびrootletには形態学的に著しい差違が認められた. すなわちbasal bodyに関してゾウリムシ, ナミウズムシにおいては線毛長軸に対して対称性であり線毛運動が可転性を有することから, このような形態は必要なことと思われた. その他の動物においては非対称性が明らかでeffective strokeの方向に屈曲していた. さらにbasal footが常にrecovery strokeの側に突出しているのが認められた. 一方rootletは様々な方向に走り且つこれを欠くものもあり単なる支持組織に過ぎないとの説を認める. basal footは隣接するbasal bodyとは結合していず, その外にbasal body間を結合する何物も見出し得なかった.
    以上のことから個々の線毛のkinetic centerはbasal bodyにあると考察したがmetachronalな協調運動を支配するものあるいはその伝播径路を解明することは困難であった.
  • 硬性鏡と食道ファイバースコープの併用
    石田 稔, 長谷川 進
    1970 年 73 巻 10 号 p. 1674-1678_1
    発行日: 1970/10/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
  • 湯川 〓朗
    1970 年 73 巻 10 号 p. 1679-1718
    発行日: 1970/10/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    1目的: 酵素剤の人体に及ぼす複雑な作用を解明するために, 著者は正常人及び炎症性疾患のある耳鼻科患者を被験者として, 以下の通り基礎的並びに臨床的の人体実験を行った. すなわち, 正常者及び疾患者の体液 (含血液) 及び局所組織の線溶現象及びムコ多糖類分解酵素の活性を検討すると共に, それに対する抗Plasmin剤及びムコ多糖類分解酵素剤の作用を関連的に追求し, 一定の知見を得たので報告する.
    2実験法: 被験者の血液の線溶能については, EACA滴定法 (福武式血漿法) を応用し, 局所粘膜の線溶能については, 手術時に摘出した粘膜の小片を直接, Fibrinの標準平板上に載せてその溶解窓の積を求めて線溶値とした. 一方Lysozmeの活性値測定はエイザイ研究所で実施されている溶菌標準曲線から, 被検液の活性を測定した.
    3結果: (1) 耳鼻咽喉科の各種炎症性疾患の血液中の線溶値は, 年令, 性別に関係なく, 急性期には, 正常者より明らかに血中の線溶能は亢進し, Plasmin低下例は見出されない. 炎症の休止期には血中に活性Plasminは認められず, 活性Plasminの低下例も正常者とほぼ同率に観察された. 但し, S.K. を添加すれば線溶亢進例は急性期と同数になる.
    (2) 局所組織の線溶値を各臓器別に測定, 検討した結果, 鼻, 副鼻腔粘膜には常時線溶能が認められた. しかしその他の隣接粘膜 (咽頭扁桃など) には線溶能は認められなかった.
    (3) 人の体液のLysozyme活性を測定すると次の成績が得られる. すなわち涙液, 鼻汁, 唾液及び血清の順にその活性が漸次低下する. Lysozyme活性は常にこの一定順位をもつ特異な分布を示していて, 正常者と炎症性疾患々者との間にも, その順位や活性度の差は見られない.
    (4) 副鼻腔粘膜のLysozyme活性は, 炎症時は正常時の2~3倍に亢進し, 活性度は病理的類型で異る.
    (5) 線溶活性とLysozym活性の変動には相関々係は認められない.
    (6) 副鼻腔炎が酵素療法で治癒傾向 (臨床的, 病理的) を示すのは, 粘膜Lysozyme活性と粘膜線溶活性が逆相関々係を現す時である.
  • 1970 年 73 巻 10 号 p. 1719-1744
    発行日: 1970/10/20
    公開日: 2010/12/22
    ジャーナル フリー
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